11月7日(金)、琉球ゴールデンキングスは#30 平良宗龍が、B2岩手ビッグブルズへ期限付移籍したことを発表した。
出場機会を求めて期限付き移籍を選んだ平良宗龍
沖縄県出身の平良宗龍は、中学生時代からキングスU15で活動して「B.LEAGUE U15 CHAMPIONSHIP 2021」で大会MIP賞を受賞。高校は新潟県の強豪 開志国際高校へ進学すると、1年生から主力として活躍。高校在籍時には特別指定選手としてキングスでBリーグデビューも果たした。高校卒業を控えた2025年1月22日には、佐取龍之介選手とともにキングス初のU22枠選手契約を締結した。
参考:佐取龍之介選手・平良宗龍選手のU22枠選手契約のお知らせ | 琉球ゴールデンキングス [2025.01.22]
今回の岩手への期限付き移籍の期間は、2026年5月19日までとなり、試合出場機会を求めての移籍であると球団は発表した。
平良選手は、世代を代表するプレーヤーとして将来性を備え、今後も地元沖縄を代表し活躍する選手へと飛躍していくことが期待されます。一方で今シーズンは、トップチーム内での激しいロスター争いの中で、公式戦へ出場する機会がなかなか巡ってきませんでした。
そのような状況の中で、「試合の中で経験を重ね、力を磨き、キングスの戦力になりたい」という平良選手自身の強い意志があり、球団としてもその思いを尊重し、今回の期限付移籍という決断に至りました。
新たな環境で得る経験が、平良選手の成長を後押しし、よりたくましい姿で沖縄に戻ってきてくれることを心から期待しています。
キングスファンの皆さまも引き続き平良選手の活躍にご注目いただき、温かい応援をどうぞよろしくお願いします。(琉球ゴールデンキングス公式サイトより引用)
現在の琉球ゴールデンキングスは、16名の契約選手(日本人選手10名、帰化選手1名、外国籍選手3名、U22枠2名)を抱え、12名の試合出場登録枠をめぐり厳しいチーム内競争がある。U22枠の選手は12名の出場登録枠にプラスアルファ1名として出場登録可能だが、11月5日の第8節までU22枠の平良宗龍・佐取龍之介の出場登録は無かった。今季のB1は各チームの実力が伯仲しており、たとえ12名プラスアルファ1名登録が可能なU22枠といえど、出場機会を得るのはかなり難しいのが現状だった。 環境を変えて出場機会を求める平良宗龍の姿勢は、プロ選手としてあるべき姿であり、彼のチャレンジを心から応援したい。

Bプレミア時代のモデルケースとなるU22枠選手の移籍
平良宗龍の活躍を願うとともに、今回の期限付き移籍は、若手選手育成を目的とした「U22枠」選手契約の現状と未来を改めて考える機会となる。
U22枠制度は、2023年2月新設のまだ新しい制度だ。Bリーグクラブのユース組織であるU15またはU18チームに3ヶ月以上在籍経験があり、高校卒業年次とその翌年までの年齢の選手が対象となる。そしてプロ契約であり、大学でプレーしながら一定期間Bクラブでもプレー可能な特別指定制度アマ契約とは、制度理念が異なる。
つまりU22枠は、Bユースで活動してきた若手選手が、大学でプレーするのではなく、Bリーグクラブのトップチームの一員として活動しながら成長を目指すという制度だ。
参考:選手登録制度「U22枠」の新設について | B.LEAGUE(Bリーグ)公式サイト [2023.02.08]
U22枠として初の選手契約締結は、サンロッカーズ渋谷の大森康瑛だ。2024年6月5日にU22枠選手として契約した大森は、2024−25は5試合の出場で1分強、今季2025−26は第8節終了時点で7試合の出場で約2分間の出場時間を記録している。
その他のU22枠選手は、レバンガ北海道の内藤耀悠、宇都宮ブレックスの石川裕大、そしてキングスの平良宗龍、佐取龍之介。現時点では5名のU22枠選手が存在する。5名とも将来を期待される若手選手であるが、現状で安定したプレータイムを獲得している選手はいない。今回の平良宗龍の期限付き移籍は、U22枠契約をした選手が別クラブに移籍する初のケースとなる。
若手選手にとって、試合に出場して実戦経験を重ねることが重要であり、今後もU22枠の選手が出場機会を求めて別クラブへの期限付き移籍を選択するケースが増える可能性がある。
なぜなら、2026−27から始まるBプレミアではU22枠の拡大が決定している。選手契約は現状の2名から4名へ、出場選手登録は現状の1名から2名へと拡大される。
参考:【公式】ロスター・オンザコート | シーズンの変更点 | B.革新 | B.LEAGUE(Bリーグ)公式サイト
外国籍選手オンザコートフリーとなるBプレミアにおいて、競技レベルが現状より高くなることは確実であり、その中でU22枠選手が出場機会を得るのは至難の業だ。U22枠選手の人数は増えても、出場機会はさらに狭くなり、必然的に下部カテゴリへの期限付き移籍が多くなるだろう。
ここで問題になるのは「下部カテゴリなら本当に出場機会が増加するのか」である。もちろんU22枠選手は才能ある選手である事が多く、実力でプレータイムを勝ち取る可能性もある。しかしU22枠選手は、元々のクラブであれば12名の出場登録枠にプラスアルファ1名として出場登録可能だが、移籍先クラブでは通常の日本人選手として登録され、他の日本人選手と同じ条件で12名の出場登録枠を争う事になる。
選手契約および登録に関する規程
第20条〔プロ選手の期限付移籍〕
(6) U22枠選手が期限付移籍をする場合、移籍先クラブではU22枠選手、および特別指定選手として登録することはできない。 (参考:選手契約および登録に関する規程 – Bリーグ )
上記は現行のBリーグ規定だが、Bプレミアでも同じ条件で運用されるだろう。そうなった場合、U22枠という育成制度はどのような発展を遂げるのだろうか。もちろんサラリーキャップやドラフト制度など、他のBプレミア制度との関連も考慮しなければならない。今回の平良宗龍の期限付き移籍は、Bプレミア時代のユース選手育成におけるモデルケースとなるだろう。
(文:湧川太陽)


