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(文:湧川太陽、写真:Hamataro)

3月26日(日)、琉球ゴールデンキングス vs 仙台89ERS GAME2が沖縄アリーナで行われた。

キングスは、前日のGAME1に勝利したものの、ジャック・クーリーがディスクオリファイング・ファウル(悪質なファウル)を宣告されてこのGAME2は出場停止処分となった。さらに後半戦の好調を支えてきた牧も欠場。

大黒柱と重要なボールハンドラーを欠くキングス。難敵仙台を再び破ることが出来るか。

いつもとは違う勝利への道を模索するキングス

キングスのスターティングメンバーは、#1 ジョシュ・ダンカン、#7 アレン・ダーラム、#14 岸本 隆一、#30 今村 佳太、#34 小野寺 祥太。

仙台のスターティングメンバーは、#0 小林 遥太、#7 澤邉 圭太、#14 青木 保憲、#24 ジャスティン・バーレル、#45 ネイサン・ブース。

最初のポゼッション、キングスはダンカンが最初のシュートを放つ。ダンカンは今村にスクリーンをかけた直後に3ポイントラインの外に開く、いわゆるピック・アンド・ポップ(PnP)を選択。今村からパスを受けたダンカンは、迷わず3ポイントを放った。惜しくもリングに嫌われたが、クーリー不在のこの日、キングスはダンカンのシュート力を中心に攻めるという意思を示した。

そしてこの日スタメンに名を連ねた小野寺もファイトする。ドライブでチーム最初の得点を決めると、ディフェンスではゴール下へのパスにも飛びつき、観客のボルテージを一気に上げる。

 

対する仙台はミドルレンジのジャンパーが好調。ブース、トーマス、青木が続けてジャンパーを決めて点差を引き離されない。

そして残り2:50、ダンカンに代わり渡邉飛勇がコートに入る。

渡邉飛勇は積極的にローポストで1on1をしかける。周囲との連携に苦戦して、まだ十分なプレイタイムを得られていない渡邉飛勇だが、チームも彼を組み込もうともがいている。

 

仙台はGAME1同様に、強度の高いディフェンスでキングスに簡単にシュートを打たせず、逆に青木のブザービーター3ポイントで1クォーターを締める。

1クォーター終了時のスコアは17-18で仙台1点リード。大黒柱のクーリーを欠くキングスが、いつもとは少し違う形で勝利への道を模索していた。

 

負傷に屈しないフリッピン

2クォーターのキングスは、インサイドにダンカンとタマヨ、アウトサイドにフリッピン、田代、松脇という5人全員が3ポイントを打てるラインナップでスタート。

そのラインナップの狙いが成功。チームで作った形からダンカンが2本連続で3ポイントを決めて、23-18とキングス逆転。

 

しかし仙台も焦らない。オフェンス力のあるトーマスを中心に、ボールをシェアしながら攻撃の手を緩めない。

 

ダンカンとダーラムのどちらががベンチに下がると、ミスマッチのカバーでどうしてもディフェンスが後手を踏んでしまうキングス。残り6:45でタマヨに代えてダーラムをコートに戻す。

そして残り5:54、フリッピンが切れ味鋭いユーロステップで仙台ディフェンスの隙間に割り込み、レイアップで得点する。

 

素晴らしいプレイに観客が湧くが、その時不運にも仙台ディフェンダーの肘がフリッピンのまぶたの上に当たり出血。

しかしフリッピンは止血してコートに戻ると、2クォーターラストにブザービーターレイアップを決めてもう一度観客を湧かせた。

 

2クォーター終了時のスコアは32-36で仙台4点リード。仙台の粘り強いディフェンスと集中したオフェンスに、キングスもなかなかリズムを掴めない前半だった。

 

大観衆の波に呑まれない、仙台の粘り強さ

3クォーターの先制点は仙台。澤邉が難しいレイアップを決め、さらにバーレルのダンク、そしてエンドラインのスローインをスティール。仙台はわずか1分で後半の主導権を握った。キングスはタイムアウトを取り打開を図る。

残り7分、小野寺がハーフラインを超えた直後に厳しいボールプレッシャー。アリーナの観客が大声援で後押しすると、ダーラムがパスカットして、直後に岸本が右45度から冷静に3ポイントを決めて、スコア39-42とキングス3点差に迫る。

 

