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キングス、千葉ジェッツに完敗 天皇杯決勝 琉球ゴールデンキングスvs千葉ジェッツ

(取材、文:湧川太陽 / 金谷康平、写真:Tomohiko Sato)

3月12日(日)、第98回天皇杯決勝が有明コロシアムで行われ、琉球ゴールデンキングスと千葉ジェッツが対戦した。

千葉はレギュラーシーズン圧倒的な強さで21連勝中。天皇杯にも絶対の自信を持って乗り込んできた。キープレイヤーである帰化選手のギャビン・エドワーズが怪我で欠場するも、豊富な運動量でボールにプレッシャーをかけ続けるディフェンスは健在だ。

キングスは昨季の天皇杯準決勝では千葉のホームで悔しい敗戦。だがこの日の舞台は、bjリーグ最後の優勝を勝ち取った有明コロシアム。"第2のホーム"である有明コロシアムで悲願の天皇杯初制覇なるか。

 

忘れてしまった "extra" PLAY

キングスのスターティングメンバーは、#1 ジョシュ・ダンカン、#14 岸本 隆一、#30 今村 佳太、#45 ジャック・クーリー、#88 牧 隼利。

千葉のスターティングメンバーは、#2 富樫 勇樹、#4 ヴィック・ロー、#14 佐藤 卓磨、#31 原 修太、#33 ジョン・ムーニー。

 

先制点はキングス。岸本が左サイド深くからディープ3ポイントを決める。しかし千葉もすぐにローが3ポイントを決め返す。

千葉は試合序盤から原の活躍が目立つ。今季好調の3ポイントを決めると、今村のドライブを強靭な身体で弾き飛ばしてボールを奪う。

千葉はファストブレイクからの得点、さらにムーニーがトップから3ポイントを決めてスコア 11-3 。ここまでわずか試合開始2分半。千葉は連続得点で先手を取る。

 

キングスのオフェンスプランは『パスアウトからの3ポイント』

ローポストのクーリーやダーラムに対してダブルチームにくる千葉ディフェンスに対して、ポストからのパスアウトで3ポイントを打つ。

そのプラン自体は上手く遂行出来ているかに見えた。牧、岸本、今村はローポストからのパスアウトで3ポイントを放っていた。残念ながらリングには嫌われたものの、この3ポイントが決まり始めれば形勢逆転する。コート上のキングスメンバーもそう感じていたかもしれない。

 

しかし、キングスは3ポイントライン上で適切な距離感が取れていないまま『パスアウトからの3ポイント』だけを実行。3ポイントの砲台となる選手同士が近すぎて、千葉ディフェンスが3ポイントへクローズアウトしやすいポジショニングでシュートを早打ちしてしまった。

 

結果、1クォーターでキングスの3ポイントシュート成功は9本中2本のみ。

キングスの3ポイントはトップから左右45度の間で打っていて、最も確率が高いとされる両コーナーからの3ポイントはほとんど打てなかった。コーナーにシューターが居なかったのだ。

 

ローポストからのパスアウト、さらに『もう一つ』のパスで千葉のディフェンスを振り回す事が出来ていれば……

1クォーター終了時のスコアは 19-15 で千葉が4点リード。

キングスが忘れてしまった "extra" PLAYは、徐々に自分たちのリズムを蝕んでいく。

 

リバウンドに『触れる』千葉ジェッツの集中力

2クォーター最初の得点は千葉。原がフリースローラインの位置からジャンパーを決める。

この場面、キングスが自分たちのリズムで戦えていない要因が見え隠れする。原が決めたジャンパーではない。原がシュートを打った瞬間、最も良いリバウンドポジションを押さえていたのは、千葉のリバウンダーであるムーニー。原はリバウンド獲得確率を考慮して、得点期待値の低いミドルジャンパーを敢えて選択したのだ。

 

キングスのリズムを作るのは圧倒的なリバウンド支配力。千葉のジョン・パトリックHCはそのリバウンドに対して不協和音を打ち込んできた。

 

