日本代表 ホームでチャイニーズ・タイペイに90–64で勝利 ワールドカップ予選を白星スタート

11月28日(金)、FIBAバスケットボールワールドカップ2027 アジア地区予選1次ラウンド Window1 日本 vs チャイニーズ・タイペイがGLION ARENA KOBE (兵庫県神戸市)で行われ、90–64で日本が勝利。アジア予選を白星スタートした。

目次

第1クォーター:日本が主導権を握った序盤戦

試合開始直後から、日本は前線からの激しいボールプレッシャーでリズムを掴む。フロントコートからボールマンにプレッシャーを仕掛け、ドライブには身体を張ってコースを塞ぐ。チャイニーズ・タイペイに開始3分で3つのターンオーバーを誘発させる。渡邊雄太がファストブレイクで得点して9-3と先行する。さらに残り3:19にはチャイニーズ・タイペイのターンオーバーから、富永啓生のアリウープパスで渡邊雄太がスラムダンクを叩き込む。このプレーで完全に流れを掴んだ日本は、クォーター終了のブザーと同時に馬場雄大選手が3ポイントシュートを決める。スコアを23-10と日本が大きくリードを奪う。

第2クォーター:リードを広げ、試合を支配する日本

第1クォーターの勢いのまま、日本はさらに攻撃のギアを上げる。富永啓生や渡邊雄太が、相手の心を折るような効果的な3ポイントシュートを次々と成功させ、チャイニーズ・タイペイの追撃の勢いを打ち砕く。

日本は理想的なチームオフェンスで得点を重ねる一方、守備でも相手をわずか12点に封じ込める。クォーター終了直前には、富永啓生がブザービーターで得意の3ポイントを決めて、ホームの観客に向かって雄叫びをあげる。前半終了時点でスコアは45-22。日本のリードは23点にまで広がり、試合の主導権を完全に掌握した。

第3クォーター:粘りを見せるチャイニーズ・タイペイと、揺るがない日本

後半に入ると、チャイニーズ・タイペイが反撃を開始。このクォーターは両チームの得点が20-20の互角となる。

チャイニーズ・タイペイはBenson Linを中心に得点を重ね、必死の粘りを見せます。しかし日本は焦らず、インサイドの要であるジョシュ・ホーキンソンや、場雄大選手の鋭いドライブなどで得点を重ね、相手に傾きかけた流れを断固として渡さない。

第3クォーター終了時のスコアは65-42。チャイニーズ・タイペイの反撃の兆しを冷静に乗り切り、日本は大量リードを維持したまま最終クォーターを迎えた。

第4クォーター:勝利を確実にした最終章

最終クォーターに入っても、日本の集中力は全く途切れない。チーム一丸となった攻守でさらに点差を広げ、勝利を盤石のものとする。この試合で日本のリードは最大31点にまで達し、ホームでチャイニーズ・タイペイに実力差を見せつける。最後まで試合をコントロールし続けた日本。最終スコア90-64で、ワールドカップ予選の初戦を見事な圧勝で飾った。

試合スタッツ:日本 vs チャイニーズ・タイペイ – 1次ラウンド – FIBAバスケットボールワールドカップ2027 アジア予選 | FIBA Basketball

試合後 記者会見

日本代表 トム・ホーバスHC

ホーバスHC:私はチームを心から、本当に誇りに思っています。選手たちは準備期間が短い中で集まりましたが、私たちが試合の数日前に課した「ミッション」を遂行しました。彼らは試合開始からゲームプランを完璧に実行してくれました。

Q: チームはチャイニーズ・タイペイに24秒バイオレーションを含む多くのターンオーバーを強いました。その理由は何だとお考えですか?

ホーバスHC:ターンオーバーを誘発した理由は、まずコーチ陣のスカウティングが素晴らしかったからです。相手のガード陣がオフェンスの起点であることは周知の事実で、守備でそこを突きました。特に馬場雄大のオンボールディフェンスは非常に良く、相手のオフェンスを大いに混乱させました。また西田雄大も試合序盤に素晴らしい守備を見せてくれました。 さらに、私たちがアジアカップでは見せなかったフルコートプレスのような、相手のスカウティングには無いプレーを取り入れたことも重要でした。

Q: 守備面で特に良かった点はありますか?

