宇都宮ブレックス 佐々宜央アシスタントコーチ
2017−18シーズンから2019−20シーズン途中まで、琉球ゴールデンキングスをヘッドコーチとして率いて、コートサイドの情熱溢れる姿を覚えているキングスファンも多いはずだ。
2021年12月11日(土)ブレックスアリーナでのキングスとブレックスの熱戦終了後、OUTNUMBERは佐々さんに独占インタビューの機会を頂いた。
キングスファンに愛されていた佐々さん。沖縄へ来た当時の印象や、佐々さんが感じた沖縄のバスケ文化、そして日本代表アシスタントコーチとして戦うFIBA バスケットボールワールドカップ2023への抱負を伺った。
沖縄の第一印象は「なんて海が綺麗なんだ」
––2017年にキングスのヘッドコーチに就任。最初に沖縄に来た時の印象はどうでしたか?
僕、じつはそれまで一度も沖縄に行った事が無かったんです。
Bリーグの初年度、キングスの木村社長から「沖縄にキングスの試合を見に来なよ」と誘って頂いて、それで2泊3日の小旅行のつもりで沖縄を訪れたのが、初めての沖縄でした。
ありきたりな感想なんですが(笑)、沖縄の第一印象は「なんて海が綺麗なんだ」と感激しました。僕は海外育ちなので、沖縄の開放的な雰囲気も好きで「こんな場所に住んでみたいな」と感じましたね。
キングスの試合も、以前のホームである沖縄市体育館で観戦しましたが、その時は自分がキングスのヘッドコーチになるとは思ってもいませんでした。当時の僕は日本代表のアシスタントコーチやブレックスでのコーチ経験もあったので、それを踏まえて木村社長ともキングスの将来について色々な話をしました。
そしてそれから数週間後、正式にキングスのヘッドコーチのオファーを頂きました。僕はそんなに物事を即決するタイプではないんですが、その時は直感で「やろう」と決めましたね。
––そしてキングスのヘッドコーチとして実際に沖縄での生活が始まるわけですが、住んでみての印象はいかがでした?
実際に沖縄に住んでみてもカルチャーショックみたいなものは全く無くて、むしろ沖縄の生活は自分に合っているな、と感じていました。沖縄の食文化はこっちとはかなり違いますが、僕は沖縄の食べ物も大好きでした。
沖縄を楽しむという点では、キングスでの仕事が終わってから、より沖縄を楽しむようになったかな。キングスのヘッドコーチをやっている当時は、海で遊んだり、観光したりはほとんどしなかったですね。
琉球ゴールデンキングスは、沖縄ではいわば「見られている」一目置かれている存在であって、僕らも集中力高い環境でバスケットボールに没頭できたという経験は、本当に良かったなと思いますね。
––では沖縄に住んでいる時以上に、いまも沖縄を楽しんでいるんですね。
そうですね。沖縄の雰囲気がすごく好きだし、せっかく沖縄にいたのに行けなかったなという思いもあって(笑)。僕スキューバダイビングをやるので、この間も慶良間に潜りにいったりもしました。最高でした。キングスのヘッドコーチを辞めた今ですが、あらためて沖縄の良さを感じています(笑)。
沖縄の「バスケへの愛」「沖縄への愛」がすごいものを生み出している
––よく「沖縄のバスケ文化は独特」と言われますが、佐々さんから見て沖縄のバスケ文化はどう感じました?
純粋に「バスケットボールが大好きな街」なのは間違いないですよね。プロスポーツとしても、野球やサッカーを差し置いて、バスケットボールが一番人気、という環境は、他県のチームではなかなか無い環境です。選手たちも、その沖縄のバスケットボールへの愛情、他のチームでは味わえない雰囲気を感じながらプレイする。そういう意味においては独特と言えるのかもしれない。
あと、沖縄県の人は「沖縄が大好き」ですよね。県外に住む方々も沖縄県人会を作って集まっているくらい、沖縄への情熱がある。
「バスケットボールが大好き」「沖縄が大好き」という情熱が、すごいものを生み出している。そんな感覚を覚えました。
その愛情が、時にはプレッシャーにも感じましたが、逆にそんなプレッシャーを感じながらバスケットボールをやれる環境は、日本の他の場所には無いので、僕はとても贅沢な環境でやらせてもらったなと思っています。
2023年は日本にとって「熱い大会」にしたい
––2023年に沖縄県沖縄市で開催されるFIBAバスケットボールワールドカップ2023。佐々さんは現在そのワールドカップに向けた男子日本代表のアシスタントコーチとしても活動されています。今回、代表コーチングスタッフに復帰された経緯は?
