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福井でもチームの『文化』を作りたい 福井ブローウィンズ 伊佐勉HCインタビュー

2023-24シーズンよりB3リーグに新規参入する福井ブローウィンズは7月14日、琉球ゴールデンキングスやサンロッカーズ渋谷でヘッドコーチを歴任した伊佐勉氏がヘッドコーチに就任したことを発表した。

 

伊佐HCは、琉球ゴールデンキングス創設初年度の2007年にキングスのアシスタントコーチに就任。新規参入チームだったキングスの基盤を作ったひとりだ。アシスタントコーチとしてキングスを支え続け、2013年には満を持してキングスHCに就任。bjリーグで2度の優勝に導いた。

その後、2017年にはサンロッカーズ渋谷のアシスタントコーチに就任。2018-19シーズン途中にSR渋谷のヘッドコーチに昇格すると、激しいプレッシャーディフェンスと選手のタイムシェアによる全員バスケでB1リーグを席巻。2020年天皇杯でSR渋谷を優勝に導く。その後、2022年12月にはSR渋谷のヘッドコーチを退任する。

 

 

福井ブローウィンズがチーム始動する直前の7月末、伊佐HCの地元である沖縄にてインタビューを行った。「むーさん」の愛称で親しまれる伊佐HCに、福井のヘッドコーチに就任した経緯、新規参入チームのチーム作り、新天地での生活について聞いてみた。

 


 

沖縄まで口説きに来てくれた福井ブローウィンズ

──ヘッドコーチ就任おめでとうございます。福井のヘッドコーチに就任した経緯は?

12月に渋谷を退任した後、色々なB1やB2のチームから声をかけていただきました。ただ僕はもう一度ヘッドコーチとして戦いたかったので、なかなか次のチームが決まらずどうしたものかと思っていたところ、福井ブローウィンズからヘッドコーチとして福井に来てくれないかと打診がありました。

 

福井に決めたのは、新規参入チームを作り上げるやりがいある仕事だと思ったこと。そして福井の関係者の情熱でした。最初は電話で連絡があったのですが、その3日後くらいには球団社長、GM、オーナー企業の関係者の方と3人でわざわざ沖縄まで来て話をして下さいました。僕は一人なので僕が福井に行った方が早いですよと言ったのですが、わざわざ福井から日帰りで来て頂いて、すごく気持ちは動きましたね。

 

福井という新規参入チームを率いるのは、大変だなと正直思いましたけど、キングスでも新規参入チーム1年目を経験したのでやりがいは感じますね。

 

 

新規チームの『文化』づくり

──福井ブローウィンズの戦い方、チームスタイルの理想は?

福井としては、B3から最短でB1へ昇格することを狙っています。そのためにはチームの基盤を作り、勝ちながら文化を作っていかなければいけない。

 

チームとして目指したいのは去年まで(SR渋谷で)やっていたスタイル。ディフェンスからハードにプレッシャーをかけてタイムシェアをする。それが理想ではありますけど、福井に集まってくれた選手のメンバー構成でそれが正しい選択なのかは、まだ正直分からないので、練習を見ながら徐々にアジャストしていこうと考えています。

 

細谷将司(前 シーホース三河)や長谷川智伸(前 福島ファイヤーボンズ)、満田丈太郎(前 京都ハンナリーズ)、田渡修人(前 サンロッカーズ渋谷)とシュートを打てる選手が揃っています。ガードの藤澤尚之(前 バンビシャス奈良)もシュートが上手い。これだけシュートが上手い選手が揃っていればB3でも得点は取れると思っています。

 

そこでディフェンスの強度を高く保ち、相手の体力を削っていくことで被シュート確率を低く抑えて、ファストブレイクでどんどん走るような自分たちの展開に持っていきたい。

 

 

──キングス、SR渋谷と共に戦った沖縄県出身の渡辺竜之佑選手も福井に加入しました

あのサイズ(189cm)で外国籍選手も守れて、ボール運びも出来るしパスも出せるし、リバウンドも取れる選手は竜之佑しかいない。

 

あれだけリバウンドやゴール下が強いと、どうしてもインサイドで使いたくなるが、それだと彼の良さが活きない。彼の良さを引き出して使えるのは僕しかいない、と言うとおこがましいですが、シュートを打てる選手は他に揃っているので、竜之佑をガードで使おうと考えています。

 

 

──キングスでも経験した『新しいチームを1から作る』ことは何が大変ですか?

