煮え切らない勝利 琉球ゴールデンキングス vs 京都ハンナリーズ

(文:湧川太陽、写真:tomo)

12月14日(水)、琉球ゴールデンキングスは京都ハンナリーズと沖縄アリーナで対戦した。今季の京都はこの試合前まで7勝11敗と黒星先行ながら、三河から移籍のジェロード・ユトフ、ポイントカードの久保田 義章を中心にスピード感あるバスケットボールを仕掛けてくる。今季の可能性を感じさせるチームに生まれ変わった京都にキングスはどう戦うか。

 

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前半で勝負を決めるキングス

キングスのスターティングメンバーは、#1 ジョシュ・ダンカン、#14 岸本 隆一、#30 今村 佳太、#34 小野寺 祥太、#45 ジャック・クーリー。

対する京都のスターティングメンバーは、#1 ジェロード・ユトフ、#11 久保田 義章、#21 満田 丈太郎、#31 シェック・ディアロ、#7 マシュー・ライト。

 

キングスは試合開始から連続得点。ダンカンの3ポイントシュート、小野寺、今村のドライビングレイアップ、クーリーのオフェンスリバウンドからの得点と、試合開始2分半で9-0のラン。

 

1クォーターを25-17と8点リードで終えたキングスは、2クォーターも京都を圧倒。

クーリー、アレン・ダーラムの2人が京都のインサイドを制圧。クーリーは2クォーターだけで10得点6リバウンド。クーリーとダーラムの2人で京都のインサイド選手をファウルトラブルに追い込み、試合を優位に進める。

キングスはディフェンスも好調。足を止めずソリッド(硬い)なチームディフェンスを続け、2クォーターの京都の得点をわずか9得点に抑える。

 

2クォーター終了時点でのスコアは49-26、キングスは23点の大量リード。攻守で圧倒するキングスは、勝負の行方を前半でほぼ決めてしまった。

 

煮え切らない勝利

試合の結果から言えば、キングスはこの試合に81-65と16点差で勝利した。

試合スタッツ:Bリーグ 2022-23 B1リーグ戦 2022/12/14 琉球 VS 京都 | B.LEAGUE(Bリーグ)公式サイト

 

ただし、試合終了のブザーが鳴った時、アリーナの空気が勝利の喜びが充満したわけではなく、何とも煮え切らない勝利となった。その理由は、後半のキングスの試合の進め方にある。

3クォーターだけの得点は、キングス 16-19 京都
4クォーターだけの得点は、キングス 16-20 京都

後半だけの得点は京都がキングスを上回った。前半は抑えられた京都の得点源のユトフや久保田も、後半はリズム良くシュートを放って京都のオフェンスを牽引した。

 

しかし煮え切らない勝利は、得点ボードの数字が理由ではない。

勝利への『情熱』が、試合の時計が進むごとに冷めていくように感じた。そう感じさせたのは何なのか。確かにキングスはオフェンスファウルや不用意なパスからのターンオーバーが多くなり、後半はリズムに乗れなかった。だが一つひとつのプレイが上手くいかなかった事が問題ではないように思う。

 

試合終了後の記者会見。煮え切らない表情で会見に現れたキングス桶谷HCに、後半のキングスの試合の進め方について聞いてみた。

リーダーシップとは

−−後半にリズムが悪くなったきっかけは?

(桶谷HC) 無駄なオフェンスファウルかなと思っています。無理やりプレイしすぎているのが良くなかった。もっとスマートにバスケットすべきだった。その流れで(京都が)ゾーンディフェンスに変化した時、自分たちがSamePage (共通理解)でプレイできず、練習とは違うポジショニングをしていることもあってリズムが崩れてしまった。課題として持ち帰りたい。

 

−−バスケットボールでは相手に試合のリズムがいく場面は必ずあるが、その時また自分たちにリズムを持ってくる力がまだ弱いと感じたが、そのためにはいま何が必要と考えている?

(桶谷HC) リーダーシップを持つ選手がもうそろそろ出てきていいのかなと感じている。今季はみんな任せているなと少し感じている。(タイムアウトではなく)ライブでSamePageにならない。ベンチからではなくコートの中でSamePageになるようにリーダーシップを出す選手が出てきて欲しいなと感じました。

 

−−シーズン後半、プレーオフに向けてそのリーダーシップは醸成できるか?

(桶谷HC) 松脇、田代、牧などが一緒に出ている時間帯も多いので、彼らにリーダーシップが出てきたらプラスになる。自分たちのパフォーマンスが上がってきていないので遠慮している部分もあるのかもしれないが、彼らは出来る素質があるので(リーダーシップを取ることが)出来ると思っている。

 

 

チームにおけるリーダーシップとは何なのか。キャプテン田代にもリーダーシップについて質問があった。

−−チームが上手くいかなくなった時間帯でのリーダーシップについてどう考えるか?

(田代) 僕は『誰か』というより『全員』でやるべきだと思っています。苦しい時間帯に誰かに頼るという姿勢の方が良くないと僕は思っている。全員がリーダーシップを持つべきだし、全員でこうしようああしようと話し合う必要がある。喋っているメンバーが変わらなくなってきているので、喋ることに消極的な人ももっと喋る必要がある。そういう声を吸い上げるのが僕なりのリーダーシップ。

 

−−そこはシーズン進んでいくなかで成熟していきたい部分か?

(田代) 自分の意見を伝えられる選手が、最後の舞台に立てる選手だと思う。最適解を出すことをコーチ陣に頼ってばかりは良くないので、コートに出ているメンバーで、今こうしていかなきゃいけない、と話し合う必要がある。そこは成熟させていきたい。

 

 

プロスポーツは『勝利』を目指して戦うし、観客もそれを望んでいる。だが『勝利』だけでは熱狂を生みだすには少し足りない。コート上で何を表現するか。アリーナが熱を帯びるかどうかはそこにある。

キングスはもうその領域に近づいてきている。チームの成長の証でもあるし、難しさでもある。

 

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この記事を書いた人

地元で開催されるFIBAバスケットボールワールドカップ2023に貢献するべく奮闘中!
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