晴天の秋晴れの中、『新潟アルビレック酒BBフェア』という名産の日本酒イベントや露店、グッズ販売で盛り上がっているのは、11月6日、新潟アルビレックスBBのホームであるアオーレ長岡の会場前の光景である。
ここ数試合、強豪相手にシーソーゲームを繰り広げるも敗れる試合が多く、この時点でシーズン6連敗中の新潟。
連敗をストップを願い、そしてあと一息での勝利を後押ししようと1,800人以上のブースターが会場に足を運んだ。
挑む相手は西地区1位の琉球ゴールデンキングス。目玉であった、今シーズンのオープニングゲームではスター軍団アルバルク東京から2連勝を皮切りに、未だ連敗なしの琉球。
今シーズンは、過去に琉球をbjリーグ時代に優勝に導いた桶谷大HCが再任したこともあり、他のチームに比べ、シーズン序盤からの完成度は高いような感じがする。
しかし、この日はリーグ屈指のビッグマンのジャック・クーリーが体調不良のため欠場。
琉球は、クーリーが抜けたゴール下の穴をいかにカバーし、リバウンドを奪取できるか。
新潟は、琉球クーリー不在のゴール下のアドバンテージを活かせるかと、オフェンスでは堅守の琉球ディフェンスを崩すことができるかがこの試合の見どころになりそうだ。
西地区1位のポテンシャル
試合前のオープニングセレモニーの選手紹介では、以前、新潟でプレーしていた琉球の今村選手、アレン・ダーラム選手に大きな拍手が送られ、歓迎ムードの試合前のセレモニーであったが、新潟選手の紹介になると会場のアオーレ長岡には、琉球選手にとって嫌な圧力を感じるほどの新潟ブースターの息の合ったハリセンでの応援が耳に刺さる。
新潟ブースターのボルテージはマックスでティップオフの時間を迎えた。
この試合最初のゴールは新潟・納見のドライブからシュート。先制点に会場が湧いたが、すぐに琉球・エバンスがジャンプショットを沈めると、西地区1位のポテンシャルが発揮される。
ゴール下の要、クーリー不在も感じさせない個人能力とチームプレーで新潟に得点差をつけていく。
琉球・今村は成長した姿を見てくれと言わんばかりに1Q序盤で2連続の3ポイントシュートを決めた。
1Q始まってまだ2分半だが、この悪い流れを切るべく新潟はタイムアウトとった。
タイムアウトが効いたのか、ジェフ・エアーズが2本の3ポイントを決めるなど、その後、新潟は立て直し1Qを21-21で終えた。
2Qに入ると、琉球は再びじりじりとリードを広げ始めた。
その琉球に2Q半ばアクシデントが起きる。今季でキャプテン3年目を務め、プレーでもメンタル面でもチームを牽引する田代がゴール下で倒れこみ起き上がれずにいた。
一旦、プレーはストップし、一人で起き上がることも、歩くこともできない田代は車椅子で医務室へと運ばれた。
まだまだ先の長いシーズン序盤のこの事態に、琉球ベンチに暗雲が漂う。
だが、コート上の選手は気を引き締め、試合の良いリズムを崩さずプレーする。
一方の新潟にとっては、流れを引き戻すチャンスであったが、琉球の隙のない試合運びになかなか点差は縮まらずにいた。
2Q終了間際、コービー・パラスのブザービーターで後半での逆転を期待する41-46と5点差で折り返した。
固い琉球ディフェンスと琉球・今村の爆発
逆転可能な点差で折り返した新潟は、1,800人を超えるブースターが見守る中、後半のコートに向かう。
新潟は、琉球クーリー不在のインサイドを攻めようとするが、なかなか思うようにインサイドでプレーをさせてもらえない。
琉球のディフェンスが新潟選手に対してタイトにマークをし、理想の形でボールをもらうことができないのだ。
特に、得点力のあるロスコ・アレンに対しては、ポジションを押し上げられ、本来のプレーエリアより高い位置(ゴールから遠い位置)でのプレーが目立った。
インサイドにアタックしてもタフショットを打たされ、ファールをもらってもバスケットカウントまでには至らない。
最大20点差がつく中で、左肩痛をかかえながら4試合ぶりに出場した新潟・綿貫が奮闘した。
大事な局面でボールコントロールし、自らも10点をあげた。
4Qの追い上げも点差を埋められず、時間だけが進んでいく。そして、この流れは変わらず試合終了のブザーが鳴った。
新潟は連敗阻止ならず、悔しい7連敗となった。
この日、試合に訪れたブースターに最も印象残ったのは、古巣相手に23点の活躍を見せた琉球・今村だったのではないだろうか。
3ポイントを4本沈め、フリースロー確率100%、リバウンド5本と大黒柱のクーリーとキャプテン田代のいないチームを攻守において支えた。
新潟ブースターにとってこの試合は、新潟敗戦の悔しさと今村の活躍への嬉しさが入り混じった感情だったのかもしれない。
負傷者多数で黄色信号
この試合は選手もヒートアップする場面があり、負傷者も多く出てしまった。
琉球はクーリーが体調不良のためベンチ入りせず、田代が前半に負傷退場、小野寺も負傷後ベンチから戻ることはなかった。
新潟もシーズン開幕後、活躍をみせていた遠藤が左手骨折中で離脱しているが、心配なのは痛みをおして出場した綿貫、どんどん調子を上げてきていたベテランの佐藤も足を引きずりながらプレーし、後半の出場はなかったことだ。
両チームとも負傷者を出した結果になってしまったが、この先のシーズンにどれだけ影響が出てしまうのか。そして、この影響によってゲームプランも変わってくるだろう。
連敗を食い止めたかった新潟にとっては、早くも大きな試練かもしれたい。
「チームを信じて」奮闘した綿貫が語った
試合後、新潟の平岡HCは
「全体通してやるべきことが局面局面で、きちんと遂行されなかった部分が多い残念な試合だった。 ロスコ選手とコービー選手に対してタイトにディフェンスをされてボールをもらう位置が高くまで押し上げられていたので、プレーを簡単にエントリーさせてもらえなかったこととボールラインが下がらなかったのが残念だった。 」
と琉球ディフェンスの前に自分たちの得意な形で攻められなかった点と、チームとしての機能不全を敗因に挙げた。
そしてケガを押して出場し、局面でチームを支えた新潟・綿貫は
「足りない部分や、メンバーがダメな時にどのように自分がうまくコントロールできるかを考えた。 崩れる時がたくさんあって完璧にできる試合はないが、いかにそれを補えるかを考えないと勝ちには程遠い気がしている。 しっかりチームを信じて、自分も出場できる準備をしっかりする。 自分自身も積極的に臨んで、誰がいいプレーをできているか、誰が苦しんでいるかをチームとして考えて、連敗を食い止めたい。」
とチームとしての団結と状況に応じた対応力の必要性を語った。
負傷者が多く、限られたピースの中で選手がどれだけ一丸となって役割を遂行できるかが、新潟の連敗を食い止め、価値ある一生をもぎ取るためも要素となるだろう。