その後もダンカンのスラムダンク、今村のフリースローで45-45の同点になるも、仙台のインテンシティ高いディフェンスの前に、キングスは逆転することが出来ない。3クォーターは48-53と仙台5点リードで終了。

沖縄アリーナの大観衆の波に呑まれず、粘り強くプレイする仙台のチーム力が光る。

 

2日連続の「デジャブ」

4クォーター、両チームとも身体を張ったディフェンスを見せる。絶対に負けたくないという意思の表れだ。

 

残り8:30 松脇が左45度から3ポイントを決めて、スコア51-54と3点差にする。

 

一進一退の攻防が続く中、仙台もキングスも必死にボールを追いかける。沖縄アリーナには観客の「Go Go キングス!」の大歓声が響き渡る。キングスはダンカン、ダーラムが得点を重ね、仙台はバーレルを中心に決して諦めない。

 

68-68と同点で残り30秒、勝負を決めるクラッチタイムが近づく。沖縄アリーナの期待は背番号14に集中する。

岸本は左45度でボールを持ち、華麗にステップを踏んで3ポイントラインを飛び越えると、次の瞬間には大観衆の期待通り、ボールは放物線を描いてゴールに吸い込まれた。

71−68とキングスが3点リードとなり仙台がタイムアウトを取った。GAME1同様にクラッチショットを決めた岸本は、ベンチに戻るとチームメイトに「デジャブみたい」と言われて笑みを浮かべた。

 

岸本の大きな一撃にも仙台は諦めずに最後まで戦うが、最後はダーラムがファウルゲームのフリースローをしっかり決めてゲームを締めた。

最終スコアは75−70。キングスが苦しみながらも難敵仙台に連勝した。

試合スタッツ:Bリーグ 2022-23 B1リーグ戦 2023/03/26 琉球 VS 仙台 | B.LEAGUE(Bリーグ)公式サイト

 

交差する、二人の指揮官

琉球ゴールデンキングスの桶谷大HCと、仙台89ERSの藤田弘輝HC。二人は約2年前、互いのチームを入れ替わる形となった。

藤田HCはキングスから仙台へ。桶谷HCは仙台からキングスへ。そして2人は互いに結果を残した。藤田HCは仙台をB1昇格に導き、桶谷HCはキングス初のB1ファイナルの舞台へ導いた。

その二人が直接対戦したことについて、本人にそれぞれ聞いてみた。

 

仙台の藤田HCは、『反骨心』を何度も口にした。

「2日間ともバスケットで負けていたとは思っていないし、勝てる試合を落としたという気持ちで、本当に悔しいです。選手たちは本当にファイトしてくれて誇らしいです。キングスのゲームを決める時の決定力はさすがだと感じました」

「『反骨心』が無いと僕らのようなチームはB1では戦えない。琉球さんや千葉さんのような、僕らより人件費が2倍近くあるタレントを持っているチームには負けたくない、倒してやりたいと思って戦っています。タレントに勝つにはバスケットの力だと思っているので、そういう『反骨心』を持って戦いました」

「桶さんは本当にリスペクトしている指導者ですし、僕が若いころから良くしてもらっている方で感謝しかないです」

「ただ個人的には、キングスへの100%リスペクトはありつつ、自分の琉球ゴールデンキングスの離れ方がとても悔しい思いでいっぱいだったので、この2日間は絶対に勝ってやろうという気持ちしかありませんでした」

 

 

桶谷HCも、仙台という強敵そして藤田HCへの尊敬の念を持ちながら話してくれた。

「藤田君とは私生活でも飲みに行きますし、以前は海外研修でドイツに2週間近く一緒に行った仲でもあります。若くてタレント性のある、日本のバスケ界を席巻するようなコーチだと思っています。チームを入れ替わる形にはなったんですが、彼をリスペクトしています」

「久しぶりに彼と試合をしてみて、仙台89ERSは藤田HCの色が出ているチームに変わった、僕がいた頃よりもずっと強くなっているな、と感じました。『負けたくない』という意思をすごく感じる素晴らしいチームでした。さすが藤田君やな、という印象です」

 

二人の指揮官は、2年前に交差した互いの立場を、互いに尊敬の念を持ちながら、互いの持てる力とプライドをぶつけ合った。そして最後は、互いの健闘をたたえ合う抱擁を交わした。

 

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