Bリーグはすでに海外から多くの注目を集めるプロバスケリーグへと成長した。それはリーグが目指す「世界2位のリーグ」へと順調に進んでいる証でもあるが、それは同時に、予期しなかったことも生み出している。
SNSでは、Bリーグの選手移籍の噂を発信するアカウントがいくつもある。確度の高そうな情報から、噂の噂を集めたようなアカウントまで玉石混交な状況だ。それらの噂SNSアカウントのほとんどは正体不明で、日頃Bリーグを取材しているメディアではない。
それらの噂アカウントの中でも、Bリーグファンから多くの注目を集めるSNSアカウントがある。“Pleb” と自称する海外在住のアカウントだ。
彼はBリーグのレギュラーシーズン中から、多くの選手移籍リーク情報を英語で発信し続けている。それはBリーグファンへ多くの反響を巻き起こした。多くは「シーズン中なのに選手の移籍情報は知りたくない」というネガティブな反応だったが、「このチームの移籍情報も教えて欲しい」という移籍の噂をもっと知りたいというポジティブな反応も少なくなかった。
Bリーグ移籍の噂を発信する”Pleb” とは何者なのだろうか? 本当に実在するのだろうか?
我々は彼のアカウントに接触を試み、そしてついに彼と直接通信(Direct Message)を取り合うことに成功した。ここからはその記録となる…
“Pleb” とのやりとりを確認する前に、Bリーグの選手契約ルールをおさらいしておこう。
B1リーグは5月3日の第36節にて2025-26レギュラーシーズン全試合を終了した。Bリーグチャンピオンシップに出場する8クラブ以外の18クラブは、この時点でシーズン終了となった。Bリーグ規約により、18クラブはここから続々と選手契約の満了などの「移籍情報」を発信し始める。すでに多くの情報がクラブからリリースされている。
第11条〔契約更新通知期限〕
Bクラブは、その所属選手に対し、新たな契約を締結する意思およびその契約条件を、シーズン終了の7日後までに書面により通知しなければならない。当該期日までに契約更新通知がなかった場合、当該Bクラブに契約更新の意思が無いものとみなし、当該Bクラブは当該選手を直ちに自由交渉選手リストへ登録しなければならない。なお、ここでいうシーズン終了日とは、当該BクラブのBリーグ公式戦(チャンピオンシップおよびプレーオフを含む)終了日をさす。ただし、Basketball Champions League Asiaへ出場するBクラブのシーズン終了日は、当該大会での最後の試合日をさすこととし、シーズン終了の3日後までに書面により通知することとする。
(引用元:B.LEAGUE 2025-26 定款・規約・規程 選手契約および登録に関する規程)
そして、Bリーグではシーズン終了前から選手契約の交渉が開始されている。シーズン終了どころか、シーズン中盤の1月1日が他クラブとの交渉可能期間として正式ルールとなっている。つまり、シーズン終了前に、来季は別のチームに移籍することが既に決まっている、そんな選手も存在するというわけだ。そんなBリーグの選手移籍ルールを前提として、”Pleb” との通信記録を聞いて欲しい。
第15条〔自由交渉選手リストへの登録〕 (1) 契約交渉期限までにBクラブと選手との交渉が決裂して契約更新しないことが確定した場合、Bクラブは、ただちに当該選手を自由交渉選手リストに登録しなければならない。ただし、当該選手と所属元クラブとの契約期間後において、当該選手が移籍先クラブとの契約を当該時点で合意または決定している場合は、この限りではない。 (2) 契約交渉期限までに契約更新の最終合意に至らなかった場合でも、選手とBクラブの合意があれば、自由交渉選手リストへの申請を延期することができる。ただし、申請を延期できる期日は、現行契約の満了日までとする。 (3) 自由交渉選手リストへの登録申請は「自由交渉選手リスト公示申請書」により行う。 (4) 自由交渉選手リストに登録された選手は、所属元クラブへの通知なくして、自由に他クラブと契約交渉および契約締結することができる。 (5) 自由交渉選手リストに登録された選手がいずれかのBクラブと契約を締結した場合、当該Bクラブは当該選手を自由交渉選手リストから抹消するための申請を「自由交渉選手リスト抹消申請書」により行うものとする。 (6) 自由交渉選手リストに登録された選手が自由交渉選手リストからの抹消を希望した場合、所属元クラブは当該選手を自由交渉選手リストから抹消するための申請を行うものとする。
(引用元:B.LEAGUE 2025-26 定款・規約・規程 選手契約および登録に関する規程)

TaiyoあなたがBリーグ向けの移籍情報を発信しようと思ったきっかけは?