千葉は佐藤、原の両ウイングだけでなく、控え日本人ビッグマンの荒尾も身体をぶつけながらオフェンスリバウンドに手を伸ばす。たとえ取れなくてもボールに『触れる』ことが出来れば、キングスはディフェンスリバウンドを手にする瞬間がほんの少し遅れて、気持ちよくオフェンスに移行出来ない。対照的に千葉はディフェンスでも良いリズムでキングスを苦しめる。

 

リズムが悪くなったキングスは、不必要なファウルが増えてしまい、リズムが掴めず3ポイントも単発になってしまう。

 

2クォーター終了時点のスコアは 46-39 で千葉が7点リード。千葉ジェッツのボールに対する集中力を前に、キングスは反撃の糸口を見出せないまま最初の20分間を終えてしまう。

 

"Find Way"

3クォーター、キングスは3ファウルのダンカンではなく#7 アレン・ダーラムをスタートにする。

 

残り6:42、今村がドライビングで原からファウルを受けながらレイアップをねじ込みバスケットカウントワンスローを獲得する。

 

追い上げの起爆剤となってもおかしくない素晴らしいプレイだったが、この場面での最善のプレイだったかは疑問符がつく。このプレイが千葉にとって本当に嫌なプレイだったのか。

 

この直前の残り6:51、千葉はディフェンスの要である佐藤が3つ目のファウルを犯している。ダーラムがディフェンスリバウンドから自らボールをフロントコートへ運んだため、ダーラムのマッチアップが佐藤にズレてしまった結果のファウルだった。

つまり、キングスがディフェンスリバウンドをしっかり確保してオフェンスを開始した結果、千葉にディフェンスのミスが起きて、ファウルまで犯してしまった。

帰化選手のギャビン・エドワーズが不在の千葉にとって、ディフェンスのキーマンは間違いなく197cmの佐藤だった。もし3クォーター中盤で佐藤が4つ目のファウルを犯せば、千葉のフロアバランスは一気に崩れたに違いない。

しかし、千葉のパトリックHCは佐藤が3つ目のファウルを犯してもベンチに下げなかった。隠れた勝負どころで、静かに勝負の賭けに出ていた。

 

キングスは、千葉の静かなる勝負の賭けに気づいていたのだろうか。千葉のわずかな綻びを見つけ出す冷静さ、"Find Way"を持ち合わせていただろうか。

千葉のディフェンスはスクリーンプレイに対してビッグマンが前に出てくるハードショーやローポストへのダブルチーム。つまり頻繁にマッチアップをスイッチしてくる。それを逆手に取り、千葉が必死に隠そうとしたファウルトラブルの芽を顕在化させられなかったか。

 

千葉は静かなる勝負の賭けに勝った。佐藤は3クォーター残り2:51にベンチに下がるまで約4分間、ノーファウルで身体を張り続けた。そして千葉は『パスアウトからの3ポイント』というキングスのプランを逆手に取り、そのパスアウトを2度スティールして得点に結びつけた。

 

3クォーター終了時のスコアは 66-58と千葉8点リード。"Find Way"をどちらが遂行しているかは明らかだった。

 

4クォーター、キングスは自らのプライドでもある、インテンシティ高いディフェンスさえも表現することが出来なかった。牧がアンスポーツマンライクファウルを犯した直後の残り5:36、千葉は#11 西村 文男が放った3ポイントシュートが外れるも、逆サイドから飛び込んできた原が身体を投げ出しながらマイボールにした。素晴らしい原のプレイであり、キングスにとっては許されざる大きなミスだった。

 

試合終盤、牧、岸本の連続3ポイントで4点差まで追い上げるものの、原が再び輝く。クーリーを振り切ってドライビングレイアップ、3ポイントと勝負を決定づける連続得点。

原はこの日ゲームハイの20得点、5リバウンドを記録。攻守ともにMVP級の活躍を見せた。

 

最終スコアは、87-76。キングスは再び千葉の前に敗れた。完敗だった。

試合スタッツ:BOXSCORE | 第98回天皇杯・第89回皇后杯全日本バスケットボール選手権大会公式サイト

 

敗者は、黄金色の吹雪が舞う歓喜の瞬間を、悔しさを噛み締めながらじっと待つしかなかった。選手も観客も、敗者は皆『悔しさ』を噛み締めていた。

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