ホーバスHC:守備では、誰もが連携してプレーしており、非常に良かったです。私たちは、バスケットへのストレートなドライブを許しませんでした。ジョシュ・ホーキンソンは通常ドロップディフェンダーですが、この試合ではピック・アンド・ロールへの対応を変更し、集中して素晴らしい仕事をしてくれました。

Q: 今日のようなFIBAウィンドウゲームに対する選手のメンタルアプローチは、「Win or Go Home、勝つか負けるか」のような強いプレッシャーを伴うものだったのでしょうか?

ホーバスHC:「勝つか負けるか」というわけではありませんが、この勝利は間違いなく重要です。私たちのグループは非常に強力なので、ホームコートを100%守り切る必要がありました。また、得失点差を大きく開けて勝つことも重要でした。 選手たちは、ルーズボールに飛び込むなど、この試合に勝ちたいという強い意志を一人ひとりが示していました。アジアカップでの失敗から教訓を得て、「我々が戻ってきた」という強いメッセージを送りたいと考えていたのは確かです。

Q: キャンプや練習を通じてペイントアタックが重要だと強調されてきましたが、今日の試合におけるペイントアタックの出来栄えと、勝利への影響をどう見ていますか?

ホーバスHC:ペイントアタックは良かったですが、もっと良くなれると思います。我々はガード陣にスペースを与えるための調整をしました。特に齋藤拓実は、ほとんどの選手よりも上手くペイントに侵入できますし、彼の判断力は本当に優れています。西田雄大も非常に改善し、このウィンドウではセカンダリーハンドラーとしてペイントアタックの役割を担い、素晴らしい仕事をしました。コート上には、それができる選手が2人必要だからです。

Q: チームの成長や進歩を感じていますか?

ホーバスHC:はい、成長しています。特に前半は、チャイニーズ・タイペイをペイントエリアから締め出すために多くの努力が必要でした。ただ、次の台湾でのアウェイゲームは「タフな環境」になるでしょう。だからこそ、私たちは今夜よりもさらにステップアップして、より良くプレーする必要があると考えています。

日本代表 #12 渡邊雄太

渡邊:コーチが言ったように、オフェンス面でもディフェンス面でも、私たちの実行力は素晴らしかったです。チャイニーズタイペイは素晴らしい才能を持っていますが、私たちはルーズボールへのダイブ、リバウンド、走ることといった「小さなこと(small things)」を全てにおいて上手くこなしたと感じています。

Q: この10月(またはこの時期)のFIBAウィンドウゲームに参加するのは初めてだと思いますが、今の心境はいかがですか?

渡邊:タフではありますが、楽しんでいます。特にレギュラーシーズン中にこのウィンドウゲームでプレーするのは常に大変です。私は、これまでこの期間中に代表チームを支えてきた選手たちに感謝を示す機会だと感じています。今夜、チームを助けることができて嬉しく思います

Q: 今後の試合に向けて、どのように備えますか?

渡邊:今夜は26点差で勝利しましたが、これは次の台湾での試合でも勝てるという意味ではありません。次のアウェーゲームに向けて、しっかりと準備を整える必要があると強調したいです。 台湾遠征から戻った後もBリーグのレギュラーシーズンが続き、さらに韓国や中国との試合も控えているため、健康を維持し、準備を整えることが重要です。

チャイニーズ・タイペイ Gianluca Tucci HC

Tucci HC:日本は間違いなくこの試合に勝つに値したので、彼らを称賛する必要があります。しかし、彼らの守備の戦術が完全にルール内であったかについては確信が持てません。彼らは非常にアグレッシブな守備をしましたが、私見では、特にBenson Linに対しての多くのプレーを「本当にダーティー(dirty)」だと考えています。我々は、このアグレッシブで、時にはダーティーであった守備に対して、対応する方法を見つけられなかったと認めざるを得ません

Q: 試合を通して学ぶべきことは何ですか?

