当サイトはアフィリエイト広告を利用しています

Bリーグの今オフを規約で振り返ってみよう

2016年に誕生したBリーグ。2020-21シーズンで5年目を迎えます。

まだまだBリーグの選手契約や移籍のルールは一般的とはいえません。

特に今オフはコロナ禍の社会状況も相まって、かなり複雑な動きが多い印象でした。

今回は、Bリーグ規約の内容を整理して今オフの動きを振り返ってみましょう。
(各内容には該当規約も併せて記載)

参照:B.LEAGUE 2019-20 選手契約および登録に関する規程

アマチュア選手・プロ選手・新人選手

アマチュア選手 無報酬でプレーしている選手(交通宿泊等の手当除く) 第3条
プロ選手 報酬を貰って選手活動をしている選手 第4条

アルバルク東京の正中はアマチュア選手だった

学びを求めて再スタート『ナンバリングするようなキャリアではございません』 | バスケットボールスピリッツ

2020年6月9日に引退を表明したアルバルク東京の正中岳城選手

上の記事で彼はアマチュア契約で、アルバルク東京の親会社であるトヨタ自動車からの出向という形でプレーしていたと語っています。つまり正中はアルバルク東京株式会社からではなくトヨタ自動車から報酬を得ていた事になります

 

 

新人選手 外国籍選手を除く、国内海外プロリーグに在籍経験が無く、初めてBリーグに登録された選手

新人選手はシーズン出場試合数がチーム実施試合の半分以下なら翌シーズンも新人選手扱い

第5条

琉球ゴールデンキングスの牧は20-21シーズンも新人選手扱い

牧隼利選手は琉球ゴールデンキングスと2019-20シーズンに特別指定選手契約2020-21シーズンに選手契約を結んでいます。

2019-20シーズンは公式戦18試合に出場、琉球ゴールデンキングスはそのシーズン41試合実施。

18試合<20.5試合となるので、牧は2020-21シーズンも新人選手扱いとなります

 

 

プロ選手契約

最長期間 3年間 第9条
最短期間 原則として当該契約の効力発生日から、シーズン終了時(6月末日) 第9条
契約の解除 あらかじめ契約内容に盛り込んだ損害賠償が支払われる 第8条
最低年俸 B1クラブ:300万円(税抜) 第10条
B2クラブ:240万円(税抜)
新人選手の契約
年俸上限:B1・B2クラブともに460万円(税抜)
出来高給:出場給(上限5万円(税抜)/試合)と勝利給(上限8万円(税抜)/試合)のみ
複数年契約をした場合、契約期間中の年俸と出来高はそれぞれ新人契約が上限となる

宇都宮ブレックスの橋本は複数年契約を解除した

2020年5月18日、宇都宮ブレックスは橋本晃佑選手との選手契約を双方合意の上で解除すると発表しました。

2019-20シーズン、宇都宮ブレックスと橋本は契約継続を発表していました。契約年数については公開されてませんでしたが、2020-21シーズンの発表には契約「解除」という言葉が使われています。

つまり宇都宮ブレックスと橋本は、2019-20に複数年契約を結び2020-21は契約期間中だったが、契約解除に対する補償金を含めて複数年契約の解除に合意したと推測されます。

 

 

新人選手の契約は低く抑えられている

新人選手は年俸、出来高給(インセンティブ給)ともに低い上限金額で、さらに新人選手扱いのシーズンに複数年契約を結んだ場合その低い上限金額で長くクラブに留まる事になります。

これらの規約は、新人選手の年俸高騰を防ぎ各クラブの獲得競争を平等にするが、選手としても結果次第でより高い評価を得る事が出来る、そんな仕組みを作りたいというリーグ側の意図が読み取れます。

 

