去年、東京体育館で悔し涙を流したあの日から364日。ずっとこの日を待っていた。
2023年5月27日(土)、『日本生命 B.LEAGUE FINALS 2022-23』GAME1が横浜アリーナで開催された。
ファイナルの舞台に進んだのは、西地区1位の琉球ゴールデンキングスと、東地区1位の千葉ジェッツ。
キングスは2年連続2回目のファイナル出場。去年はレギュラーシーズン最高勝率を記録するも、ファイナルで宇都宮ブレックスに2連敗して準優勝に終わった。
千葉ジェッツは、今季レギュラーシーズン53勝7敗の過去最高勝率を記録。Bリーグ史上最強の呼び声高く、圧倒的本命としてファイナルに進出してきた。
今季の両者の対戦は、3月の天皇杯決勝を含めると千葉の2勝1敗。
[getpost id=”10765″]
[getpost id=”11140″]
[getpost id=”11182″]
レギュラーシーズンを重ねて成長してきたキングス。自分たちを信じるバスケットで、最強の相手に挑む瞬間がついにやってきた。
1Q 冷静に打ち込んだ『ファーストパンチ』
キングスが勝つには『ファーストパンチ』を必ず成功させる必要があった。それも「今までとは違う」と相手にハッキリと分からせる、キツい一発を。
試合開始のティップオフに競り勝ったキングス。コートに立つチャレンジャー5人は、ファーストパンチを繰り出す瞬間に集中する。
ポイントガードの岸本には、外国籍のローがマッチアップ。ローは岸本を左サイドに仕向けるように守る。
右サイドからダンカンとクーリーのオフボールスクリーンを使って飛び出してきた今村が岸本からボールを受けると、左サイドでクーリーとのピック・アンド・ロールからペイントエリアへドライブを仕掛ける。
千葉はエドワーズが今村のドライブを止めるために飛び出し、それを読んでいたクーリーはすぐにペイントエリアへダイブ。それを助けるために小野寺がエドワーズへスクリーンを仕掛ける。
今村はもう一度岸本にパスを戻すと、その岸本が再びペイントエリアへドライブ。ゴール下に千葉のビッグマン3人全てをおびき寄せると、右コーナーに待機していたダンカンへパス。完全なオープンだったダンカンは、狙い通りの3ポイントを決めた。
キングスの先制点を生んだこのフォーメーション。実はレギュラーシーズン4月1日、2日の千葉との対戦において、キングスは試合最初のオフェンスで、全く同じフォーメーションを使っていた。
ただ、ここまで完璧に千葉ディフェンスを崩してシュートまでいけたのは、このファイナルGAME1が初めて。キングス5人全員の呼吸がリンクして生み出した先制点は、千葉に「今までとは違う」と感じさせるのに十分な『ファーストパンチ』だった。
そして千葉はエドワーズが残り8:16で、早くも2つ目のファウル。エドワーズに代わり#14 佐藤 卓磨がコートに入る。
帰化選手のエドワーズのファウルトラブルだったが、千葉のエース富樫が得意のアーリーオフェンスからの連続得点で、ゲームの流れを渡さない。残り6:12でスコア11-5、千葉6点リードとなりキングスが先にタイムアウト。
ファーストパンチを浴びせたのに、千葉に先手を取られる展開となったキングス。しかしキングスに焦りは見られなかった。
残り5:39、今村が千葉ディフェンスの一瞬の隙を突き3ポイントを決めると、それが反撃の狼煙となる。
千葉オフェンスのキーマンである#34 クリストファー・スミスには、#15 松脇 圭志が屈強な身体を生かしたディフェンスで自由を与えない。
シーズン後半からCSにかけてシューターとして相手の脅威となっていた松脇は、このGAME1も3ポイントシュートが好調。残り4:03 そして 0:47と、左45度からまるでリプレイのように3ポイントを成功させる。
この松脇の2本の3ポイントにも、もちろん布石があった。
1本目はダーラムとクーリーのダブルローポストで、インサイドに収縮させてからのパスアウト。
2本目はダーラムがローポストのポジション争いで、エドワーズに競り勝ってからのパスアウト。
ダブルローポストからの攻めは、セミファイナルの千葉vsA東京にて、A東京がアレックス・カークとセバスチャン・サイズで採用して、千葉のインサイドを苦しめていた。
そしてファウルトラブルのエドワーズをカバーする事に意識が集中していた千葉は、エドワーズが競り負けた瞬間、他の4人全員がダーラムに顔を向けてしまった。
キングスは綿密なスカウティングで、相手の嫌がる事を徹底的に実行してきていた。
1クォーター終了時のスコアは、15-27とキングス12点リード。キングスは、残り6:12のタイムアウト以降、約6分間で4-22というスコアリングランを見せた。勢いに任せたパンチの連打ではなく、冷静に的確に、相手のガードの隙間に打ち込んでみせた。
2Q ゲームプランを冷静にすすめるキングス
2クォーター、千葉は富樫とムーニーを中心に攻める。二人のピック・アンド・ロールやカットプレイで得点を重ねる。キングスはターンオーバーが続き、2クォーター開始3分間でわずか2得点。
だが残り6:34、千葉はエドワーズが3つ目のファウルを取られ、日本人ビッグマンの#25 荒尾 岳と交代する。
荒尾がコートに入ったこの場面、隠れた勝負のポイントだった。3月の天皇杯、4月のレギュラーシーズンの対戦と、荒尾はその大きな身体を駆使してクーリーに自由を与えずに、外国籍選手を休ませるつなぎの役目をこなしていた。
荒尾を1秒でも早くコートから追い出す。このGAME1だけでなく、ファイナルズ全体を考えても、この場面で荒尾に仕事をさせないことはキングスにとって重要だった。
クーリーは積極的にポストアップして、マッチアップする荒尾にパワーで勝負を挑んだ。結果、荒尾がコートから去る残り2:55までの約3分半、荒尾は2ファウルを犯し、クーリーとダーラムで6得点をあげた。
その後、千葉は富樫の3ポイント、原の4ポイントプレイで点差を詰める。2クォーターの最終スコアは36-41とキングス5点リード。
だがキングスは、2クォーターの千葉のファストブレイクポイントを0に抑え、3ポイントも8本中2本しか決めさせなかった。キングスにとって決して良い流れのクォーターではなかったが、冷静に自分たちのゲームプランを進めていた。