琉球ゴールデンキングスの桶谷大ヘッドコーチが、今季初めてチームへ憤りの顔を見せた。勝負に負けたからではない。キングスのカルチャーを忘れたチームに憤っていた。
1月1日のホーム仙台89ERS戦、1月6日アウェーでのファイティングイーグルス名古屋戦と、キングスは今季二度目の連敗を喫した。FE名古屋戦の敗戦後の記者会見で、桶谷ヘッドコーチは「勝ち負け以前に、キングスはなぜ皆がこういうカルチャーを繋いできて、こういう球団になってきたのか。それをしっかり理解した上で自分たちのやるべき事をやって欲しいと思います」と語気を荒げた。
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1月7日のFE名古屋戦GAME2でキングスは快勝。試合中継最後の勝利ヘッドコーチインタビューで桶谷ヘッドコーチは「昨日のロッカールームで選手たちに『ふざけるな』と話をしました」と語気を強めて語る姿は、ファンの中でも話題になった。
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キングスは敗戦を乗り越えて自分たちのカルチャーを取り戻した。ロッカールームでヘッドコーチが伝えたかった事とは。『キングスの繋いできたカルチャー』とは。
アウェーの名古屋から、そのまま国境をまたぐ遠征となるEASLアウェー戦で訪れた台湾。1月9日に台湾で行われた試合前日練習取材にて、桶谷ヘッドコーチにその時を思い出しつつ話をしてもらった。
「あの時期、勝負の勝ち負けにだけにフォーカスし過ぎている部分がありました。何と言うか、自分たちはやっぱりアイデンティティを持ってプレーすることによって、自分たちの力を発揮すると思っています。チームが同じ方向を向いてバスケットをしないといけないと再認識させられた連敗でした」
「バスケットの部分だけを直すのであれば1つの負けだけでよかったかもしれない。しかしあのように連敗したことで、自分たちにとって大事な部分を見直すきっかけになったと思っています」
「勝ち負けはこの勝負の世界には必ずあるし、勝つ事はすごく大切な事なんですけど、その前に、僕たちが『キングスである意味』というところ。沖縄にあるバスケットボールチームとは何なのか。その部分はもう一度頭に入れてプレーしなければいけないと思います」
「FE名古屋戦も仙台戦も『ひどい試合やな』とやりながらも感じていたんですよね。戦術の部分を修正すれば勝てるんじゃないかとなずっとやってきてたんですけど、でもやっぱりそうじゃないよね。と突きつけれられた感じがしました」
2024年1月1日午後4時頃、石川県能登地方を震源とするマグニチュード7.6の地震が発生した。そして1月2日午後6時前、羽田空港で日本航空機が炎上する事故が発生した。新しい年の始まりに、日本全体が悲しみに包まれた。
桶谷ヘッドコーチは、自分たちがバスケットボールをする事で、何を伝えられるのかを語ってくれた。
「1月1日の震災や、2日の飛行機事故があり、尚更自分たちに突きつけれられた感じがしました。ちゃんとしなければいけないと目の当たりしました」
「僕たちは人々にエネルギーを与えられる存在にならないといけない。そんな簡単な話ではないし、偽善的な話でもなく、『スポーツの持っている力』って何なの?という部分。バスケットで偉そうに勝つだけでは、何のエネルギーもそこには出てこない」
「やっぱり一生懸命頑張っている姿、チームメイトをヘルプしている姿。それを見て初めて人の心が動く。そういう部分を間違ってはいけない。2024年のキングスはそれをしっかり持って戦っていこうという決心が出来ました」
「言い方は悪いですけど、(FE名古屋戦のGAME2は)僕は負けてもいいと思っていました。チームとして団結して戦う必要性。『団結の力』って別にプレーオフに行くタイミングだけじゃないよね、という話で。僕らは何年もかけてそれをやってきて、ただその言葉(『団結の力』)があるだけで。本質的に必要なその姿勢がしっかり出来ていたら、僕は負けてもいいと思っていました」
「皆が同じ方向を向いてバスケットしていたら(FE名古屋戦のGAME2のような)結果も出る。誰かが独りで我慢し続けていたらしんどいけど、誰かが手を差し伸べて我慢し続けられたら道は開ける」
「僕たちはそれをやらなければいけないし、それをやれた時に自ずと結果はついてくる。(FE名古屋戦のGAME2を勝利した事で)僕自身もそう思いましたし、選手達もそう思えたんじゃないかな」
以前のインタビューで、桶谷ヘッドコーチは『チームとは生き物。良い時もあれば、悪い時もある。人間と同じ』と語ったことがある。
台湾という異国の地で行われているチーム練習。琉球ゴールデンキングスの選手達は皆リラックスした表情で、楽しそうにバスケットボールをしていた。もちろん国境をまたぐ遠征は体力的な負担は大きいかもしれないが、普段とは違う街並み、普段とは違う食べ物、普段とは違う文化に触れることで精神的なリフレッシュが出来たのかもしれない。
残念ながら1月10日のEASL ニュー・タイペイ・キングスとのアウェー戦は敗れてしまったが、琉球ゴールデンキングスは主力の外国籍選手を欠くなかで、全員が協力して最後まで戦い抜いていた。
『キングスの繋いできたカルチャー』を、異国の地でもう一度思い出す。それが出来ていれば、琉球ゴールデンキングスはもう一度上昇気流に乗れるかもしれない。