クリスマスゲーム、それは米国発祥のスポーツであるバスケットボールにとって特別な試合だ。元来ウインタースポーツであるバスケットボールは、冬はシーズンの盛り上がりが加速する時期で、米国プロバスケットボールNBAでは、クリスマスには”Christmas games”と称して前年ファイナルのリマッチなどそのシーズンの『BIG GAME』をスケジュールする。
12月23日のクリスマスイブ前日、オープンハウスアリーナ太田でも『BIG GAME』が行われた。前年チャンピオンの琉球ゴールデンキングスが群馬クレインサンダーズのアウェーに乗り込んでの対戦だ。『BIG GAME』の理由は、琉球が初のB1チャンピオントロフィーを手にした2022-23ファイナルGAME2にキングスの選手として勝利の立役者になった群馬#1 コー・フリッピンが、古巣である琉球とのレギュラーシーズンでのリマッチだからだ。
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フリッピンは、2020-21シーズンには当時所属した千葉ジェッツの一員としてもプレーオフの大舞台で輝いた。沖縄アリーナで行われた2020−21セミファイナルGAME3の4クォーターに、フリッピンはその爆発力で右サイドから1on1で次々に得点。その日スコアした11得点を全て4クォーターに叩き出すパフォーマンスで、沖縄アリーナに詰めかけた琉球ファンを悪夢の底に叩き落とした。千葉Jはフリッピンの大活躍でそのままBリーグ初優勝まで上り詰めた。
『BIG-TIME Koh』フリッピンは、大舞台でこそ輝く。琉球のファンはそれを敵としても味方としても、嫌というほど実感してきた。そして、クリスマスゲームという大舞台で、その嫌な記憶を無理やり叩き起こされることになる。
群馬vs琉球 GAME1の序盤は互いに譲らず、1クォーターのスコアは18-20。だが2クォーターにフリッピンが目を覚ます。残り7:47に鋭いドライブで琉球ディフェンスを切り裂き初得点すると、右サイドからのドライブでかつてのチームメイトを置き去りにして次々に得点を重ねる。2クォーターだけでフリッピンは10得点。放ったフィールドゴール5本を全て決めてみせた。
覚醒した『BIG-TIME Koh』は止まらない。4クォーター残り6:51、リバウンドボールに素早く反応したフリッピンは、そのままファストブレイクで一気にスコア。66-59と群馬のリードを6点に拡げた。4クォーターの大事な時間帯に10分間フル出場したフリッピンは、最終スタッツ19得点でホーム群馬の勝利に大きく貢献した。
試合後の記者会見で、フリッピンは「直前の秋田戦で良くない負け方をしたので勝てて良かった」とまずはチームの勝利を喜んだ。古巣である琉球との対戦について問われると「もちろん古巣との対戦にエモーショナルになる部分もあったけど、まずはチームの勝利に集中したよ」と答えた。岸本隆一との激しいマッチアップの感想を「It was very fun. 」と笑顔で答えた。
群馬と琉球は、今季開幕直前の9月に沖縄アリーナでのプレシーズンゲームでも対戦して1勝1敗。その時以来のクリスマスゲームでの再戦となった。プレシーズンゲーム後の記者会見で、フリッピンに「キングスとの再戦はクリスマスゲームという『BIG GAME』で、あなたはそんな大舞台でこそ活躍する印象がありますが?」と聞いた事がある。その時もフリッピンは「まずはチームの勝利に全力を尽くす」と笑顔で答えてくれた。
フリッピンはチームプレーヤーでありチームの勝利に全力を尽くす。 でもその笑顔の裏には「もちろん僕が止めを刺すけどね」という “killer instinct mentality” が隠されている。クリスマスゲームという大舞台で、琉球のファンにそれを思い出させた『BIG-TIME Koh』は、クリスマスイブのGAME2でも琉球を、再びの悪夢の底に突き落とすのだろうか。