トム・ホーバスが代表ヘッドコーチに就任する事が決まり、コーチングスタッフとしてBリーグクラブの多くのコーチが候補にあがっていたと思いますが、今回は11月の中国戦に向けて、とても短期間での準備が必要でした。
僕よりも実力のあるコーチの方々も多くいらっしゃいますが、僕はトム・ホーバスとも以前から交流がありましたし、代表コーチングスタッフの経験もあったので、より短期間でチームをフィットさせる必要もあり、僕が選ばれたのかなと思っています。
勝負の世界なので何が起こるかは分からないですが、2023年のワールドカップを見据えた上で、今後も代表チームスタッフの一員としてやっていくつもりです。
––東京オリンピックが終わり、日本開催の2023年のワールドカップを盛り上げるためにも、日本代表の躍進が必要です。
男子代表は、国際大会で連敗が続いています。僕は渡邊雄太と昔から交流があるんですが、彼が話した記事でも「代表で勝つ」という目標が大事だと話していました。
今の代表を背負う世代は、日本にとっての「ゴールデンエイジ」です。八村塁、渡邊雄太、馬場雄大がいて、キングスの今村圭太や渡邉飛勇のような若い才能ある選手が多くいる。人材というのはもちろん育成も大事ですが、その時代に生まれてくる才能という幸運も大事。
その恵まれた才能ある選手がいる2023年のワールドカップにおいて、日本が本当に勝ちにいくんだというチームの雰囲気が必要。メディアも巻き込んで「このチームで世界に勝つんだ」という雰囲気を持ちつつ2023年を迎えたい。
そのためには、日々Bリーグでも今日のような熱い試合をずっと続けていく事が大事です。そして、2023年は単なる思い出に残る大会ではなく、日本にとって「熱い大会」にしたいですね。
ワールドカップ2023を見た沖縄の子ども達から、次の並里・岸本が出て欲しい
––期待しています。最後に沖縄のバスケットボールファンへメッセージを。
自分のキングスでの別れ際も複雑なものもありましたが、今でも本当に沖縄は大好きです。僕は桶さん(桶谷大キングスHC)と昔からとてもいい関係で、そんな方が今こうしてキングスを率いている。キングスは間違いなく今年の優勝候補にあるチームだと思うので、僕もすごい楽しみです。
沖縄の子ども達に伝えたいのが、今のBリーグにおいても、並里成や岸本隆一のような、サイズが無い沖縄県出身選手が活躍している。
沖縄県の子ども達は全国的に見ても平均身長が低い方だけど、生まれ持ったすごい才覚や感性を持っている選手が多いと思う。そんな沖縄の子ども達から、将来的に、今の八村塁や渡邊雄太とはまた違った才能を持った選手が出てきて欲しいなと願っています。
2023年のワールドカップもその素晴らしい機会になると思います。アルゼンチンにファクンド・カンパッツォという選手がいて、実際の身長は175cmくらいだけど、世界的な凄い選手で僕も大好きな選手です。
そんな世界的な選手を、実際に生で見られる機会を通じて、沖縄の子ども達に、デカい選手だけじゃない、世界を見た時には小さい選手でもやれるんだと感じて欲しいですね。
僕らもこのレベルでやっていると、どうしても高さを見てしまいますが、ちっちゃい子もしっかり見ているよ、というメッセージを伝えていきたい。沖縄の子ども達はそんな希望を持ちながら、次の並里、岸本となる選手になって欲しい、そう願っています。