伊集南さんの今後の人生について後編です。前編では現役時代や引退後について語っていただきました。後編では沖縄県についてのお話しも伺いました。また、2023年9月に沖縄県で開催される「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」についても伊集さんにインタビューをしました。
文、インタビュー=鈴木貴登 写真=大坪まな実
・伊集さんのバスケット人生が始まったのは沖縄ですが、伊集さんにとって沖縄とはどのような場所ですか。
沖縄は特別な場所です。私は沖縄出身ということに誇りを持っています。ここに生まれたからこそ自分という1人の人間がいると思っています。
また、沖縄でバスケットを始めていなければ私という選手は生まれませんでした。沖縄という場所に感謝をしています。沖縄の方々は人とのつながりを大切にし、温かみのある方々ばかりです。私はその場にいたからこそ、感受性が豊かな人間に育ったと思っています。沖縄の方と話せば、温もりのある優しい時間が流れます。これは沖縄独特の時間だと思います。そのようなところから、私は人との関りは大切にしていますし、皆さんと素敵な時間を作りたいなと思っています。沖縄は良いところなので、ぜひ来てください。
・私は(インタビュアー)愛知県出身ですが、沖縄に旅行へ行った際に楽しい時間を過ごすことができたことを今でも覚えています。伊集さんにとって特別な場所である沖縄を離れる際に何かエピソードはありますか、どのような思いでしたか。
沖縄を離れる際、那覇空港にサプライズで同級生や仲間が駆けつけてくれました。その光景を見た際に自然と涙が出てきて簡単に帰りたくないと思いました。応援してくれる方々がいて、次の道を作ることができましたし、絶対に中途半端で帰りたくはないとそこで決意が生まれました。
沖縄に応援してくれる方々がいるからこそ今がありますね。辛かった時も簡単に帰ることができないという思いと感謝の気持ちがあったからこそ、乗り越えることができました。自分の道は決して一人では歩むことはできませんでしたし、謙虚で居続けることの大切さを知りました。
母は子供の頃に何か賞を取ってきても、人に褒められるようなことをしても「周りの人達のおかげだね、周りの人に感謝しなきゃいけないよ」とよく言っていたので、親の導きが私のマインドにつながったのではないかと思います。
・沖縄といえばバスケットボールに対して熱い地域という印象があります。B.LEAGUEの琉球ゴールデンキングスのゲームを沖縄で観戦に行ったことはありますか。
たしか私が高校1年生の時に琉球ゴールデンキングスができました。キングスができた当初を知っているので、とても感慨深いです。今まで1年に1回は沖縄に帰っていたので、その際に1試合はキングスの試合を観戦していました。キングスの練習を見学したこともあります。私にとってキングスは特別なチームですし、ずっとキングスの動向はチェックしています。
・先程、沖縄出身というのは伊集さんのブランドの1つとおっしゃっていましたが、同じ沖縄出身の選手には滋賀レイクスターズの#4狩俣昌也選手やサンロッカーズ渋谷の#32山内盛久選手等、素晴らしい選手がたくさんいますね。
いろいろな苦労や経験をした人ほど人間力が培われていると思います。#4狩俣選手や#32山内選手もそうですが、簡単な歩みをしていない選手は素晴らしい人間性を持った人が多いです。その中にこの二人がいると思いますし、沖縄にはそうした人が多いです。全国区の選手は小中高で活躍し、大学も強豪校へ進学し、ずっと代表にいるような選手が多いです。沖縄の選手はそうではなく這い上がった選手が多い気がします。人間はストーリーが面白いほうが良いと思っています。持っているバックグラウンドが面白い方が相手は良く受け取ってくれますし、経験をしている数が多いほど、人柄というのは大きく変わっていきます。その人のストーリーを知ることで、見方も変わってきます。本当に沖縄出身の選手は素晴らしい選手がたくさんいます。
・沖縄のバスケットに関して最近の大きなニュースといえば、2023年9月に「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」の予選ラウンドが開催されます。沖縄という場所での開催についてどう思われますか。
ある意味、歴史的瞬間というか沖縄のバスケットの今後の発展につながる良いイベントになると思います。そこへ海外の選手が国を代表して集まりますので、ぜひ力になりたいですし、何か関われたらいいなと思います。
また、プレーを目にした子供達が、普通では感じることができない刺激を味わいバスケットに興味を持ってもらえるので、良いことしかありません。私もワクワクしていますし、開催にあたりご尽力くださった方々の思いというのは、計り知れないものであると感じています。
・ワールドカップに関連しての質問になりますが、3×3で日本代表をされていて、過去にはユニバシアードでも日本代表選手としての出場経験のある伊集さんですが、日本を代表して試合をするということに対してはどのような思いですか。誰もが経験できるものではないので、お聞きしたいです。
あのユニホームを着て、国を背負ってプレーできたということは日本人として誇らしいですし、あの場に立てたというのは自分の人生としても大きかったと思います。日本を代表してプレーをするということは特別だと思います。もちろん、その分の責任感やプレッシャーもありますが、限られた選手でしかそのような機会を与えられることはないので、誇らしいとしか言いようがありません。私にとっては特別な時間でした。
(FIBA 3×3アジアカップ2019 3位/優秀選手賞のメダル)
・やはり特別なものがありますよね。多くの選手が沖縄で開催されるワールドカップを目指すように思います。WリーグやBリーグに対しても今まで以上に多くの注目が集まると思います。そして、多くの子供達が日本最高峰のリーグでプレーすることを目指すのではないでしょうか。伊集さんは今後、バスケットボールの魅了や素晴らしさをどのように発信していきますか。
バスケットを通して素晴らしい人間になって欲しい、良い人間力を身に着けて欲しいという思いが私の中にあります。もちろん良い選手を輩出できたらとは思いますが、それが目的ではありません。いろいろな方にこの競技の素晴らしさを知ってもらい、そのうえでバスケットというものを子供達が選択をする。子供達が多くの選択肢がある中から魅力を感じ、バスケットを選んでもらうことができたらと思っています。
私もその中に関わっていけたら凄く光栄なことです。バスケットという魅力あるスポーツを通して、子供達の成長過程の1つの手段となり、この競技が身近なものになれば、それほど幸せなことはありません。
これに関しては地道な活動が必要なので、真摯に子供と向き合っていくこと、Wリーグという女子のバスケット界を発信していくこと、私の置かれている立場で1つだけでなく多方面で貢献していくことが大切だと思います。引き続き、自分のできることをやり、恩を返しつつ今後も活動を続けていきたいと思います。
・多くのお話しをお伺いしましたが、これが最後の質問になります。応援してくださったファンの方や現役を引退されてからも応援してくれる方々に対して、何かメッセージをお願いします。
現役生活の中でたくさんのご声援を頂き、本当にありがとうございました。今後とも選手とは違う立場にはなりますが、伊集南という1人の人間としてバスケットを通してデンソーや沖縄に貢献できることはできる限りやっていきたいと思います。今後とも皆様と近い存在でいたいなと思いますし、楽しい企画や自分でやりたいと思ったことで皆様と関われるきっかけを持ちたいと思います。本当に今まで多くの方々が支えてくださり、感謝の気持ちでいっぱいです。いっぺーにふぇーでーびる!笑
(写真提供:デンソーアイリス)