7月17日のOUTNUMBER RADIOは月一レギュラーの湧川太陽さんにお越し頂きました。スポーツビジネスブログも書かれている湧川さん。本日は、「Bリーグの資本関係」について分かりやすく解説して頂きました。Bリーグに所属しているチームはどのような会社が経営しているのか。どのような経緯で現在のチームに至ったのかが分かる1時間でした。今回はBリーグのB1東地区より「富山グラウジーズ」「千葉ジェッツ」西地区より「名古屋ダイヤモンドドルフィンズ」「琉球ゴールデンキングス」B2リーグより「茨城ロボッツ」「群馬クレインサンダーズ」に焦点を当ててご紹介致します。
※今回の記事は湧川太陽さんがOUTNUMBER WEBで執筆されている「Bリーグのクラブの資本関係(B1 東地区編)」の記事を元に書いております。
2020-21シーズンは、B1が20クラブ、B2が16クラブの計36クラブが東西2地区でリーグ戦を行います。また、シーズン終了後にB2からB1に2クラブが自動昇格、降格は無し、という今までとは大きく異なる方式で戦う事になります。
新型コロナウイルスの影響による観客数を大きく制限した試合開催が予想され、B1・B2各クラブとも厳しいクラブ経営が予想されています。しかし、予想に反して多くのクラブが、特にB2クラブの大型選手補強が目立つ今オフとなっています。今回は、上記のB1,B2に所属しているチームへ資本参加している企業・人物の情報をご紹介します。
参照:B.LEAGUE 2020-21シーズン 地区分け・シーズン終了後の昇降格について発表 – B.LEAGUE(Bリーグ)公式サイト(2020年4月24日)
参照:B.LEAGUE 2020-21シーズンレギュレーションについて – B.LEAGUE(Bリーグ)公式サイト(2020年7月14日)
Bリーグクラブの運営会社、親会社とは?
Bリーグの各クラブはB1、B2ともに「日本国籍を有する人物か日本国内の株式会社」にて運営されると規定されています(Bリーグ規約 第12,13条)ですので Bリーグクラブ = クラブ運営会社である株式会社 であると言えます。一般的には試合を戦う選手やコーチ陣を指して「チーム」と呼び、フロントと呼ばれる裏方まで含めて「運営会社」というイメージです。そして、その運営会社の株式を保有している企業の事を「クラブの親会社(主要株主)」と呼びます。
親会社がクラブのスポンサー(パートナー)として名前がある場合もありますが、スポンサー = 親会社ではない事は注意しておきたい点です。スポンサーはあくまでクラブとの契約(スポンサー契約)です。親会社である企業と子会社である運営会社の関係性は様々です。一般的な親子会社のように親会社の意向に大きく左右される場合もあるし、資本関係はあるがクラブ運営の決断は運営会社が独自で決めている場合もあります。
株式情報は上場企業でない限り一般に公開される事はありません。クラブ運営会社は全て非上場企業です。これから紹介する情報の正確性は保証できず、あくまで現在ネット等の情報から確認出来る内容に基づいています。出来る限り参照リンクも張り付けていますので、ぜひそちらも確認してみて下さい。
B1東地区
富山グラウジーズ
クラブの始まりは2000年。この年に第55回とやま国体が開催されました。地元開催の国体に向けて優勝を目指し選抜チームが結成され見事国体優勝を果たします。その後サッカークラブを運営していた富山アトラスFCという会社を運営会社に2006年bjリーグに参入します。しかし2007年、その運営会社が経営危機となりクラブ運営から撤退します。
その後は、地元富山の有力企業の出身者が株式会社富山グラウジーズの取締役に相次いで就任しており、特定の企業に支援されているというより「富山全体」でチームをサポートしている印象を感じます。クラブの始まりが地元の選抜チームだったという事は、確実に富山バスケ協会とも強いパイプがあるはずですし、Bリーグ2019オールスター戦やバスケ日本代表戦も誘致している事実から、自治体からのバックアップも伺えます。
参照:No.220-2:「富山グラウジーズ」、bjリーグに参戦 | 富山の“今”を伝える情報サイト|Toyama Just Now(2005年 11月 2日)
参照:中日新聞 プロバスケbjリーグ グラウジーズ新体制で再出発 新体制で再出発:富山(CHUNICHI Web)(2007年5月15日アーカイブ)
参照:新取締役・新監査役の就任に関するお知らせ | 富山グラウジーズ(2019年9月10日 )
参照:グラウジーズ増資 8000万円調達、経営基盤強化へ|北日本新聞ウェブ(2020年2月3日)
千葉ジェッツ
2019年4月14日、株式会社ミクシィは千葉ジェッツの運営会社である株式会社千葉ジェッツふなばしの子会社化を発表しました。ミクシィは2017年から千葉ジェッツと(XFLAGブランドとして)パートナーシップ契約を結び、関係性を深めていきました。そこからクラブ経営に乗り出しています。ミクシィのようにIT企業がスポーツ界に参入するのは最近のトレンドでもあります。プロ野球では「DeNA横浜ベイスターズ」、「福岡ソフトバンクホークス」、「東北楽天ゴールデンイーグルス」が挙げられます。
またミクシィは2019年からプロ野球ヤクルトスワローズとトップスポンサー契約、JリーグFC東京ともスポンサー契約を結んでいます。ミクシィはプロスポーツを事業の柱に据えようとしています。その背景には、広告塔としての役割や企業の社会的信頼度を高める狙いがあるかもしれないと語る湧川さん。さらに「IT事業という実体がないサービスを提供するビジネスに加え、不動産事業に近いアリーナ事業への参入を視野に入れているのかもしれない」というのはここだけのお話ということです。