しかし、特別指定選手期間中に多くの試合に出場して、大学在学中に新人選手扱いから外れる場合もあります。

Bリーグから初の韓国・KBLへ移籍を発表した中村太地選手

彼は2018-19シーズンに横浜ビー・コルセアーズと特別指定選手として契約43試合に出場します。この時点でチーム実施試合(60試合)の半分より多く出場していますので2019-20シーズン以降は新人選手扱いではなくなりました

そして中村は2019-20シーズンに京都ハンナリーズと選手契約合意、法政大学に在籍しつつバスケットボール部は退部、プロ契約選手となりました。この時の中村と京都との契約は新人選手契約ではなく通常のプロ契約だったと推定できます。

 

 選手からすると、新人選手扱いは契約上不利なのでなるべく早く終了したい

 クラブからすると、低い金額で契約できる新人選手扱いはなるべく長く継続したい

 

特別指定選手の出場試合数から、その選手とクラブがどんなプロキャリアを描いているのか見えてくるかもしれません。

 

 

FA・再契約・移籍・レンタル・移籍金

自由交渉選手リスト いわゆるフリーエージェント(FA)制度。「自由交渉選手リストへ公示」となった選手は、所属元クラブ含む どのクラブとも自由に交渉、契約締結が可能 第12-15条

自由交渉リストと選手の再契約・移籍に関しては B3ベルテックス静岡の公式サイトに分かりやすい図があります。ぜひこちらを参照下さい。

出典元:[5月21日更新]契約更新に関わるお知らせ及び自由交渉選手リスト公示のお知らせ | ベルテックス静岡 プロバスケットボールチームVELTEX静岡

秋田ノーザンハピネッツの中山は他クラブとも交渉した上で再契約した

秋田ノーザンハピネッツの中山拓哉選手は2020年5月7日に自由交渉選手リスト入り2020年5月19日に秋田と再契約を発表しました。

上図の「ベルテックス静岡」を「秋田ノーザンハピネッツ」と読み替えた場合、中山は③のルートをたどって最終的に秋田と再契約を結んだ事になります。

今オフにこの「自由交渉選手リスト入り」→「在籍元クラブと再契約」が多かった背景には、コロナ禍で各クラブの契約提示がかなり厳しい内容で、再契約の意思はありつつも他クラブの話も聞いてみたいと考えた、という状況があったと推測されます。

 

 

移籍
 
アマチュア選手

選手の意思だけで自由に移籍可能

第17-18条
プロ選手

契約満了前
・移籍契約交渉は、契約満了6か月前から可能
・移籍先クラブと在籍元クラブ、選手の三者合意があれば移籍可能
・移籍に対する補償についてはクラブ間交渉で決定

契約満了後
・自由交渉リストに未登録 > 在籍元クラブへ通知が必要
・自由交渉リストに登録済 > 在籍元クラブへ通知は不要

第19条

Bリーグにトレードは存在しない

プロ選手は、契約満了前・後に関わらず選手が合意しない移籍は行われません。

つまり、クラブ間合意だけで実施出来るプロ選手やNBAのようないわゆる「選手トレード」は出来ない規約になっています。(※NBAでは一部の選手にはトレード拒否条項も存在します)

 

 

期限付移籍
(レンタル移籍)
移籍先クラブと在籍元クラブ、選手の三者合意があれば移籍可能

期間は最短1か月~最長は在籍元クラブとその選手の契約満了日まで

在籍元クラブは、期限付で選手を渡す代わりに、補償金を得る事が可能でその金額はクラブ間交渉で決定

第20条

千葉ジェッツの晴山ケビンは滋賀レイクスターズへレンタル移籍

2020年6月9日、千葉ジェッツは晴山ケビン選手との契約基本合意、2020-21シーズンは滋賀レイクスターズへ期限付き移籍(レンタル移籍)すると発表しました。

滋賀レイクスターズは、2020-21シーズンはコロナ禍の状況で非常に厳しいクラブ経営となりそうだと声明を発表していました。

レンタル移籍は、契約の観点から選手・両クラブそれぞれの立場で利点があります。

  • レンタル移籍は、選手(晴山ケビン)からすると契約内容は変えずにプレーするチームだけが変わる、という事になる
  • 在籍元クラブ(千葉)からすると、移籍先クラブから補償金を得る事により、契約を解除・変更する事無くクラブ負担を減らす事が可能になる
  • 移籍先クラブ(滋賀)からすると、選手と新たに契約を結ぶより低い金額の補償金で選手を自クラブでプレーさせる事が可能になる

