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揺るぎないコーチング・フィロソフィー。すべてはチームのために

桶谷大

桶谷HCは選手の個性を尊重しつつ、組織の重要性を強調する(写真提供・琉球ゴールデンキングス)

 

――桶谷さんを良く知る方に話を聞くと、桶谷さんの性格を『頑固』と表現するのですが、ご自身としてはいかがですか?

根は頑固でしょうね。ただ、15年ヘッドコーチをやってきて、ここでは頑固出してよいよね、ここでは頑固出さないほうがよいよねっていうことが分かるようになってきたかなとは思います。昔に比べたらそんなに頑固じゃないんじゃないかなと思っています。

――それはこれまでの経験値から、采配の引き出しが増えてきたということでしょうか?

そう思いますね。いろんな失敗、キングスを出てからもいろんな失敗をしていますし、だからこそ自分の中で何かをやる時の重みだったり、コーチングの厚みが出てきたんじゃないかなと思います。

――いろいろ柔らかくなった部分がある中で、ここは譲れないというものはありますか?

個っていうのはすごく大事だと思うんですけど、組織の中にいる個なので、組織が成功を収めない限り、個は成功じゃない。そこは譲れない。それはバスケットも一緒で、キングスのバスケットそのものなので、選手の個性を殺してはいけないけれど、絶対に一番最初にくるものはチーム。そこは譲れないものがあるかな。

――桶谷さんは、フィル・ジャクソン氏(黄金期のシカゴ・ブルズやロサンゼルス・レイカーズの監督を務めた名将)を敬愛されていたと思います。bjリーグ時代にはキングスにトライアングル・オフェンス(個人技とシステムプレーを両立させたフィル・ジャクソン氏が得意とするオフェンスシステム)を採り入れていましたけれど、桶谷さんにとってフィル・ジャクソン氏はどのような存在ですか?

今でも僕にとっての教材です。自分が衝突した経験の、彼は何百倍もの経験をしておられますけど、僕は壁にぶち当たるたびに、『フィル・ジャクソンだったらどう考えるだろう、この人もこういう風に壁にぶつかって同じような経験をして、どういうふうに乗り越えてきたんだろう』って考えます。僕にとって先駆者というか、『答え』みたいな人です。

トライアングル・オフェンスはシステムとしてバスケット界では素晴らしいですけど、あそこにはフィル・ジャクソンの哲学がすごく入っていて、あのスペーシングや連動性っていうのは、5人で、(5本の)指を動かすように連動しないと使えないので、バスケットもそうだよねっていう哲学が入っている。そういう点も含めて、僕にとって教科書みたいな人です。

――トライアングル・オフェンスを採り入れたきっかけを聞かせていただいた時に、当時のキングスは金城茂之氏(現・仙台89ERSアシスタントコーチ兼スキルコーチ)がエースとして活躍していましたが、そこをフェイスガード(密着マーク)されて止められた時に攻め手がなくなってトライアングル・オフェンスを始めたとおっしゃっていました。チームバスケットとして連動して5人がシュートチャンスをシェアするという目的で採り入れたのでしょうか?

そうですね。マイケル・ジョーダンがフィル・ジャクソンの下でプレーしていましたけど、個人を生かすけどチームでしっかりボールをシェアしながら、チームとして一番良いアドバンテージを使っていく。みんなが心地よくバスケットをする。それにも長けたシステムです。フィル・ジャクソンもマイケル・ジョーダンの1on1は自己中心的だっていうことを言ってたんですよ。だからフィル・ジャクソンはトライアングル・オフェンスを採り入れて、彼の個を生かしながら、でもチームのみんなが納得して、チームが総合力として力を発揮できるように採り入れた。それにすごく共感した。

当時、自分たちのエースは金城だったので、金城に対するフェイスガードもあると思うんですけど、金城ばっかりで攻めるんじゃなくて、最終的に勝負どころで金城を使うかもしれないけど、ボールをシェアして攻める。それで何が起こるかっていったら、相手のチームはスカウティングしにくい。15点以上取ってる選手が1人2人いるよりも、10点取ってる選手が5人6人いるほうがスカウティングしにくいので、そういう意味でもトライアングル・オフェンスを採り入れたいなって当時思いました。

――トライアングル・オフェンスの経験値は、現在にもつながっているでしょうか?

つながっています。トライアングル・オフェンスを今のところは導入してないんですけど、そのフィロソフィーっていうのは入っていて、オートマティカリーというか、こういうプレーをされたらこうだよね、という原理原則は間違いなく今の僕のバスケットのエッセンスの中に入っています。

――最後の質問になりますが、アンダーカテゴリーのU-18、U-15、キングスアカデミーに通っている小学生や未就学児など、沖縄の若い選手たち、キングスを目指している子供たちにアドバイスをいただけますでしょうか?

失敗する数を増やしてほしいかなと思います。自分でチャレンジをして、失敗の数を増やして、それに対してしっかりアプローチする力。エラーを修正できる力。

ミニバスとか見てても、50回ポゼッションがあったら、上手い選手は30回40回と一人でいっぱい失敗できるチャンスがあるんですけど、他の選手を見たら1回2回しか失敗するチャンスがないというのを見るとがっかりする。失敗できるチャンスがあったら、どんどん失敗しにいってほしい。これは僕らのカテゴリー(トップチーム)でも一緒なので。子供のうちから失敗する回数を増やす、そういう努力をしてほしいです。


 

桶谷HCは取材の間、「失敗を怖がらず」「チャレンジ」という言葉を多用した。来たる新シーズンに向けて、選手たち、そしてコーチ自身に向けたメッセージと受け取ったが、これを実現するためにはミスを許容する度量を持ち合わせなければならない。

12年前の筆者の取材メモに、桶谷HCから聞いたコメントとして、こんな記述が残っていた。

「選手起用で注意しているのは、一つのミスで交代しないこと。これをすると、選手は次に(コートに)出た時に、またミスをするんじゃないか、交代されるんじゃないかと考えてしまうからです」(2009年9月15日・桶谷HC)

ミスをネガティブに捉えるのではなく、ポジティブに捉え、さらなる成長につなげていく。Bリーグの頂点に向けて、桶谷キングスの第二章がいよいよ幕を開ける。

 

<B.LEAGUE 2021-22シーズン 開幕戦>
2021年9月30日(木) 19時00分ティップオフ 琉球ゴールデンキングス×アルバルク東京 沖縄アリーナ
[琉球ゴールデンキングス|9/30(木)10/2(土)アルバルク東京]

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