参照:ミクシィ、Bリーグ千葉ジェッツの実質オーナーに : 日本経済新聞(2019年4月14日)
参照:サービス・グループ会社一覧|企業情報|株式会社ミクシィ
B1西地区
名古屋ダイヤモンドドルフィンズ
1950年、三菱電機名古屋製作所の実業団チームとして創部された歴史の長いチームです。現在は、名古屋ダイヤモンドドルフィンズ株式会社が運営しているのですが、歴代の社長や取締役は三菱電機グループ出身の方々が名を連ねています。現在ヘッドコーチを務める梶山慎吾さんも三菱電機出身ということです。琉球ゴールデンキングスとは同地区ということで対戦する機会も多く、オフシーズンではキングスにも所属していたジェフ・エアーズ選手が加入、滋賀レイクスターズから狩野祐介選手も加わり、戦力が大幅にアップしました。キングスにとっても大きなライバルとなりそうです。
琉球ゴールデンキングス
現在琉球ゴールデンキングスを運営する沖縄バスケットボール株式会社代表取締役社長の木村達郎氏と大塚泰三氏が中心となり2006年に創設され、ゼロからのチーム作りでした。企業などの出資や株式出資はほとんどなかったそうですが、2019年に大塚氏が所有していたキングスの株式を株式会社ユーグレナに譲渡しました。キングスのスポンサーだった株式会社ユーグレナ。「キングスを大事にしてくれる地元企業に譲渡したかった」と木村社長は後に語っています。
昨シーズンからキングスのユニフォームにユーグレナのロゴがなくなっており、
「スポンサー撤退したのかな?」
と疑問に感じていたケイシーさん。実はスポンサーから株主になっていたという動きありました。ケイシーさんの観察力も鋭いです。
湧川太陽さんが注目するB2所属の2チーム
オフシーズンの移籍市場はB2リーグも大きな動きがありました。B1チームでプレー経験のある選手がB2のチームに移籍するなど、B1よりも活発な動きあったと言えるかもしれません。続いては、B2の中から湧川太陽さんがピックアップした2チームをご紹介します。
群馬クレイサンダーズ
B2所属チームの中でもオフシーズンに大きな戦力強化を行った群馬クレイサンダーズ。B1の千葉ジェッツより帰化選手のマイケル・パーカー選手を獲得したことはバスケットボールファンには大きな驚きがあったかと思います。なぜB1でもトップクラスの実力を誇るマイケル・パーカー選手を獲得できたのでしょうか。そこを紐解いていきます。
群馬クレイサンダーズは財政状況は良いとはいえない状況が続いていました。昨季の2018-19 シーズンでは群馬クレインサンダーズはB1昇格圏内の2位に入るもB1昇格が認められませんでした。というのもB1、B2にはライセンスの審査があり、その審査基準は競技成績以外も含まれます。チーム成績としてはB1昇格基準を満たすも経営状態がライセンス基準に満たせず、財務状況以外にもB1チームにはライセンスとして「5000人以上を収容できる施設」が設けられいるのですが、そこもクリアできていませんでした。しかし、2019年に株式会社オープンハウスに株式が全て譲渡されその傘下に入り状況は改善されていきます。現在ホームアリーナとなっているヤマト市民体育館前橋を改修することが確約され、5000人以上を収容できる施設を確保しました。また、財政面もマイケル・パーカー選手を補強できるほどに状況は好転、施設面でも財政面でもB1のライセンスをクリア。経営陣からも昇格にかける本気度が伺えます。
茨城ロボッツ
2018-19のB2シーズンは3位で、B1昇格まではもう一歩というチームです。現在はグロービス・キャピタル・パートナーズという会社の傘下にある茨城ロボッツ。財政面で安定しており、2018年に完成したばかりのアドストリアみとアリーナをホームアリーナとしています。5000人を収容できるアリーナで2021年1月に行われるBリーグオールスターゲームの開催地でもあります。チームの財政面と施設面でB1リーグのライセンスの基準をクリア。茨城ロボッツへの強力なバックアップの裏にはグロービス・キャピタル・パートナーズの堀義人社長の「茨城ロボッツが中心となって街を活性化したい」という思いがあるそうです。B1昇格圏内までチームを押し上げることが出来れば、近い未来キングスとも対戦するかもしれません。
なぜ、ここまでB2リーグの動きが活発になったのか
それは、B.LEAGUEが発表した「B.LEGUE BEYOND2020-超えて 未来へ-」という中期計画の中にヒントがあります。計画の中に「クラブライセンス基準の引き上げ」と「シーズンに昇降格の緩和」という項目があります。2024年以降クラブライセンスが以下のように基準が引き上げられます。
B1:売上高12億円・入場者数 4,000人・アリーナ施設
B2:売上高 4億円・入場者数 2,400人
これは現行のライセンス基準よりも厳しくなっております。さらに昇降格制度の緩和で単年競技成績のみによる昇降格廃止され、今後はクラブライセンス・複数年の競技成績で判断されるそうです。オフシーズンのB2リーグの活発な動きは来シーズンB1リーグへ昇格するためだけではなく、2024年から新しい運営基準のもとスタートするBリーグでの勝ち残りを見据えた準備と言えるのではないでしょうか。
今回は6チームをピックアップしてご紹介いたしましたが、今後B1,B2含めた36チーム分の情報が湧川太陽さんの執筆でOUTUUMBER WEBに登場すると思いますのでどうぞお楽しみに!!
Bリーグに所属するチームの資本関係や創立の成り立ちを知るとチームの特色が分かってきます。そうするとより一層愛着が湧きますね。好きなチームをより好きになって2020-21シーズン開幕まで気持ちを高めていきましょう!
【湧川太陽さんのスポーツビジネスブログ】
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