『悔しさ』という経験 B.LEAGUE FINALS Game2

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3Q 小野寺の咆哮で逆転するキングス

3クォーター最初の得点はキングス。宇都宮は1クォーター開始同様に岸本にダブルチームを仕掛けたが、岸本は冷静にドリブルでコートを動き、最後はゴール下のクーリーへパスを通して得点した。

さらにキングスはエバンス、クーリーがインサイドで得点を重ねて残り7:38にはスコア38 – 40と2点差に迫る。

写真提供: B.LEAGUE

 

しかし宇都宮が再び岸本をターゲットにする。鵤が岸本をバックダウンで押し込みフックシュートで得点。

宇都宮はその後も岸本へのバックダウンから攻撃を展開。逆境になるほどにBリーグ初代王者の冷静さとしたたかさが際立つ。そしてクーリーがオフェンスリバウンド争いから3つ目のファウルを犯しベンチに下がる。

 

キングスは大黒柱のファウルトラブル、スコアも43 – 48と宇都宮5点リード。だがここからキングスにエンジンがかかる。

クーリーと交代で入ったダーラムがすぐさまインサイドで得点、さらに残り3:03 ファストブレイクからエバンスが比江島から3つ目のファウルを奪いつつ得点。

宇都宮はタイムアウトを取るがキングスの流れは止まらず、エバンス、ダーラムがファストブレイクで連続得点。さらに#34 小野寺が前からプレッシャーをかけて#7 テーブスのターンオーバーを誘発。

気迫のディフェンスを見せた小野寺は、満員のキングスファンに向かって叫びチームを鼓舞する。

小野寺が奪ったポゼッションもエバンスがインサイドで得点。キングスはついに54 – 52と逆転に成功。沖縄アリーナのパブリックビューイングも両手を上げて盛り上がる。

 

その後宇都宮#20 フィーラー に3ポイントを返されて、3クォーターは54 – 55と宇都宮を1点差まで追い上げた。そのままキングスの流れで最終クォーターに進むかと思われた。

写真提供: B.LEAGUE

 

4Q 悔しさ

4クォーター、宇都宮は再び冷静にキングスに襲いかかる。

キングスの勢いを2−3ゾーンでいなすと、比江島の連続得点などでで4クォーター開始1分半で6点連取。54 – 61と宇都宮7点リードに押し戻す。

キングスは後半1回目のタイムアウトで流れを取り戻そうとするも、宇都宮#13 渡邉に3ポイントを決められてさらに流れは宇都宮に傾く。

キングスに試練が襲う。岸本が足が痙攣した様子をみせて顔を歪ませる。オフェンスでフル回転してディフェンスでターゲットにされ続けた岸本の身体は限界ギリギリだ。残り7:15 岸本はベンチに下がる。

4クォーター開始から残り4:50 のオフィシャルタイムアウトまでにキングスは4得点しか出来ず、スコア 58 – 66と宇都宮8点リード。

徐々に時間が無くなってくる。キングスの面々に焦りの表情が浮かび、自らのミスでターンオーバーが続く。

 

残り3:26 小野寺に代えて岸本がコートに入る。これが最後の勝負どころだ。

残り2:58 キングスは全員で繋いだボールを、岸本がコーナーから3ポイントを成功させて63 – 68と5点差。東京体育館も沖縄アリーナもキングスファンは総立ちだ。

さらに残り2:22 ダーラムがローポストアタックでシュートをねじ込みさらにバスケットカウントワンスロー。66 – 68と2点差に迫る。

その後に宇都宮は比江島、鵤と得点。キングスはフリッピン、今村が3ポイントをねじ込み、72 – 74と2点差で残り1分を切る。

 

ここで比江島が試合を決定づける超スーパープレイを魅せる。残り46秒、比江島はクーリーが待つペイントエリアに力強くドライブ、クーリーをファウルアウトに追い込むエンドワン。ワンスローも決めて72 – 77。

ちょうど1年前、2020-21ファイナルGame3でファウルアウトした比江島が、その時から決して忘れる事はなかったであろう『悔しさ』が込められた、歴史に残るスーパープレイだった。

写真提供: B.LEAGUE

 

最終スコアは、75 – 82。宇都宮ブレックスは5季ぶり2度目の頂点に立ち、キングスは敗れた。

敗者は、黄金色の吹雪が舞う歓喜の瞬間を、悔しさを噛み締めながらじっと待つしかなかった。選手も観客も、敗者は皆『悔しさ』を噛み締めていた。

写真提供: B.LEAGUE

 

 

この経験は必ずや成長の糧となる

試合後の記者会見、自分たちが目指してきた場所に届かなかったキングスのメンバーは、前を向きながらしっかり語ってくれた。

岸本は、試合後に宇都宮の選手やコーチ陣に「とても強かった」と新たなチャンピオンの強さを賞賛しつつ「また絶対やり返す」と伝えたそうだ。

今村は、歓喜に包まれる表彰台から決して目を離さなかった。「今シーズン、あの景色は自分達が勝ち取るものだと思いながらずっとやってきた。本当に悔しかったが、あの景色を見れるのも自分たちだけなのでしっかり目に焼き付けておこうと思った」と語った。

 

桶谷HCは、支えてくれたファンに感謝を伝えながら、ファイナルで得た経験について語った。

「この経験を1回で終わらせるのではなく、その経験を繋いでいく事が、これからキングスが球団として必要な事。何が必要だったか、逆に何が通用したのか、しっかり繋いでいきたい。」

 

同じく岸本も、ファイナルでの経験を成長の糧とすると誓った。

「『いい経験になった』と言えるのは、今後の自分たちの行動次第なので、気持ちの整理がついたら、次に向かってしっかり前進していきたい。」

 

敗れたキングスが去った記者会見場には、優勝した宇都宮ブレックスが掲げた優勝トロフィーが運ばれてきた。

2020−21シーズンのチャンピオン千葉ジェッツも、今季のチャンピオン宇都宮ブレックスも、かつてはこの場で『悔しさ』を噛み締める経験をした。この日の琉球ゴールデンキングスと同じように。

この経験は必ずや成長の糧となる。それは、歴史が証明している。

 

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この記事を書いた人

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