今村佳太は、琉球ゴールデンキングスのエースとして2022-23シーズンB1初優勝に大きく貢献した。準優勝に悔し涙を流した初のファイナルから、苦しみながらも一歩ずつ成長していったレギュラーシーズン。そして掴み取った初優勝。
優勝の興奮から少し経った7月。今村は多くを語ってくれた。
優勝までの戦い。地元である新潟への思い。家族と過ごす沖縄での日常。日本代表への情熱。この日も今村は優しい笑顔で、いつも通り誠実に語ってくれた。
(取材日 2023年7月12日)
準優勝の悔しさを胸に迎えた開幕
——優勝おめでとうございます。優勝したときのお気持ちは?
(2020-21シーズンに)キングスに来てから、セミファイナルで負けて、ファイナルで負けて、3度目の正直で、僕個人としてもチームとしても本当に遠かった優勝を、自分たちの力だけではなくファンの皆さんの力を借りて勝ち取ることが出来たのは特別な瞬間でした。
色々な人に支えられながら掴み取れた優勝だったのかなと、改めて感じています。
——2021-22シーズンは準優勝で、今村選手のすごく悔しそうな表情が印象的でしたが、開幕時はどのような目標を持って臨みましたか?
絶対に優勝を成し遂げるという気持ちでした。準優勝に終わった21-22シーズンは、僕個人は自分自身のことで精いっぱいになっていた時間帯もあり、自分のやっていることがなかなか周りに影響しないと感じていて、それが最後のファイナルの結果になってしまったと思い非常に悔しかったです。
22−23シーズンが始まるときには、チームメイト・スタッフも含めて皆を巻き込んで良いチームになっていきたいと思っていたので、自分の得点やオールラウンドな部分も強化しつつ、より周りを巻き込んでいくことを重点的に意識してシーズンに臨みました。
——周りを巻き込む、とはスキル面・メンタル面のどちらをより具体的に意識していたんですか?
メンタル面も大きく変わった部分ではありますが、どうしてもメンタルだけでは乗り越えられないものもあります。周りを巻き込むんだという気持ちを持ちつつ、自分に欠けていたスキルセットをオフシーズンにトレーニングしました。
重点的にトレーニングをしたのは、ピックアンドロールのスキルセットで、それこそ目線の配り方だったり、本当に細かい部分までオフシーズンの間に磨いてきた自信はありました。
——開幕当初からボールハンドリングなどプレーの幅が広がっていたが、それを含めて自身のチームへの影響力を高めていこうと考えていたのでしょうか?
ファーストオプションで自分がピックを使うシチュエーションも多かったですし、開幕前から桶谷ヘッドコーチにも(ファーストオプションと)言われていたので、オフェンスにおいては自分がいかに相手のディフェンスを崩して、周りの選手へチャンスメイクできるかに重点を置いていました。
——開幕時『ポジションレスバスケ』を掲げたが、シーズン序盤はそれが噛み合っていない部分もあった。そんな時に今村選手は周りにどうアプローチしましたか?
『ポジションレスバスケ』で誰でもチャンスメイク出来るというのが僕らの強みではあるんですが、逆に「誰がシュートを打つべきなのか」「どのタイミングでシュートを打っていいのか」と少し迷いが出ていた時期がありました。
特にセカンドユニットの選手がすごく苦しみながらプレーしていたと思うんですけど、その時期に周りに伝えたのは「自分が打つべきタイミングが来たと感じたら思いっきり打つことが、相手にとっての脅威になる」「アグレッシブにプレーを続けることが相手へのプレッシャーになる」と話しかけていました。
練習中に僕から皆へコミュニケーションを取っていたことは、本人たちが納得してアクションを起こすきっかけづくりにしかならなかったと思うんですけど、最終的にファイナルでいい形になれたのは、チームで作り上げてきたものかなと思います。
レギュラーシーズン中の試合でなかなか上手くいかずに負けてしまうこともありました。やっぱりターンオーバーの部分は自分たちが少し苦しんだなと思っています。
『ポジションレスバスケ』として、練習中からビッグマンも含めてどれだけボールをシェアできるかを意識しながらやっていました。その中でビッグマンのボールを中継するタイミングや、ウイング、ガードのプレーヤーのタイミングが合わなかったり、連続してターンオーバーが起きるような練習の内容だった時もありました。
タイミングが合っていなかったり、周りの選手がボールにさわれていなかったり。ただ練習でもそのミスをそのままにせず、時折少しぶつかってしまうこともありました。
でも自分たち自身で気づくことでしか変われないと思うので、結果的にシーズン後半はチームが噛み合っていたし、練習中からぶつかり合えたことが自分たちにとって非常に良かったのかなと思います。