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自ら『ゾーン』に入る河村勇輝

3クォーター、横浜BCのディフェンスのギアが上がる。

ハーフタイム、横浜BCの青木HCは「チーム全員の力を信じて、全員が自分たちのディフェンスを頑張れば、最後に追い付く事が出来る」と選手たちに語りかけた。もう一度チーム全員でひとつになった横浜BCは、クーリーに奪われたリバウンドを全員で取り返す意志の強さを見せる。

 

横浜BCは3クォーター残り4:16までキングスの得点をわずか4点に抑え、スコアリングモードの河村は次々に得点を積み重ねる。スコア60-58と横浜BCが2点差に詰め寄ってきた。

横浜BCは控えポイントガードの#18 森井 健太と河村を同時にコートに立たせ、いわゆるツーガードの状態から河村を得点に専念させる。

 

河村が素晴らしいのは、異常なまでの集中力。前半でキングスディフェンスの守備がレイトコンテストだと悟ると『シュートを放つ事』に気持ちを切り替え、視界にディフェンスがいようが躊躇する事無く3ポイントシュートを放ち、そして決め続けた。右利きの河村に対し、キングスディフェンスが左ドリブルに誘導するがお構いなし。逆に自分のシューティングハンドの右腕へファウルを誘っている素振りさえあった。

この大舞台で、冷静に状況を見極め、相手の予想を上回るプレイで魅せてくる河村勇輝。彼は間違いなく、自らの意思で『ゾーン』に入っていった。

 

試合を支配し始める河村勇輝。だが残り3:56、岸本が淡々とした表情でトップから3ポイントを決める。

「河村くんは本当に凄かったが『うちは違う方法で戦っていく』ということは少なからず皆が持っている。(キングスの)チームバスケットにそこまでの大きな影響は無かった」と試合後に岸本が語ったが、その言葉の通り、キングスの選手達は皆が自分たちのバスケットに集中し続けた。

 

残り2:53、キングスは全て角度が違う4つのパスを回し、横浜BCのディフェンス全員をペイントエリアに引き寄せると、トップでパスを受けた牧が躊躇する事無くシュートを放ち、この日4本目の3ポイントを決めた。

その直後、クーリーが豪快なブロックショットで勝利への情熱を見せると、沖縄アリーナの観客が大声援で後押しする。

 

3クォーターはスコア74-67で終了。沖縄アリーナで対峙する、全てを飲み込みそうな河村勇輝の『ゾーン』と、大声援の後押しを受けて自分たちを信じ続けるキングス。互いが互いを高めあう展開に突入していく。

 

若き挑戦者を退ける "KING"たち

4クォーター残り9:00、1分間のインターバルを終えて河村勇輝がコートに戻る。濃紺のユニフォームを纏った若き挑戦者が、"KING" に最後の勝負を挑みかかる。

 

残り8:40、河村はダーラムの目の前で3ポイントを決めると、さらに残り7:39にフリッピンのファウルを受けながら3ポイントをねじ込む。この時点で河村はプロキャリアハイの39得点に並ぶ。さらにカウントワンスローも決めて40得点。

沖縄アリーナの8,503人全てが、異次元の集中力を見せる小さな日本人選手のプレイに驚愕する。

 

迫り来る挑戦者。だがキングスは決して焦らなかった。プレイメイカーの役割を担った#7 アレン・ダーラムが、得点を狙いながら横浜BCディフェンスにプレッシャーをかけ続ける。

そして残り4:25、ダーラムはディフェンスリバウンドからそのままドリブルで突進すると、左45度で待っていた松脇にパス。オープンになった松脇は値千金の3ポイントを決める。苦しい展開を救う松脇のシュートに喜びを爆発させるキングス。

 

さらに残り3:10、またもやダーラムのパスから今村が左45度から3ポイントを決める。"KING"の3ポイント成功を告げる深紅のリボンビジョンが大声援のアリーナを包む。

スコア87-81と挑戦者に追いつく事を許さない今村の一撃は、ダーラムに6つ目のアシストを付けた。

 

何度も何度も"KING"の一撃を食らっても、挑戦者は試合終了のブザーが鳴るまで諦めない。

残り14秒、河村は体勢が崩れた状態で3ポイントを決めてスコア93-91と2点差。プロキャリアハイを大きく更新する45得点目となる3ポイントシュートは、この日一番のタフショット。圧巻というしかないプレイだった。

 

しかし最後まで冷静にプレイを続けるキングス。ダーラムがファウルゲームのフリースローを4本中3本決めて、死闘の幕を閉じた。

最終スコアは96-91。キングスが横浜BCの猛追を振り切り、初の天皇杯決勝進出を決めた。

試合スタッツ:BOXSCORE | 第98回天皇杯・第89回皇后杯全日本バスケットボール選手権大会公式サイト

 

圧巻のプレイを魅せた河村勇輝。彼が記録した歴史的な45得点は賞賛に値する。

しかしその圧巻のプレイに対して、キングスのディフェンスコンセプトは一度も破綻しなかった。河村がこの試合で放ったフリースロー以外のシュートは28本。キングスのディフェンダーはその28本全てにシュートコンテストをして、シュートファウルもわずか3回しか犯さなかった。

キングスのディフェンスも賞賛に値する素晴らしいプレイだったし、それを上回ったからこそ河村のプレイがより輝きを放っていた。

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