PlebI started the B.League information due to my passion for the B.League, I have strong connections in Japan and saw it as a good opportunity. I found it interesting that there was very few accounts that posted rumours etc.
Bリーグへの情熱から、Bリーグの情報発信を始めました。私には日本に強いコネクションがあり、良い機会だと思ったからです。移籍の噂などを投稿しているアカウントが非常に少ないことに気付きました。
TaiyoあなたはオーストラリアNBLを拠点にしているようだけど、オーストラリアにいるあなたから見て、日本Bリーグ含むバスケットボールシーンはどのように感じているの?
PlebI am based in Australia, yes.
I personally like the B.League! the NBL will always be my number one, but Japanese Basketball is great and has a lot of ex-NBL players in the league. I wish it was easier to watch games though!
そうです、私はオーストラリア在住です。
個人的にはBリーグが好きです!NBLはいつまでも私の一番のお気に入りですが、日本のバスケットボールも素晴らしく、NBL出身の選手がたくさんいます。ただ、もっと簡単にBリーグの試合を観戦できたらいいのにと思います!
Taiyoあなたの発信は、BリーグファンのSNSでの議論を呼んでいる。私の体感では、「好きなチームの移籍リーク情報は聞きたくない」という否定派が約70%、「移籍リーク情報は盛り上がるからもっと聞きたい」の賛成派が約30%くらいだと思う。あなたはその反応をどう感じる?
PlebI do not mind the reaction – It is a cultural difference as in Australia, we welcome the rumours etc but I have learned to adapt, and form the rumours more as my personal opinions as I do not want to disrespect fans and/or teams. But once the season is over for some teams, I believe it is fair game.
投稿への反応は気にしていません。オーストラリアでは噂などを歓迎するので文化的な違いだと思いますが、私は適応することを学び、ファンやチームを軽視したくないので、噂はあくまで個人的な意見として発信するようにしています。しかし、いくつかのチームのシーズンが終われば、噂を流すのは当然のことだと思います。
Taiyoあなたの発信は、Bリーグ外部理事の岡田さんから「法的責任を負う可能性が高いから行動を制限せよ」と、SNS上で威嚇されたよね。Bリーグ外部理事という立場の人間から、SNS上でそのような威嚇をされたことについて、率直にどう思う?
*率直に言えば私の意見は、岡田さんのあの発信は外部理事という彼の立場を考えればすこしやりすぎのように感じている。明らかな威嚇だからね。
PlebThe threat shocked me at first, as I was not expecting it. But over time, I felt it was just big words that really could lead to not punishment as I am an alias account in a different country.
I believe they felt threatened and decided to just flex their power towards me. It did force me to rewrite how I do posts, because now I write them in a way that’s more of my own personal opinion, and you cannot legally do anything towards that.
It also confirmed my information was correct.
It was excessive as I am an overseas account, so unsure what his end game was. But I understand it also, as the Japanese culture doesn’t take kindly to those type of posts, which is why I changed the way I reveal the information. I am only here to offer entertaining information. Those who dislike it are more than welcome to block me.
