大舞台でステップアップした愛される存在 琉球ゴールデンキングス #34小野寺祥太

「お前はすげーよぉー!」

Bリーグチャンピオンシップ(CS)クォーターファイナルGame2、この日チームトップとなる14得点の琉球ゴールデンキングス #34小野寺祥太の頭をクシャクシャにして祝福したのは、秋田ノーザンハピネッツの元チームメイトで直前まで激闘を演じた相手でもある秋田#5 田口成浩だ。

 

現在のチームメイトである琉球ゴールデンキングス #30 今村佳太も、この日の小野寺の活躍をこう評した。

「今季はケガ人が相次ぎ全員がステップアップしなきゃいけない状況のなか、CSクオーターファイナルというシチュエーションで小野寺選手がステップアップして今日のような活躍を見せてくれました。」

 

決してチームの中心選手だった訳ではない。プレイタイムが保証されている訳でもない。そんな小野寺が "WIN or GO HOME"(勝つか、負けるか)のプレーオフゲームでチームのスコアリングリーダーとなる。まさにステップアップだ。

 

11月に#24 田代直希、2月に#88 牧隼利がケガで離脱。キングスのストロングポイントだった日本人ウイングのポジションは、いきなり非常事態に陥った。

しかし前半戦はディフェンス面でのピンポイント起用が主だった小野寺が、後半戦はオフェンス面でもケガ人の穴を埋める活躍を見せ始める。

小野寺は、3月以降のレギュラーシーズン28試合すべてに出場して、平均出場時間が16:49。これは2月以前のレギュラーシーズン30試合中22試合出場、平均出場時間09:00 を大きく上回る。特筆すべきは3ポイント成功率で、41.5%とドウェイン・エバンスに次いでチーム2位だ。

だが小野寺は、ケガ人が相次いだからプレイタイムを得てステップアップした訳ではない。彼はずっと自身の『役割』にひたむきに向き合い続けたからこそ、大事な場面でのステップアップがあった。

 

少し遡って5月8日、今季レギュラーシーズン最終戦。筆者は試合終了後の記者会見に現れた小野寺にひとつの質問をしてみた。

——今季、小野寺選手自身のターニングポイントとなった試合は?

 

少し考えた後、小野寺はこう答えた。

「10月の三河戦です。このままじゃダメだなと思いました。」

「2クォーター残り数秒でファウルゲームを指示されてコートに出たのに、その時にしっかり遂行出来なかったのは覚えています。チームとしての『役割』を自分が果たせていなかった。自分の『役割』に対しての考えを明確にした事が、後半戦(のプレイタイム増加)に繋がったのかなと思います。」

 

小野寺が「覚えている」と言った場面は、10月10日(日)アウェーのシーホース三河戦だ。

2クォーター残り7.7秒、三河24 - 26キングス の場面でコートに出てきた小野寺の役割は、まずファウルで相手の残りクロックを減らす事だった。しかし小野寺は得意のディフェンスでマッチアップした相手に逆を突かれ、ファウルも出来ずブザービーターとなる同点シュートを許してしまった。

これが決勝点になった訳ではないが、この三河戦はキングスにとって今季初の敗戦となった。

 

ターニングポイントとなる試合を聞いたのに、自身が活躍した試合ではなく、ミスをした試合を挙げるところがいかにも謙虚な小野寺らしい。そして自分の『役割』であるディフェンスに対する並々ならぬ決意も感じさせる。

 

キングス桶谷HCも、彼の成長を喜び、そしてプレーオフに勝つために大事な戦力と感じている。

「(岩手ビッグブルズの練習生だった新人時代を振り返り)当時から負けん気も強かったし、昔から貪欲な選手でした。経験すればどんどんどんどん吸収するスポンジのようなプレイヤーなんで、今年も経験からくる成長、また自信をつけてくれて、今日活躍してくれてチームを次のステージに導いてくれたことに本当に感謝でいっぱいです。」

 

レギュラーシーズン後半オフェンス面での活躍が目立ち始めた頃に、報道陣から「シュートタッチ好調の理由は?」と問われて、小野寺は「昨季ケガで離脱して試合に出られなかった時、シュート練習に力を入れた事が大きい」と答えていた。

昨季後半の2021年3月、小野寺は腰椎椎間板ヘルニアの手術によりチーム離脱。CSの舞台に立ちチームに貢献する事は叶わなかった。その辛い時期に積み上げてきた努力が、今季のCSで花開いた。

 

優しい笑顔で誰からも愛される存在、そしてその努力を知るチームメイト達は、大舞台での小野寺のステップアップを”手荒い祝福”で喜び合った。

次なる対戦相手は島根スサノオマジック。金丸晃輔、ペリン・ビュフォードという得点力のあるウイングプレイヤーを擁する。次戦への決意を問うと、小野寺は自分のアイデンティティである『ディフェンス』面でこう答えた。

「(秋田戦の)古川選手や田口選手を守ったように、パスが入る前からコンタクトをしていい状態でボールを持たせない事が大切、小さいところですが意識してやっていきたいです。」

ディフェンスで相手シューターを追い掛け回す小野寺の姿が、キングスの命運を握るかもしれない。

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