開幕を待ちわびた沖縄県民
大人も子供も満面の笑みで続々と会場に入場したのは、今年4月にバスケットボール専用アリーナとして新設された沖縄アリーナでのシーズン開幕戦の光景だ。
最も人気のあるスポーツがバスケットボールという沖縄では、県民のほとんどが琉球ゴールデンキングスの熱心なブースターではないかと思えるほど、今シーズンの開幕戦には多くの人が駆け付けた。
約4ヶ月のオフシーズンを待ち切れなかった様子の琉球ゴールデンキングスのブースターは、試合開始2時間前から続々とアリーナに入っていき、会場入口では多くのメディアがその様子をとらえ、観戦に来たブースターへのインタビューが各所で行われていた。
また、5年前のBリーグ発足初年度の記念すべき開幕戦もこの対戦カードであった。当時、NBL強豪のアルバルク東京とbjリーグ王者の琉球ゴールデンキングスの両リーグ王者決戦で、床にLEDが内蔵されたバスケットボールコートなど、様々な演出が施されて行われた日本バスケの新たな幕開けとなった試合は、多くのバスケファンの記憶にも残っているだろう。その時はアルバルク東京が勝っている。
さて、注目の開幕戦は再びアルバルク東京が勝利するのか、それとも琉球ゴールデンキングスが5年前の屈辱を晴らすのか、多くのキングスブースターが見守る中ティップオフされた。
互いに固さがみられた前半戦
試合のファーストゴールはアルバルク東京、#53アレックス・カークの3ポイントシュートがリングにワンバウンドしながらもゴールネットをくぐり得点になった。シュートが外れたかと思いきや入ったこの得点には、コロナ対策により発声の応援が禁止されているため多くのキングスブースターの声にならない溜息のようなものがアリーナに広がった。
その後の展開としては両チーム小気味よい点数が重ねられず、開幕戦ならではの固さが目立った。それでも日本代表選手やBリーグの実力者を揃えるタレント軍団アルバルク東京が、24対36で前半をリードした。
前半は要所要所でいいプレーが見られたが、新加入選手とのコンビネーションやチームコンセプトの浸透など良い形になるには、互いにもう少し時間がかかりそうだった。このあたりが後半、そして勝負の行方に関係しそうだ。
ドラマの最終クォーター 15点差の大逆転劇
琉球#30今村のファールを受けながらもねじ込んだ3点プレーで琉球の反撃かという雰囲気で後半戦が始まった。
しかし直後に、東京オリンピックでもキャプテンを務めた東京#24田中が冷静にゴールを決めた。なかなか得点差縮まらずとも、琉球はなんとか得点差を9点にして逆転を狙える1桁台で最終第4クォーターに臨んだ。
勝負の第4クォーター。バスケは流れのスポーツとよく言われるが、まさにその大きな流れが訪れたのがこの最終第4クォーターだった。
琉球#4コー・フリッピン、#14岸本のアグレッシブなディフェンスから琉球は少しずついい流れを引き寄せ始めた。この流れの変化にコート上の選手は気付いていたのだろう。ここが狙いどことばかりに連続得点でたたみかけた。
そしてついに琉球は#13エバンスのレイアップシュートで逆転に成功した。東京は攻めどころを欠き、残り3分35秒まで無得点が続いた。
しかし琉球61対60東京まだまだどちらが勝つかわからない展開で、試合終了まで残り1分になった。
1つのミスも許されない状況で試合を決定づけるアシストを決めたのは、Bリーグのファンタジスタ琉球#3並里だ。
ピックアンドロールを使いインサイドにドライブすると、ディフェンスのタイミングをずらしたノールックでおしゃれな背面パスを出し、それを#45クーリーが決めた。
残り時間わずか勝負がかかったシーンでの並里のビッグプレーに、沖縄アリーナは割れんばかりの拍手が広がり、琉球ブースターは皆ガッツポーズの拳をかかげた。
三種の神器を手に入れたキングス
Bリーグにおいての三種の神器は「チーム」「ブースター」「アリーナ」ではないだろうか。その点において琉球ゴールデンキングスはこの三種の神器を持ち合わせたチームだ。
昨シーズン、セミファイナルまで戦ったメンバーに加え、新加入で必要なピースが揃い活躍の期待値は高い。そしてbjリーグ時代にキングスを優勝に導いた桶谷ヘッドコーチの就任は非常に大きい。
そして熱狂というよりも愛情溢れるブースターの存在である。数はもちろんのこと、バスケットボールがこんなにも地に根付いているチームは他にない。その証拠として、キングスブースターは家族で観戦に来ている姿が非常に多いのだ。子供からお年寄りまでバスケを観に来る。
最後に、日本初のバスケットボールに最適なアリーナを所有していることだろう。NBAのアリーナとも遜色ないアリーナは、選手とブースターの力を最大限に発揮させる。是非、このアリーナの力を体感していただきたい。
三種の神器を手にしたキングスは開幕戦を白星で飾り、2021-2022シーズンをどのように戦い抜くのか見ものである。