Tucci HC:後半になってようやくチームは「鍵」を見つけました。3日後には次の試合が控えているため、この敗戦から学ぶことが重要です。チャイニーズ・タイペイの全選手は素晴らしい仕事をしましたが、日本の攻撃的な守備には間違いなく驚かされました。後半の守備そして攻撃のフィニッシュから再出発できる良い感触があると感じています。

Q: 今日の試合では、Benson Lin、Ray Chen、AC Yuなど複数のガードを起用しましたが、このバックコートの組み合わせについて

Tucci HC:我々のチームには多くのコンボガードがいます。日本の守備がBenson LinやRay Chenに非常に強いプレッシャーをかけていたため、異なるポイントガードを同時に起用したり、両選手を交代させたりする必要に迫られました。異なるポイントガードを起用した際には、プレッシャーが軽減されました。 ポイントガード全員(AC Yu、Joseph Lin、Nelson Lin)にプレーするチャンスがあると考えています。Benson Linは、シーズンの出だしが素晴らしかったため、彼には高い期待が寄せられていたため、苦戦したのかもしれません。また、AC YuやJoseph Linのように、代表チームでの出場がほとんど初めての選手もおり、彼らにとって難しい状況だったと言えます。

Q: 次の台北での試合に向けて、今後数日間でどのような調整を行う予定ですか?

Tucci HC:日本のプレッシャーに対して、より準備を整える必要があります。守備面では、ペイント内で苦戦しすぎたため、調整が確実に必要です。リバウンド争いに敗れたのはこれが初めてではないため、ボックスアウトやリカバーの状況でより堅固になる必要があります。最終的な12人のロスターは、日曜日の練習後に決定します。

チャイニーズ・タイペイ 34 Brandon Gilbeck

Gilbeck:コーチの意見に同意します。日本は素晴らしい試合をしましたが、彼らの守備のフィジカルさには本当に驚かされました。幸いなことにすぐに次の試合が来るので、チームは必ず調整を行い、次回はこの驚きがないようにすると確信しています。

Q: 第2クォーター序盤の負傷のように見えましたが、現在のフィジカルコンディションについて教えてください。また、ジョシュ・ホーキンソンとの対戦についてどのように感じましたか?

Gilbeck:負傷に関しては、深刻なものではなく、単なる痙攣(cramping)でした。 ナショナルチームでプレーすることは、普段のローカルチームでプレーするよりもはるかに多くの時間をコートで過ごすことになり、「より良く準備する必要がある」と感じています。ウォーミングアップや準備を変えていくつもりです。 ジョシュ・ホーキンソンはストレッチ・ファイブ(シュートレンジを持つセンター)であり、ショットブロッカーである私にとって、彼を守ることはいくつかの課題を生み出します。ホーキンソンがコートの外まで出てくることで、私のリムプロテクションの能力が多少奪われてしまうと感じています。彼らを称賛しますが、すぐにまた対戦するため、必ず調整を加えていきます

圧勝劇の裏側 ペイントエリア得点は30-30の互角

日本代表の勝利のポイントは3つ。ターンオーバー、フリースロー、リバウンド。それによりホーバスHCのバスケットボールは復活した。

この試合で最も意外なスタッツは、「ペイントエリア内での得点」だ。最終的に26点もの大差がついたにもかかわらず、ペイントエリア得点では日本とチャイニーズ・タイペイは30-30の同点だった。

通常、大差で勝利するチームはインサイドを支配し、ペイントエリアでの得点で相手を大きく上回る。しかし、日本はこの試合において、伝統的なインサイドでの優位性に頼ることなく勝利した。

• ターンオーバーからの得点:日本 25点 vs チャイニーズ・タイペイ 7点

• 速攻による得点:日本 20点 vs チャイニーズ・タイペイ 9点

• 3ポイントシュートによる得点:日本 11本成功(33点) vs チャイニーズ・タイペイ 6本成功(18点)

このデータが示すように、日本の勝利は、激しいボールマンディフェンスから相手のミス(ターンオーバー)を誘発し、それによって生まれた25点もの得点が、そのまま20点に及ぶ速攻の源泉となった。インサイドでの肉弾戦に固執せず、ディフェンスを起点としたトランジションゲームと、そこから生まれるオープンな状況でのアウトサイドシュートという、ホーバスのバスケットボールで躍動した2023年ワールドカップの戦い方を再現する事に成功した。

勝負を分けた冷静さ 驚異のフリースロー成功率94.4%

日本代表はこの試合、フリースローを18本中17本成功させ、成功率は実に94.44%という驚異的な数字を記録。

対するチャイニーズ・タイペイの成功率76.19%(21本中16本成功)も決して低い数字ではないが、日本のほぼ完璧なパフォーマンスは際立っていた。バスケットボールにおいて、これほど高いフリースロー成功率は、チーム全体の並外れた集中力と規律を物語っている。

