『魔境』西地区での争い
——西地区、特に島根、名古屋D、広島との上位争いが激しかったが、シーズン前のご自身の予想と、実際戦ってみてどうでした?
シーズン前から(西地区のライバルチームは)厄介だなと思っていました。
特に僕らはプレーメーカーの2人(並里成、ドウェイン・エバンス)が移籍して、だからこそのポジションレスでした。その部分で序盤戦は苦しみました。僕らの成績も、いつもだったら地区首位に値する高い勝率だったとは思うんですが、それでも首位をキープしきれないという西地区のレベルの高さがありました。
僕らキングスは後半で仕上がっていくタイプではありますが、他チームも後半戦になっても負けることが無かったですし、自分たちが良いバスケットをして勝ち続けても、西地区の他チームも勝ち続けた。(ライバルチームは)後半戦に少し崩れてくるかなと考えていたので予想外でした。
そういう強いチームがいたからこそ切磋琢磨して自分たちのプレーの質も上がったと思いますし、西地区のチーム初のBリーグ優勝にも繋がったと思っています。
——キングスは地区連覇中だったし、勝率的には悪くない、というよりとても良い勝率でしたが、それでも地区首位に居ない状況にプレッシャーは感じましたか?
比べるものではないとは思うんですけど、他地区の順位と勝率を比べてみても、僕らの勝率で西地区首位を取れない状況に「おかしいよね?」みたいな話はしていたんですけど(笑)。ただ本音の部分では、(地区順位は)意識していませんでした。
ファンの皆さんも西地区6連覇という事を期待してくださっていたとは思うんですけれども、自分たちは何よりもその前のシーズンで準優勝に終わってしまったことが大きかった。「最終的にファイナルで優勝したチームが一番」と思っていたので、(ファイナルで)一番良いチームになれるように練習を続け、レギュラーシーズンの試合も戦っていました。
——シーズン中の記者会見でも僕らメディアはどうしても「西地区優勝」について質問してしまうが、ヘッドコーチはじめほとんどの選手は「西地区優勝をしたい」とは言わず「優勝するためにはホームコートアドバンテージが必要だ」と話していたのが印象的でした。結果としては同じだが、その意味はかなり違う。
「西地区優勝」「地区連覇」という称号を得るよりも、ホームコートアドバンテージ、つまりチャンピオンシップのクォーターファイナルとセミファイナルをホームでやれる事の大きさを自分たちは知っています。
この沖縄アリーナの満員のお客さんの前で試合ができることが、自分たちにとってどれだけ大きなアドバンテージになるかを考えると、(西地区優勝は)獲らなきゃいけないと思っていたし、実際にクォーターファイナルとセミファイナルを4連勝できた。沖縄アリーナでチャンピオンシップを戦う大きさは、これからも変わらないと思います。
——NBAではプレイオフのホームコートアドバンテージがとても重要になるが、ひとりのプレーヤーとして沖縄アリーナのチャンピオンシップの雰囲気はいつもとは違うと感じますか?
本当に沖縄アリーナの雰囲気が違うし、何故なんだろうと思っていて、今季はチャンピオンシップ直前に声出し解禁もありましたけど、やっぱりファンの皆さんが僕たちと同じメンタリティで会場に来てくれてるなっていう気がします。ファンの皆さんも一段ギアを上げて応援してくれる。
その雰囲気が自分たちがより高いモチベーションでバスケットボールが出来る一つの要因になっているし、常に気持ちを高ぶらせてくれる力が、ファンの皆さんと沖縄アリーナには詰まっているなと感じます。
——ヘッドコーチや多くの選手が4月のアウェー島根戦(2023.4.12)が転機になったと話しているが今村選手もそう思いますか?
激しく西地区の首位争いをしている状況で、試合のスタートから自分たちのバスケットボールをやり続けるんだという意識がすごく強かった試合でした。
特にディフェンスの部分はこの試合で完成したかなと僕は感じていて、どんな選手やどんなタイプのチーム相手でも、自分たちはこういう守り方が出来る、と見せることができた試合だと思います。そういった意味ではメンタリティ的にも技術的にもすごく転機になった試合でした。
——あの時は島根が地区首位で、もし島根が勝利していれば西地区優勝がほぼ決まる状況でした。そんなプレーオフライクな激しい試合をアウェーで戦う時の心境はどうでした?
僕はああいうアウェーの試合が結構好きで、周りが敵ばかりの状況を黙らせたいという気持ちもあったりします。特に島根さんはここ2シーズン西地区のライバルチームだし、ここで負けたらチャンピオンシップにも響くと思っていたので、より一層気合いが入る試合でした。