 

千葉の選手契約人数は、晴山のレンタル移籍発表時点ですでにMAXの13名(+1名の特別指定選手)で、晴山をチームに残しておく事は不可能でした。

にも関わらずレンタル移籍になったという事は、千葉と晴山は2019-20シーズンもしくは2020-21シーズンに複数年契約を結んだ可能性があります(単年契約でのレンタル移籍なら千葉にメリットが無い)

 

 

移籍金


移籍金の対象

B2→B1のように上のカテゴリーへの移籍は契約満了前後に関わらず必ず移籍金が発生する
なお基準となるカテゴリーは新契約開始時にクラブが所属しているカテゴリーである

第22条
移籍金の金額

所属元クラブとの旧契約と、所属元クラブが提示した新契約のいずれか低い金額を移籍金とする。ただし、双方クラブ間の合意で減額は可能。

移籍金の上限額は240万円(税抜)

第23-24条
移籍金の対象選手

日本人のプロ契約選手
(外国籍選手やアマチュア選手は対象外)

第25条

Bリーグの移籍金は「契約期間満了後」も発生する

Bリーグの移籍金は、上のカテゴリーへの移籍のみ発生します。この目的は選手を引き抜かれた下カテゴリーのクラブ救済です。

サッカー界の移籍金とは目的が大きく異なります。大きな違いは「契約期間」との関係です。

【サッカー界の移籍金】
一般的に「契約期間中」の選手移籍に対して発生する。契約期間満了後は移籍金が発生せず「0円移籍」と呼ばれる。

【Bリーグの移籍金】
上のカテゴリーへの移籍は「契約期間満了後」も発生する

この点はあまり知られておらず、サッカー界とBリーグの移籍金が混同されることがあります。

 

 

選手登録・人数・外国籍選手と帰化選手・IL

登録人数 アマチュア選手登録は、B1は2名まで、B2は5名まで

選手登録人数はB1およびB2クラブどちらも10名~13名

第35条

選手登録人数13名なら必ず1名はベンチ外

選手登録人数:最低10名~最大13名(+特別指定選手 最大2名)

1試合に出場可能な人数:最低10名~最大12名
参照:2019-20 B1・B2リーグ戦試合実施要項 第6条〔試合エントリー選手およびチームスタッフの人数〕 

もしクラブが選手登録を13名した場合、必ず選手1名はベンチ外となります。特別指定選手がいる場合でも出場可能人数は増えませんので、さらにベンチ外の選手が増える事になります。

 

 

外国籍選手と帰化選手 外国籍選手の登録人数は、1クラブ合計3名以内

帰化選手は、外国籍選手と別途1クラブ合計1名以内

帰化選手は、必ず帰化選手として登録しなければならない。帰化選手を外国籍選手として登録は出来ない(シーズン中に許可された帰化除く)

第36条

※2020-21シーズンより
アジア特別枠」選手が帰化選手同様の扱いになる
外国籍選手の1試合に出場可能な人数2名から3名に変更
参照:B.LEAGUE 2020-21 SEASONより適用の 外国籍選手の登録数とオンザコートルールの変更

千葉ジェッツはマイケル・パーカーとは契約できない

2020年6月1日、千葉ジェッツはギャビン・エドワーズ選手と契約継続を発表しました。ギャビン・エドワーズは2019-20シーズン中の2020年1月23日に日本帰化が許可されました。