最初は威嚇にショックを受けました。全く予想していなかったからです。しかし、時間が経つにつれて、それは単なる大げさな言葉であり、私が海外のエイリアスアカウントのため、実際には処罰されることはないだろうと思うようになりました。
彼らは脅威を感じ、私に対して権力を誇示しようとしたのだと思います。この一件で、投稿の書き方を変えざるを得なくなりました。今はより個人的な意見を述べるようにしているので、法的に問題になることはありません。
そして、私の情報が正しかったことも確認できました。
海外アカウントである私にとって、その対応は行き過ぎていたと思います。彼の最終的な目的は何だったのか分かりません。しかし、日本の文化ではそのような投稿は好まれないことも理解しています。だからこそ、情報の公開方法を変更したのです。私はただ、面白い情報を提供したいだけです。気に入らない方は、遠慮なくブロックしてください。
いかがだったろうか。”Pleb”の発言はほぼそのまま掲載、日本語訳はこちらで行なっている。彼にこのやり取りを公開していいか尋ねたところ「ぜひ多くの方々にシェアして欲しい」との回答をもらった事も付け加えておく。
ここからは、”Pleb”とのやり取りを終えての筆者の考察となる。それを踏まえて読んで欲しい。
“Pleb”が話した内容で興味深いのは「オーストラリアでは移籍の噂を歓迎する」という点だ。彼は、プロスポーツを楽しむ文化のひとつとして、選手の移籍話は、噂も含めて楽しんでいくことは当然だ、と言いたかったのだろう。
日本のプロスポーツの歴史として、そもそも選手移籍が多くない。プロ野球は新人ドラフト以降、フリーエージェント権を取得するのは最低でも7年、8年。選手トレードも存在するが、件数は多くない。Jリーグの選手移籍はプロ野球よりずっと多いが、選手個人がより上位カテゴリーへステップアップする「個人昇格」という捉え方もあり、決してネガティブな印象だけではない。つまり、日本には今まで「選手の移籍を噂も含めて楽しんでいく」という文化がそこまで広まらなかったという土壌がある。
だが、Bリーグは現状でも選手移籍が活発だ。ファンからすると、自分の推しチームの推し選手がいなくなって悲しい気持ちになったり、新たなスター選手が加入して次のシーズンへの期待が爆上がりしたりする。Bリーグ開幕以降の10年間で「選手はずっと同じチームにいるわけではない」という理解が浸透してきた。
さらに、来季以降は「Bプレミア」としてリーグ制度が大きく変わり、サラリーキャップ制度などの影響で、選手移籍が今以上に活発になるはずであり、移籍話へのファンの興味は今以上に大きくなるはずだ。ファンの興味は大きくなるのに、メディアへ口を塞いでおけ、と警告するのは、本当にファンのためになるのだろうか?
もちろん、選手契約に不利益が生まれかねない情報の公開は賛否があるだろう。しかしよく考えて欲しい。メディアはあくまで報じる側であり、契約の当事者ではない。情報をリークしてルールを逸脱しているのは誰なのか。そのルールを遵守させるために動くべきは誰なのか。
もうひとつ腑に落ちない点がある。記事途中でも触れたが、現状のBリーグ規約では、シーズン途中からすでに来季以降の選手契約交渉が『公式に』始まっている。この慣習は、リーグ創設当初の規約設定や様々な事情があったと推測され、さらにファンには完全に見えない部分のため、この規約自体がそれほど大きな議論にはなっていない。
一番の問題点は、もっとも盛り上げるべきBリーグチャンピオンシップ期間中に、選手移籍の公式リリースが発表されてしまい、ファンの注目が分散される点だ。
Bリーグの年間優勝を決めるチャンピオンシップは、コート上の熱戦だけではなく、メディアへの露出や注目度、プロモーションも最高峰であるべきだ。Bリーグファン全てが注目する舞台でなければならない。一方、シーズン終了したクラブにとっては来季の戦いは始まっている。現行のルールであれば、クラブ側が忖度して選手編成のリリースを控える必要性はない。これはリーグがしっかりと制度を見直す事で改善できる問題だ。
さらに言うならば、サラリーキャップ制度を導入する「Bプレミア」において、シーズン終了期間つまり選手契約交渉に関わる日程が各クラブで異なる現行ルールは、どう考えてもサラリーキャップ運用に歪みが生じるはずだ。契約交渉や締結に関する日程を、リーグファイナル終了後で全クラブ統一日にすべきだ。
規約に関わるこれらの懸念点を解決するのは、リーグ側の責任である。「チャンピオンシップを最大限に盛り上げる」というリーグとしての使命において現時点で問題が生じており、Bプレミア時代にはさらなる問題が予想される状況をそのままにしておいて、メディア側へ圧力をかけるのは、本当にファンのためになるのだろうか?
しかし、Plebの情報源は誰なのだろうか… もしこれを知ることができれば、Bリーグを揺るがす大スキャンダルになりかねない。
Taiyoあなたの発信の情報ソースはどこなの?もちろん言える範囲で構わないよ。ただ、Bリーグの外国籍選手だけではなく、日本人選手の移籍情報も発信しているので、外国籍選手の周りにいる人間だけではないように感じるんだ。
PlebUnfortunately I cannot reveal my sources, respectfully.
情報源を明かすことはできません。ごめんね。
Taiyoそれは当然だ!僕だって情報発信者を絶対に明かさないからね!それは世界共通だね!
Plebは私が思っていた通りとても誠実なジャーナリストだ!それだけは確かだよ(笑)
(取材・文:湧川太陽)

