9月18日(水)、琉球ゴールデンキングス vs 福井ブローウィンズ プレシーズンGAME2が沖縄アリーナで行われ、79-72でキングスが勝利した。
福井ブローウィンズの伊佐勉ヘッドコーチ、#16 渡辺 竜之佑、#6 長谷川 智伸の古巣対決となったプレシーズンゲームのGAME2は互いに開幕前の重要な試金石となる試合に。
元キングスメンバーを有する福井にキングス2連勝
キングスのスターターは、#14 岸本 隆一、#18 脇 真大、#13 松脇 圭志、#12 ケヴェ・アルマ、#45 ジャック・クーリーの5人。プレシーズンゲームではイタリア遠征も含めて全5試合、同じスターティングメンバーとなっている。
キングスは前日に続きやや落ち着いた立ち上がり。コーナーへのボールの供給を意識しつつ、次第にクーリーとアルマのビッグマン同士のハイローでの崩しの形が安定していく。
セカンドユニットの小野寺 祥太、荒川 颯、新加入の伊藤 達哉がコートに入るとディフェンス強度が一段階上がる。
3ポイントラインの外周りのディフェンス強度が上がることで、攻守の切り替えも良くなり試合が動き出す。スティールからの速攻もあり、伊藤が自身の股下から通すお洒落パスから小野寺のレイアップに繋がるが、これが惜しくも外れてしまう。
全体的にスピード感のある展開に持ち込むが、福井もアップテンポの試合展開に呼応するようにリズムが生まれて18-18の同点で1クォーターを終える。
2クォーターは1クォーターに続いて伊藤が攻守の切り替え・トランジションでチームに勢いをもたらす。速い展開で1つ2つ3つと波状攻撃が可能となり、福井のディフェンスに混乱を生む。
テンポが良くなった事でスタートメンバーのボールもポンポンと動くようになりセットオフェンスでも切れ目のない連続性のあるパス回しからの崩しが随所に出て40‐33。キングスは7点リードで前半を折り返す。
3クォーター、キングスはスタートと同じメンバーで試合に入る。後半開始直後はアルマを中心にオフェンスを組み立て得点を狙いに行く。
アルマをフィニッシャーにしてインサイドとアウトサイドを同時に攻めるプレーで福井のディフェンスに判断を迫り、試合を優位に進める。
アルマとの交代で入ったカークとクーリーのツービッグの連係プレー。2人で繰り返しローポストから3ポイントの外までアップダウンを繰り返してハイローの連係を見せる。
4クォーターに入り、疲れの見える福井にキングスの強度の高いディフェンスがハマる。
連続で福井にターンオーバーを誘発させると何とかこじ開けようとする福井に対して、植松 義也とクーリーがブロックショットでリングを守る。アルマが見事なユーロステップで得点を上げて試合が決まりかけるが、脇の判断ミスでターンオーバーをしてしまい終盤に福井に可能性を与えてしまう。
しかし最後は琉球一筋13年目の岸本が試合を決める3ポイントを沈めて79-72でキングスが勝利。
伊佐HC、#18渡辺竜之佑、#6長谷川智伸と元キングスメンバーを有する福井ブローウィンズとの2連戦はキングスの2連勝で幕を閉じた。
セカンドユニットが躍動
プレシーズンが始まって5試合目。スタートのメンバーが固定されてきたなかで、セカンドユニットのメンバーも固定されつつある。
伊藤、荒川、小野寺、植松、カークがセカンドユニットとしてプレーしている。
前日の試合では相手に流れを渡しかねないターンオーバーをしてしまったセカンドユニット。GAME2では伊藤達哉を中心に躍動した。
伊藤「スタメンに疲労がみられる中で、セカンドユニットが上手くゲームを作ることが出来た」
と語るように、スタートメンバーよりも速い展開でボールを動かして、速攻がダメなら、2次攻撃、それがダメなら3次、4次と切れ目のないボールムーブメントを展開した。
セカンドユニットのアップテンポな展開について荒川は「強度の高いディフェンスから流れを作る事でオフェンスにもいい影響がおよんでいる」とし、あくまでも速いオフェンスを目的としているわけではなく、強度の高いディフェンスの結果、オフェンスも速く、力強くなっていると分析した。
また今季キャプテンを任された小野寺も今季はディフェンダーとしての役割だけでなく、ドリブルで打開する役割も任されている。植松も昨季以上に3ポイントとゴール周りのフィニッシュが多くなっているので、それぞれがこれまで担ってきた役割より、ひとつかふたつ多く役割を与えられている。
まだ不慣れな役割なため遂行するという意味では物足りない所もあるが、今回の試合の様にセカンドユニットが試合の均衡を壊すエナジーを持っている事は証明出来たのではないだろうか。
リーグ屈指の強力なインサイド陣
福井戦GAME2もキングスのリーグ屈指のインサイド陣は今季も健在。
帰化選手のアレックス・カークは18分16得点4リバウンドで勝利に貢献。荒川からパスを受けたカークの豪快なボースハンドダンクはこの日のハイライトシーン。沖縄アリーナを沸かせた。
カークは今季はこれまで攻守ともにフットワークが良く、コンディションの良さが伺える。
新加入のケヴェ・アルマは21分14得点9リバウンドとマルチな活躍。ボールが停滞した時の預け先にもなっており、力強いアタックを見せたかと思えば華麗なステップでディフェンスをかわし得点に結びつけてみせる。
アルマはディフェンスでも存在感をみせる。Bリーグで長年トップレベルで活躍するライアン・ケリーをタフショットに追い込むプレーを連発。パワーはもちろん、技術で勝負してくるタイプの選手にも主導権を渡さないディフェンスは新シーズンの活躍を期待せずにはいられないパフォーマンスだ。