試合の流れが激しく動く中で、与えられた得点機会を完璧に成功させ、相手の反撃の芽を摘み取っていく。フリースローは決して派手ではないが、この試合で最も誇るべき数字だ。

ポゼッションゲーム リバウンドを制した日本が試合を制す

日本は試合の根幹をなす「ポゼッション(攻撃機会)の奪い合い」でチャイニーズ・タイペイを完全に圧倒した。その要因は主に2つ。

まず第一に、リバウンド。総リバウンド数で日本は49本を記録し、チャイニーズ・タイペイの33本を大きく上回った。特に決定的な差がついたのはオフェンスリバウンドで、日本が17本を奪ったのに対し、チャイニーズ・タイペイはわずか5本に留まった。素晴らしいのは、日本のオフェンスリバウンド17本のうち、インサイドの要であるジョシュ・ホーキンソンが奪ったのはわずか1つ。ホーキンソン以外にオフェンスリバウンドを記録したのは渡邊雄太など7人に及び、チームリバウンドに記録された数が7つもある。これは日本がチームとしてオフェンスリバウンドをチーム戦略に組み込み、それを全員が確実に遂行した証だ。

第二に、ターンオーバー。日本は相手に19回のターンオーバーを誘発させた一方で、自らのターンオーバーは11回に抑えた。これは、日本の方が8回も多く攻撃機会を得たことを意味する。

ターンオーバー差による8回、そしてオフェンスリバウンド差による12回、合計で日本は台湾より実に20回以上も多く攻撃機会を得ていた計算になる。これは、試合の序盤から相手から「シュートを撃つチャンス」を与えず、日本がやりたいトランジションバスケを効果的に実行できた事を意味する。

アジアカップ2025を失意のベスト16で終え、AKATSUKI JAPANの実力には疑問符が付けられた。しかし彼らは、絶対に負けられない戦い、ホームでのアジア予選開幕戦にて、最高の形で実力を再び証明してみせた。

しかし気を緩めている暇はない。ホーム&アウェーで戦うアジア予選は、12月1日にはアウェー台湾の地で再びチャイニーズ・タイペイと対戦する。台湾では今やバスケは国技と言っていいほど熱狂的な人気を誇る。

ワールドカップ アジア予選は、16か国を4か国ずつに分けて、4グループで1次ラウンドを戦っている。1次ラウンドではそれぞれのグループ最下位が脱落、12か国が2次ラウンドへ進出する。

2次ラウンドは6か国2グループに分かれ、最終順位の各グループ上位3か国とグループ4位のより成績上位、開催国カタールを除く上位7か国がワールドカップ本戦へ出場となる。

ここで重要なのは、1次ラウンドの勝敗、得失点差などの成績を全て2次ラウンドへ持ち越した上で最終順位を決めるというレギュレーションだ。つまり、この日のチャイニーズ・タイペイ戦は、AKATSUKI JAPANにとっては+26という大きなアドバンテージを掴み取り、最高のスタートダッシュが切れたことになる。

参考:ワールドカップ出場権を得るには – FIBAバスケットボールワールドカップ2027 アジア予選 | FIBA Basketball

参考:順位- FIBAバスケットボールワールドカップ2027 アジア予選 | FIBA Basketball

しかし裏を返せば、12月1日のアウェー台湾戦でも敗戦は決して許されず、たとえ勝利したとしても最後の0秒までゴールネットを揺らし続ける姿勢を見せなければならない。その意味では、ホーバスHCが「得失点差を大きく開けて勝つことも重要でした」と明確に話していることは素晴らしい。2023年の自国開催ワールドカップの経験から、日本代表はFIBA国際大会という「負けられない戦い」の厳しさと、それを勝ち抜いていく術を身に付けたことを示している。

勝利の余韻に浸る暇も無く続いていく「負けられない戦い」。12月1日、アウェーの大声援に圧倒されず、AKATSUKI JAPANはもう一度自分たちの実力を証明できるだろうか。

(写真提供:FIBA、構成:湧川太陽)

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この記事を書いた人

沖縄バスケットボール情報誌アウトナンバー編集部 │ #琉球ゴールデンキングス 試合レポートなら #OUTNUMBER │ 沖縄県U18、U15、ミニバス情報も発信中です

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