「自分自身のために、天皇杯を獲りたい」と岸本が語った理由とは

2月14日に沖縄アリーナで行われた天皇杯準決勝。琉球ゴールデンキングスが川崎ブレイブサンダースに勝利した記者会見場で、キングス一筋12年目の岸本隆一は、3月16日に行われる天皇杯決勝への意気込みを聞かれ、こう答えた。

「自分自身のために、天皇杯を獲りたい」

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意外だった。

岸本隆一はキングス唯一の沖縄県出身選手であり、誰もが認めるフランチャイズプレーヤーだ。地元である沖縄県への思いは誰よりも強く、そして沖縄県民の期待をずっと感じてきたはずだ。ビッグゲームの前にはメディアから沖縄を代表するコメントを必ず求められ、岸本自身もその期待に応えようと「沖縄のために勝ちたい」と答えてきた。

なので「自分自身のため」という言葉が岸本の口から出たのは、とても意外だった。


振り返れば、岸本はキングス入団当初から「沖縄県出身の期待のルーキー」として取り上げられ、ずっとずっと沖縄じゅうの期待を背負ってきた。もちろんその期待が彼のプレーの原動力であった事は間違いないが、岸本はプレーヤーとして成長していく中で、その期待に応えられない場面に何度も直面してきた。

昨季の天皇杯決勝に敗れたあとの有明コロシアムの記者会見場で、岸本はこう答えた。「(優勝した千葉ジェッツとは)大舞台での経験の差が出たのかもしれない」

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本当の日本一へ、何度も何度も挑戦して、そして何度も跳ね返された。頂点に届かない年月の分だけ、彼の肩には期待という名の重荷が積み重なってきたのかもしれない。

そして2022-23シーズン、岸本はBリーグ優勝という本当の日本一を勝ち獲った。日本一を決めた瞬間、岸本は涙を流しながら、どこか安堵したような表情だった。喜びを爆発させるというよりは、少しだけその肩が軽くなるような。

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3月6日の京都戦後の記者会見場。天皇杯決勝直前となるこの日も、岸本は天皇杯決勝へのコメントを求められていた。

そんな中、私は岸本に「『自分自身のために勝ちたい』という言葉は、昨季Bリーグ優勝を達成したことで、岸本選手が背負ってきた大きな重圧を、少し肩から下ろした感覚なんでしょうか」と聞いてみた。

岸本は深く頷きながら、昨季のBリーグ優勝を振り返りつつ丁寧に答えてくれた。

「昨季までは優勝経験が無いなかで『自分のために』というよりは『人のために、沖縄のために』とずっと思っていました。」

「ただ、実際に優勝して色々な感情にさせてもらえた上で今思えるのは『自分のため』にやるからこそ、そしてそれに結果が伴うからこそ、人のためにもなるし、自分に関わる人たちが少なからず喜んでくれたり、良い影響があるんだなっていう感覚も得られました。順番が変わってきたという感じですかね。」

「今までは1番上に『人のために、沖縄のために、キングスのために』という思いがあったんですけれど、もちろんそれがずっとありつつ、少しずつ『自分自身のために』やっていくことで、結果的には本当に色々な人を巻き込んでいけるのかもしれない。もしそうであれば、自分の精神的にも穏やかでいられる部分もあります。」

「なので僕自身としては、天皇杯はずっと縁がなかった大会だと思ってるので、そういう意味でも本当に自分のために天皇杯を勝ち獲れたらいいなと思いますし、その結果、より多くの人たちにに何か感じてもらえたら。」

「いまは、その順番がいいのかなと僕は思っています。」

2024.3.6 vs京都 記者会見

この日の京都戦、岸本はチーム2位の19得点を記録してキングスの勝利に貢献。孤軍奮闘するのではなく、頼もしいチームメイトに支えられながら、流れのままに自分自身のシュートを放っていた。

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「自分が1人で何とかしてやる、と思うよりも、チーム全員が他のメンバーを巻き込みながら、いかに良いリズムでやれるかみたいなところはすごく意識して、それが今の結果にも表れている」と岸本は語った。精神的な重圧から解放され、プレー面でもより自然体でいられるのかもしれない。

2024.3.6 vs京都

岸本が『自分自身のため』と語る天皇杯決勝。コート上の仲間を巻き込みつつ、岸本自身が自然体でプレー出来れば、彼が望む結果は自ずと得られるはずだし、岸本が自分自身の勝利を求めて躍動する姿は、より多くの人々を感動させるはずだ。

“いまは、その順番がいい。”

(文:湧川 太陽)

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この記事を書いた人

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