チームの大黒柱ジャック・クーリーは26分出場7得点14リバウンド5アシスト2ブロックと、さすがの存在感を発揮。
今回、特に注目したいのはアシスト数。クーリーの5アシストは2021年05月02日名古屋D戦以来となっており実に3年4ヶ月ぶりの記録。
昨季まではクーリーがフィニッシャーとなっていたがプレシーズン段階とはいえ今季はクーリーがパスの出し手となるケースも多くなっている。開幕前だからこその意識づけとして強調している部分も大きいかもしれないが、新シーズンはフリースローライン付近でパスを捌く司令塔クーリーがみられるかもしれない。
この強力なインサイド陣に加えて、現在負傷で欠場が続いているヴィック・ローも控えている。それぞれの選手が力を発揮して、健康面が保てれば今季もリーグで屈指のインサイド陣であることは間違いない。
伊佐ヘッドコーチ「我々の可能性を感じさせる試合が出来た」
前日の試合後の記者会見で悔しさをにじませた伊佐ヘッドコーチは第2戦は一定の手応えを感じていた。
「前日の反省をいくつか修正して選手たちは一生懸命遂行しようとしてくれました。B1トップのキングスさんと試合になったかなと思います。多少のエラーはありましたけども、我々福井ブローウィンズの可能性を感じさせる試合が出来たかなと思います」
前日のフィジカル的な部分での課題について伊佐ヘッドコーチは
「フィジカルレベルが改めて違うと感じたので、そこは今日はアジャストできたかなと思います。練習からいい習慣で自分たちのスタンダードをキングスさんがやってるようなフィジカリティとプレーのスピード、そこがすごく勉強になりました。
開幕にむけて、まずは練習から。また良い習慣を毎日毎日積み重ねて成長していけたらなと思います」
古巣との対戦で得た課題と開幕に向けての意気込みを語った。
前日の試合後に岸本に「竜之佑の経験がチームに落ち着きをもたらしている」と評された福井の渡辺 竜之佑は元チームメイトの岸本との対戦の印象について
渡辺「めちゃくちゃ速かった。あと僕が言うのもなんですけど、僕が琉球に在籍していた時と比べて、めちゃくちゃガードが上手くなっていた。当時はどちらかというと2番ポジションをやっていたんですけど、今はボールも運んでゲームメイクもしますし自分で得点も取れるし何でもできる選手になっている」
と同郷の先輩を称賛。
今回地元での試合についても「友人が見に来てくれて、素直に嬉しいです。僕の試合を見て俺も頑張ると言ってくれたりするので、僕も応援してくれる人の為にもっと頑張っていきたいと思います」
地元と友人に対して感謝の思いを語った。
伊藤「沖縄アリーナの雰囲気は最高です!」
桶谷ヘッドコーチ「(伊藤)達哉に関しては今までで一番のパフォーマンスだったと思います。やっぱりポイントガードとしてアシスト5、ターンオーバー0に2スティール。もう最高ですね。」と笑みをこぼした。
2番起用の荒川についても「颯に関しては昨日は3ポイント外してたんですけど、練習してそこでちゃんと今日決めてくるっていうところ。シュート力というのは、今シーズン彼の持ち味として僕らは期待しています。こんだけシュート決めてくれたっていうのは良かった。僕らとしても収穫ですし本人も自信になったんじゃないかな」とシューターとしての役割に期待を寄せた。
シューター兼ハンドラーとなる2番起用が増える荒川は
荒川「チームと合流して最初の練習でめちゃくちゃシュートが入ったんです(笑)昨季の 3 ポイントのパーセンテージを見ると、20%台であまり良いシューターではない、という風に扱う思われていると思うんですけど、僕自身シュートが苦手なわけではないし、練習で成果が出たから役割を与えてもらっているというのはあると思うので、責任持ってやっていきたい」と語った。
また同時起用が多くなると予想される伊藤のことを「本当に生粋のポイントガード」と表しながらも自身の今季の役割についても
荒川「昨季は慣れない1番ポジションをやりながら思い切りに欠ける部分があったと思うんですけど、今シーズンは達哉さんが出てる時はもう完全に2番ポジションとして自分がチームに必要な部分っていうのをやっていきたいと思います。」と意気込みを語った。
ポイントガードとして期待のかかる伊藤は持ち前のスピードと積極性でセカンドユニットをけん引。
伊藤 「ここ最近のイタリア遠征も含め、昨日の試合もそうですけど、ちょっと積極性が欠けていた部分もあって。フィットするためにもっと僕の持ち味である積極性っていうのを今日出せたかなと思っていて。それでうまくチームの流れも変えることができたので、これをシーズン60試合通してやっていきたいと思います。」
また新体制のチームに対しても自信をのぞかせる。
伊藤「昨季の中心選手が抜けて若手選手が多い中で、僕とアルマ選手が入って全然違うバスケになるとは思うんですけど、ここからさらにヴィックが戻ってきたり、今シーズンはいろんなバスケをお見せすることができるかなと思います。」と抱負を語った。
キングスの一員として初めて沖縄アリーナでプレーした伊藤は福井とのホーム2連戦を終えて「雰囲気は最高です!」と言い切った。
福井との試合を2連勝したことでイタリアから帰国後、連勝を3に伸ばしたキングスは9月22日(日)、9月23日(祝)にカール・タマヨを有する韓国KBLチーム、昌原LG Skersと沖縄アリーナで対戦する。
(文:新里樹真、写真:Hamataro)