2019-20シーズンの千葉はマイケル・パーカー選手と帰化選手として契約していましたが、シーズン中の帰化だったためギャビン・エドワーズとマイケル・パーカーどちらとも契約継続できました。

しかし「帰化選手を2名以上登録する事は不可」という規約により、2020-21シーズンの千葉はマイケル・パーカーと契約できない事になります。

 

 

インジュアリーリスト
(略称 ” IL ” 怪我人リスト)
同時に2名まで登録可能。IL登録中は代替選手の契約可能

選手の登録期間最終日(2月末日)以降は、代替選手の契約不可

IL登録後30日間は選手登録に復帰出来ない

ILからの選手登録復帰は、登録期間最終日(2月末日)以降も可能

第37条

ILで選手登録人数を増やす事は難しい

2020年5月13日、琉球ゴールデンキングスの岸本隆一選手は指定難病とされる潰瘍性大腸炎と診断された事を発表、同5月14日に契約継続を発表しました。岸本は2020-21シーズンのプレーに意欲を示しています。

ここで、琉球は岸本をIL登録・復帰を繰り返して選手登録人数を増やす事は可能なのかという疑問が生まれます。

もし岸本を開幕時点からIL登録した場合、規約上は選手登録MAX13名に加えさらに1名の代替選手登録が可能となり全14名の登録が可能です。

しかし岸本をILから復帰させる場合、他の選手1名を契約解除しなければならず補償金も発生。金銭的負担も大きくなります。

ILはあくまで一時的な登録抹消であり、現実的にはILを利用して選手登録人数を増やす事は難しいと言えます。

 

 

特別指定選手

特別指定選手


特別指定選手の対象

そのシーズンの前シーズン4月1日時点で満22歳の誕生日を迎えていない選手(いわゆる大学4年生まで)

日本国籍で外国籍選手ではない

第39-40条
特別指定選手の登録人数

通常の登録人数(10-13名)と別途、シーズン中2名まで登録可能

第41条
特別指定選手の契約区分

他のアマチュアチーム(学校含む)に登録している場合 > アマチュア契約のみ

他のアマチュアチーム(学校含む)の登録から外れる場合 > プロ契約も可能

第42条

赤穂雷太は千葉ジェッツと特別指定選手としてプロ契約

2020年5月26日、千葉ジェッツは赤穂雷太選手特別指定選手としてプロ契約を結びました。所属していた青山学院大学バスケ部も退部した模様です。

2019-20シーズン、赤穂は横浜ビー・コルセアーズと特別指定選手契約を結んでいましたが、青山学院大学バスケ部にも登録していたのでアマチュア契約でした。

赤穂は横浜では9試合の出場でしたので、2020-21シーズンは新人選手扱いとなります。

特別指定選手は大学生が多いので誤解しやすいですが、プロ契約も可能です。日本国籍で対象年齢であれば大学生である必要もありません

 

榎本新作は特別指定選手契約が可能

FIBA U-19ワールドカップに日本代表として出場した榎本新作(米国名 アイザイア・マーフィー)選手が2020-21シーズンからBリーグでのプレーを希望しています。

彼は1998年4月10日生まれで、2020年4月1日時点は満21歳なので特別指定選手の対象選手かつ新人選手扱いです。

榎本は契約選手人数MAX13名に含めずに契約が可能です。

 

たまにはBリーグの規約も読んでみよう!

B.LEAGUE 2019-20 定款・規約・規程

各プロスポーツのルール・規約はそのプロスポーツの成熟度を測る指標といえます。リーグの目指すビジネスモデルがそのルール・規約に現れるからです。

そして各クラブはそのルール・規約の中でいかに他クラブを出し抜けるか、腕の見せ所です。

コート外での勝負をより深く知るためにも、たまーにはBリーグの規約を読んでみては?全335ページですが…(私は読んでませんw)

 

 

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事