(文:湧川太陽、写真:Tomohiko Sato)
1月21日(土)、琉球ゴールデンキングスは川崎ブレイブサンダースとアウェイで対戦した。
川崎はここまで中地区首位。キングスとは何度も激戦を重ねてきた強豪チームだ。
すでに昨季の負け数を超えたキングス。「このチームはまだまだ未完成」と桶谷HCも選手たちも何度も口にする。このアウェイの地で勝利することが出来れば、キングスはさらに成長できる。
沖縄から遠く離れた川崎の地で、キングスにとって大事な戦いが始まる。
プレーオフさながらの激しい攻防
キングスのスターティングメンバーは、#1 ジョシュ・ダンカン、#14 岸本 隆一、#30 今村 佳太、#34 小野寺 祥太、#45 ジャック・クーリー。
川崎のスターティングメンバーは、#0 藤井 祐眞、#22 ニック・ファジーカス、#23 マット・ジャニング、#33 長谷川 技、#35 ジョーダン・ヒース。
先制点は川崎。藤井とファジーカスのピックアンドロールでディフェンスをスイッチさせて、高さのミスマッチになったファジーカスが小野寺の上からフローターショットを決めてきた。
試合開始直後から、互いのプライドをかけた激しいディフェンスを見せる両者。まるでプレーオフの様相。
川崎はファジーカスがシュート好調。ピックアンドロールで高さのミスマッチを作り続け、キングスの日本人選手の上からフローターショット。同じプレイが繰り返され、ファジーカスは1クォーターだけで9得点。
だがキングスは、このファジーカスのミスマッチ攻撃に得点されるものの、1度もファウルを犯さなかった。実際、ミスマッチの状態でもファジーカスに押し込まれる場面はほとんど無かった。
1クォーターは、17-11と川崎が6点リードで終了。ファジーカスにある程度得点されるのは想定済み。キングスがどこまで我慢し続けて自分達のプランを信じてプレイ出来るかが試されている。
『良いシュート』を探し続けて
2クォーター、川崎はオールコートマンツーマンからハーフコートで2−3ゾーンに切り替わるチェンジングディフェンスを敷く。
2クォーター残り8:33、岸本が川崎の2−3ゾーンの隙を見逃さず、トップの位置から3ポイントを決める。残り7:48には同じくトップの位置から、岸本のアシストから#15 松脇 圭志が3ポイント成功。
さらに残り6:39、今度は松脇のアシストから#88 牧 隼利が右コーナー3ポイントを決める。これで22-22の同点だ。
川崎の2−3ゾーンに惑わされる事なく、キングスは全員でボールを回しながら『より良いシュート』を探し続け、3ポイントを打ち続ける。
キングスはディフェンスでも冷静にプランを遂行する。川崎のオフェンスに火を付ける導火線は、#23 マット・ジャニング。シューティングマシンであるジャニングが気持ち良くシュートを打ち始めると、一気に川崎のリズムになってしまう、キングスにとって危険な相手だ。
キングスは、ジャニングに対して今村、松脇ら日本人ウイングが身体を張ってマッチアップ。ジャニングの2クォーターのシュート試投数をわずか1本に抑えた。
2クォーター終了時のスコアは、30-29と川崎1点リード。キングスは自分たちのプランを信じてプレイし続ける。
全員で集中しプレイを続けるキングス
3クォーター、川崎はスタートメンバーを変更。ジャニングに代えて206cmの#2 マイケル・ヤングジュニアを入れてインサイドを強調してきた。
川崎はマイケル・ヤングジュニアのポストアップから外へキックアウトして3ポイントを狙う。その期待に応えて、守備職人の長谷川が3ポイントを2本連続で決める。残り6:30でスコア41-40と川崎が1点リード。川崎ベンチもとどろきアリーナの観客も盛り上がる。
川崎のリズムになりそうな雰囲気だったが、クーリーが本領発揮。ゴール下でリバウンドに絡み続け、3クォーターだけで8得点。
クーリーのゴール下での奮闘に、キングスは全員が集中したプレイを見せる。ディフェンスに走り、ルーズボールに飛び込み、川崎に試合のリズムを渡さない。3クォーターはスコア55-50と川崎が5点リードで終了。
岸本が劇的な3ポイントを決める
4クォーター、ついに川崎の導火線に火が付く。残り9:29、ジャニングは田代のファウルを受けつつペリメーターのジャンプシュートを決めて、バスケットカウントワンスローをもぎ取る。
キングスも松脇の3ポイント、岸本のフローターショットで喰らいつく。いつ流れを持っていかれてもおかしくないアウェイの地で、キングスはチーム全員が集中して望みを繋ぐ。残り4:58のオフィシャルタイムアウトの時点でスコア63-62。川崎1点リード。
しかし川崎はジャニングに完全に火が付いた。残り4:05、ジャニングは美しいシュートフォームから3ポイントを決める。さらに残り3:05にもジャニングが3ポイントを決める。スコア69-65となり川崎4点リード。4点という点差以上にキングスは追い詰められる。
だが、この日のキングスは誰ひとり勝負を諦めず、自分たちのプランを最後まで信じ続けた。
ダーラム、ダンカンがゴール下で身体を張り続け、田代がファジーカスを揺さぶり、松脇がコーナーで仲間を信じ続けた。
残り1分を切り、ダーラムは果敢にゴール下を攻めて試合を繋ぐ。しかしダーラムは緊張する場面でフリースローを全て決めきれない。チームメイトがダーラムの肩を抱いて鼓舞する。5点差以内の緊迫した場面が続く。
残り8秒、75-72と川崎3点リードの場面。キングスは最後のタイムアウトを取る。最初のデザインプレイは川崎ディフェンスに阻まれるものの、ルーズボールを何とかマイボールにするキングス。
そして残り2秒、クーリーのスクリーンから抜け出した岸本がボールを受けると、コンマ数秒の息を吐き、3ポイントラインの遠く後ろからシュートを放つ。
次の瞬間、アウェイに駆けつけたキングスファンを総立ちにさせる同点弾がネットを揺らした。スコア 75-75 の同点となりオーバータイム突入。
岸本はオーバータイムでも躍動。3ポイントを2本連続で決めてスコア77-83、キングスは逆に5点リードを奪う。
そしてダーラムが4クォーターの雪辱を晴らす活躍。ダーラムはオーバータイムだけで8得点、フリースローは4本全て決め切った。
最終スコアは82-93でキングスが劇的な逆転勝利。チーム全員が耐えて耐えて、最後に掴んだ勝利だった。
試合スタッツ:Bリーグ 2022-23 B1リーグ戦 2023/01/21 川崎 VS 琉球 | B.LEAGUE(Bリーグ)公式サイト