2026年6月6日、Wリーグ 本橋菜子選手(東京羽田ヴィッキーズ所属)による「NAKOプロジェクト バスケットボールクリニック」が沖縄県豊見城市立上田小学校にて行われました。
体育館は、沖縄の初夏の蒸し暑さでしたが、子どもたちの純粋な笑顔があふれていました。コートの中央に立つのは、日本代表として世界の舞台で戦った本橋菜子選手。そして彼女の大学の後輩であり、沖縄県出身で現在は韓国プロリーグで活躍する砂川夏輝選手です。全日本空輸(ANA)沖縄支店などの全面的なサポートにより実現したこの「NAKOプロジェクト」は、子どもたちの心に一生涯の財産となる「種」をまく貴重な時間となりました。

上達の源泉は「楽しむこと」
クリニックを通じて本橋選手が最も強調し、子どもたちの心に深く刻み込んだのは「バスケットを楽しむ」という極めてシンプルな、しかし一番大事な姿勢でした。「競技のレベルが上がり、中学、高校と進むにつれて、勝敗の厳しさや技術的な壁に直面し、『楽しいだけでは終わらない部分』が必ず現れます。私も経験してきたその苦難を乗り越えるために大事なことは、心の底にある『好き』という感情です」と本橋選手は話します。


「失敗」という名の挑戦を歓迎する
練習中、慣れないハンドリングにボールをこぼしてしまう子どもたちの姿がありました。しかし、本橋選手はその一つひとつのミスを否定するのではなく、むしろ前向きな「挑戦の証」として温かく受け入れました。初めてのメニューで失敗するのは当たり前。大切なのは、そこから何を学び、次の一歩をどう踏み出すか。この「挑戦の肯定」は、失敗を恐れて縮こまりがちな現代の子どもたちにとって、自己を解放するための大きな勇気となったはずです。
「失敗してそこからどうやって学んでいくか。それはバスケに限らずなんだけど、これから先の人生においても、そういったところを色々チャレンジしながらっていうのは大切にしてほしいなと思います」
失敗を糧にする力は、コートの上だけでなく、彼らがこれから歩む長い人生のあらゆる場面で、未来を切り拓く力強さとなるに違いありません。



リズムが心の壁を溶かす:音楽を取り入れたウォーミングアップ
本橋選手がクリニックの導入として大切にしているのが、音楽に合わせたリズムトレーニングです。当初は緊張で表情の硬かった子どもたちが、リズムを刻むうちに自然と笑顔になり、緊張がほどけていく様子は印象的でした。これは単なるレクリエーションではありません。本橋選手自身が日頃の練習に取り入れている「プロのメソッド」であり、バスケットボールに不可欠なリズミカルな動きを養うためのメニューなのです。音楽を通じて緊張をほぐしながら、同時に動きの基礎を身体に染み込ませていく。こうした細やかな工夫に、トッププレイヤーとしての経験と、子どもたちへの深い愛情が垣間見えました。


チャレンジの大切さを伝える「NAKOプロジェクト」
今回のNACOプロジェクトは、2026年6月6日の豊見城市(上田小学校)から、翌7日には宮古島市(久松小学校)へとその舞台を広げました。この活動を支えているのは、ANA沖縄支店、ANA宮古支店、ANAエアポートサービスといった運営組織です。航空会社が地域貢献として離島と都市、そして夢と現実をつなぐ役割を果たしている点は、プロジェクトの継続性において非常に大きな意味を持っています。トッププレイヤーが直接離島へ足を運ぶ。その事自体が、地域の子どもたちにとって「夢は遠い場所にあるのではなく、自分たちの手で掴めるものだ」という力強いメッセージになったことでしょう。
この日一緒にクリニックを指導した砂川夏輝選手も、信頼する先輩でもある本橋選手と共にプレーした思い出をこう語ります。「大学時代から頭を使うバスケットボールスタイルで、本橋さんはガードとしてチームメイトをコントロールしつつ、自分自身もシュートを決めるような、昔から憧れの存在です」

そんな砂川選手も、沖縄から自分自身の手で夢を掴みました。沖縄県立西原高校でプレーした砂川選手は、その後早稲田大学、Wリーグとチャンレンジを続け、2年前から韓国プロリーグWKBLでのプレーという海外での新たなチャレンジを続けています。砂川選手は「沖縄出身でも自分たちの手で夢を掴める」ことを感じて欲しいと話してくれました。
「私は決してエリートコースを歩んできた選手ではなかったですし、特別大きな選手でもありません。でも自分を信じて韓国プロリーグにチャレンジしてみて、自分の強みであるスピード面でしっかり通用すると感じました。韓国は伝統的にシュートが上手い選手が多いのですが、そんなバスケットボールスタイルの違いや、日々の生活で感じる文化の違いなども感じます。大変なことも多いですが、やはりチャレンジして良かったと思っています。沖縄の子ども達にも『自分たちにもできる』と感じて欲しいですし、私のチャレンジがそのキッカケになれたら嬉しいです」


クリニックの終盤、本橋選手は子どもたちに「今日習ったことを自分のチームに持ち帰り、みんなで話してみてほしい」と語りかけました。壁にぶつかっても「楽しむ」という強さと、失敗を恐れず挑み続ける。「NAKOプロジェクト」を通じて、本橋選手はチャレンジの大切さを伝え続けてくれました。
(取材・文:湧川太陽)





