激動のシーズンを終えた琉球ゴールデンキングス、安永淳一GMが大事にする『キングスの文化』とは

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新加入選手と継続選手への期待

──新規入団選手についてもお聞きします。まず伊藤達哉選手について獲得経緯を教えて下さい。

伊藤選手は、名古屋Dでは齋藤拓実選手とのポイントガード2枚看板として戦い、ベンチから出てくる伊藤選手も斎藤選手と遜色ない働きをしていて、ある意味キングスのような層の厚いローテーションを組んでいました。

僕らが考える伊藤選手の役割は、彼のインテンシティの高いプレーでキングスに力を与えて欲しいです。そして、伊藤選手はピュアポイントガードです。彼はキングスにおいてパスファーストのメンタリティで、チームメイトを活かすためのバスケをしてくれると思います。伊藤選手が加入してチームが上手くいかなければ、他に問題があると疑いたくなる。それくらい素晴らしい選手が良いタイミングで加入してくれたと感じています。

 

──確かに伊藤選手は、昨季安定しなかったボールハンドリングの部分で的確な補強だと感じますが、173cmと小柄でありサイズ面での不安はなかったでしょうか?

伊藤選手はディフェンス面でアグレッシブにプレッシャーをかけることが出来るので、サイズ以上のプレーが出来ます。例えば、岸本選手が2番ポジションで伊藤選手が1番ポジションで同時にコートに立つ場合もあるかもしれません。それだけサイズ面での不安視はしておりませんし、伊藤選手はそんな事が気にならないくらい長所が多い選手で、昨季キングスに無かったものを多くもたらしてくれると期待しています。

 

 

──ケヴェ・アルマ選手についても伺います。22-23シーズンには当時B1の新潟にも在籍していましたが、どういう経緯で獲得に至ったのでしょうか?

アルマ選手はバージニア工科大学の頃からずっとマークしていた選手でした。ですが当時の判断としては、大学から直接日本でプロとしてどれだけやれるか、測りかねる部分がありました。例えば17-18シーズン、ハッサン・マーティン選手が大学から直接加入して活躍してくれました。マーティン選手はパワフルなプレーでダンクやリバウンドが持ち味で、役割はシンプルでしたからフィットし易かったです。しかし、アルマ選手は色々なことが出来る。ドリブルも出来るしシュートも上手いし、ディフェンスで必死に走って後ろからブロックも出来る。出来ることが多すぎて全てが10点満点の6.5点のような選手になってしまい、爆発的な力を発揮できないことを危惧して、大学卒業直後ルーキー選手の獲得には至りませんでした。

しかし新潟在籍時にキングスと対戦した時にやっぱり良い選手と感じましたし、その後の韓国リーグ在籍時にも、チーム2番手の外国籍選手ながらとても良いプレーをしていました。

アルマ選手はシュート力があって外からでも仕事が出来るのでジャック・クーリーとの相性も良いでしょうし、ドライブも出来きるパワーフォワードです。まだ25歳でプロ3年目と多くの伸びしろが残っています。新潟と韓国在籍の2年間はほぼフル出場で怪我も少なったです。ヴィック・ローはあの運動量ですから足に対する負担も大きいですから、若いアルマ選手にはプレー時間の面でもチームに貢献してくれると期待します。そういった色々な意味で良い補強だと考えていますし、長くキングスでプレーしてほしいと感じています

 

──7月現在、アルマ選手はNBAサマーリーグに参加して素晴らしい活躍を見せてくれています。

契約する際に「NBAサマーリーグに行ってもいいかな?」と言われました。もちろんキングスのキャンプが始まる前には沖縄に来るという前提ですの会話ですが、彼からすれば「もしサマーリーグで怪我をしてしまって来日するのは悪い」という考えだったと思うんです。でも僕は「もし行けるならぜひ行ってきたらいい」と伝えました。それでNBAフィラデルフィア76ersから声が掛かってサマーリーグに参加し、かなり良い活躍をしていますね。アルマ選手がこのプレーをキングスでも見せてくれたら、本当にサプライズを起こせる。彼の加入によってキングスは、選手層の厚みが大幅に向上します。それくらい良い選手ですね。

 

 

──継続契約した選手、特に日本人選手についてお伺いします。岸本隆一選手を筆頭に、小野寺祥太選手や松脇圭志選手、荒川颯選手、植松義也選手。さらに脇真大選手がルーキーシーズンとなります。彼ら日本人選手に期待することはありますか?

岸本選手は最年長ですが、昨年は全試合出場、そして平均得点はキャリアで2番目にベスト。選手としてのピークを長く続けていてくれて本当に頼もしいです。また、小野寺選手もアグレッシブかつベテランのプレーが出来るようになりとても頼りになります。

 

その中でもキングスとして磨き伸ばしていかなければいけないと感じている選手は、松脇圭志選手です。彼は対戦チームにとって脅威になる貴重な選手です。松脇選手には岸本選手にも負けないシュート力があります。僕は神様が与えてくれたシュート力だと思っています。その武器でキングスをリードして欲しいです。

 

 

そして、もう一人期待したい選手は、脇真大選手です。先ほどポイントガードの部分でサイズ面の懸念を言われましたが、193cmの脇選手が2番ポジションで出てくるのは、相手チームにとって恐ろしいことだと思います。彼はドライブでゴール下に怖がらずにガンガン入っていきます。23-24シーズン2月のA東京戦でも良いドライブを見せてくれました。もちろんあの時は特別指定選手の脇選手に対してA東京はノーマークだったと思いますので、今シーズンは同じようにはいかないとは思いますが、彼の持っている才能はかなりレベルが高いですし、ルーキーシーズンではありますが、間違いなくキングスの中心に成長する選手として期待しています。

もし今村選手が今季も在籍していたら、この2人のプレータイムは伸びてこないので、彼らに対する期待はより大きくなります。彼らがブレイクアウトし、チームとしてさらに成長するために、結果として良い編成になったと思えるシーズンにしていきます。

 

 

──外国籍選手では、ジャック・クーリー選手は24-25シーズンが在籍6年目です。本当に大黒柱として活躍してくれている彼にずっとキングスにいてもらうために、例えば帰化プランがあったりしますか?

いや、特にそのような話はしていないですね。ジャックは1年1年勝負したいと言ってくれて契約を繰り返しています。僕が仮にキングスを対戦相手として見た場合、やっぱり一番嫌な選手はジャック・クーリーです。彼が良いコンディションでプレーし続けてくれるのが非常に大切な事ですし、彼自身もこの1年に勝負をかけていると思います。

 

 

──7月11日現在では最大13人のロスター枠は全て埋まっていませんが、今後さらなる選手獲得はあるのでしょうか?

昨季までは渡邉飛勇選手がずっと怪我を抱えてしまっていたので、ベンチ枠の12人より1人多い13名で契約しておきたいという考えがありました。ですが、それでは全員が健康ならユニフォームを着ることができない選手が出てきてしまう。そして、ここ2年は植松義也選手、荒川颯選手が練習生から這い上がってきてくれました。僕はそうやって夢をつかもうとしている選手たちのチャンスも大切にしたい。ロスターの人数を増やし過ぎて、出番が回ってこない選手が出てきてしまうことも難しい判断でした。

もちろん怪我人が発生した場合の備えも必要です。そこは今後の特別指定選手や今季の練習生の成長も見ながら考えていきます。プロの世界ですし契約の世界なので何があるか分からないですが、今のところは柔軟性を持って11名でシーズン開幕に向かって走っていきたいと考えています。

 

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この記事を書いた人

地元で開催されるFIBAバスケットボールワールドカップ2023に貢献するべく奮闘中!
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