試合後に語った「良いシュートで終わる」という意味
横浜BCとのアウェイ2試合、キングスにとって「いかに横浜BCのファストブレイクを出させないか」がポイントだった。
GAME2試合終了後、キングス桶谷HCは試合を振り返って興味深いコメントをした。
「GAME1では、ベースライン側にリバウンドに行って走られる場面がいっぱいあった。こちらのビッグマンが(オフェンス)リバウンドでベースライン側に押し込まれちゃって、それで相手にリバウンドを取られて前を向かれて走られていた」
これは、オフェンス時にシュートを打った瞬間の5人全員のポジショニングにまで細かくこだわることで、横浜BCの有利な位置でオフェンスをスタートさせない、させたくない、という意図がある。
良いシュートを打つことで、良いディフェンスに繋げる。
これは桶谷HCが今季ずっと口癖にしているフレーズだ。『良いシュート』とは何か?この日のゲームではその答えが少し見えてきた。
ゴールに入る事が『良いシュート』の全てではない。シュートとはすなわち、ボールが全てのプレイヤーの手から離れて『50/50』の状態になる事であり、オフェンスとディフェンスの境目に位置する瞬間でもある。ボールがゴールリングに到達する次の瞬間に、自分たちがより有利になる準備が出来ているか。それが『良いシュート』かどうかの判断基準である。
横浜BCのようなトランジションの判断が早いチームに対しては、より『良いシュート』で終わる事が重要になる。
その意味においては、この試合における田代の働きは素晴らしかった。一見すると田代本人がシュートを打てるタイミングでも、他の4人のポジショニングが『良いシュート』で終われそうになければ、ショットクロックをギリギリまで使ってでも次の『良いシュート』を探そうとしていた。
スタッツ上の田代のアシスト数は2つだが、実際のゲームにおいては効果的なパスをゴール下のクーリーやダーラム、ダンカンに通していた。
試合後の記者会見、パスに対する意図を田代に聞いてみた。
「適切なポジションに外国籍選手がいて、そこにボールを供給できた時の我々の得点効率がすごく高い。なのでボールを動かしながらジャック選手やダーラム選手を一番攻めやすいポジションに動かしていってボールを供給する。まぁ自分的な統計なんですけど。なので僕はボールを動かしながら人を動かしながら、ジャックが常にどこにいるのか目を配っているので、それをプレイとして体現しただけです。」
田代はさらっと答えてはいるが、チームに落ち着きをもたらしたのは間違いない。桶谷HCも「田代はすごく良かった。本当は(4クォーター)田代を代えたくなかったが、森川くんに打たれたくなかったので今村と交代しました」と高く評価していた。
ポジションレス、という言葉の印象だけが独り歩きしている雰囲気もあるが、全員がキラーパスを出す必要は無い。コート上の5人、いやベンチやスタッフを含めた全員が、同じ方向を向いて戦えるようになる事こそが『ポジションレス』なのかもしれない。そう感じさせた横浜での2連戦だった。