バスケットボールのチームスタイルを作ることはもちろんですが、環境が整っていないことが一番大変ですね。練習場所や試合会場も決まった場所ではなくいくつかの場所を転々とします。

 

キングス創設直後の頃は、昨日は中城村、今日は宜野湾市、明日は沖縄市と、練習場所が日々違いましたし、ボールやクーラーボックスを社用車のバンに詰め込んで移動しなきゃいけない。それをマネージャーやスタッフだけでやると大変。当時キングスの選手は皆で荷物を運んでくれたし、ジェフ・ニュートンやマクヘンリーの外国籍選手も率先して運んでくれたんですよ。僕はそういうところから『チームの文化』が生まれると思っています。マネージャーが運ぶのは当たり前だけど、それを当たり前と思わないようにしよう。選手はバスケットボールをプレイすることが当たり前だけど、(支えてくれる周囲に)しっかりリスペクトを持ってやらなければいけない。僕ももちろん一緒にやりますし、福井という新しいチームでも、そういったところはやっていかなければいけないかなと思っています。

 

キングスの頃は、僕が練習場所の予約とかもしてたんですよ。当時のスタッフが沖縄出身ではなかったので体育館の場所が分からなかったりすると、僕はもちろん全部知ってるし体育館を管理している方も知り合いだからちょっと融通もしてくれた。(クールダウンで使う)氷も大量に使うので、僕が漁港まで行って買ってきたり、友人の氷屋さんと安く契約してもらって僕が取りに行ったりしてました。コンビニで買うと高いからね。

 

僕は1年目のチームで得たその経験を活かして、『みんなでやっていこう』という意識を作りたい。もちろんバスケットボールは常にチームで戦うことを練習時から言っていきますが、それ以外の日頃の部分がチームの文化構築には大きいかもしれない。それが出来てはじめてバスケットの約束事を守ろう、という意識にいくんじゃないかなと思います。

 

 

キングスでは1年目で10勝しか出来なくて(10勝34敗)、観客も平均1500人くらい。でも2年目で桶谷さんがヘッドコーチに就任していきなりbjリーグ初優勝することで、沖縄県民の皆さんの見る目が大きく変わったと思います。やっぱりある程度勝たないと応援してもらえない。そういう経験をしています。キングスも今では選手コーチの努力でチームが強くなり、フロントスタッフの方々の努力で、平日水曜ゲームでも6,000人以上のお客さんがわざわざチケットを買って集まってくれる。そういう沖縄県民には無かった『チケットを買ってスポーツを観る』というものが根付いてきている。

 

福井にはプロスポーツチームは今まで無かったけれども、福井の皆さんに『観たい』と思ってもらえるようなチームを作れば、チャンスはあると思っています。

 

 

 

むーさん、雪国で生活する

──福井という新しい土地での生活ですね

僕自身、福井に行くのは初めてなんですよ。先日の新体制発表会で初めて福井に行きました。来年春に福井で北陸新幹線が開業するので、福井駅の周辺でホテルが建ったり工事が進んで栄えていましたね。新幹線が開通したら東京から3時間程度で来れるので、SR渋谷のファンやキングスのファンが来てくれたら嬉しいですね(笑)。福井の食べ物は美味しいことで有名ですし、試合を見ながら楽しんで欲しいですね。

 

──沖縄では経験出来ない雪深い地域での生活になりますが?

そこだけは正直かなりビビってます(笑)。寒さはまだいいんですが、雪道の運転が心配。練習場まで普段なら30分くらいで着くのが、1時間か1時間半かかっちゃうとか、朝は毎日雪かきしないと出発出来ないとか、聞いていても大変だろうなと思うけど、やったことないし…

 

練習終わりに雪かきをしなきゃいけないかもしれないですけど、それも皆で共同でやるといいんじゃないですかね。それもチーム作りです(笑)

 

 

──福井ブローウィンズとしてのチーム始動はいつからですか

福井でのチーム始動は、外国籍選手も含めて8月初旬からスタートします。8月26日(土)にはライジングゼファー福岡、27日(日)には富山グラウジーズとプレシーズンゲームがあります。B1やB2のチームに対してどれくらい出来るかですね。

 


 

新規加入チームをゼロから立ち上げた経験や、チームの『文化』を作り複数のチームを日本一に導いた指導力。福井ブローウィンズという福井初のプロスポーツチームにはピッタリの人材かもしれない。

 

人情味溢れる「むーさん」、福井での挑戦が始まる。

写真提供:福井ブローウィンズ

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