激動のシーズンを終えた琉球ゴールデンキングス、安永淳一GMが大事にする『キングスの文化』とは

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『キングスの文化』があるから僕らは崩れない

──来季の目標についてお伺いします。もちろん目指すはリーグ優勝ですよね?

勝ち負けの目標というのももちろん大事ですが、『キングスらしさ』をもっと強調したキングスにならなければいけない。

僕らはもともと弱小チーム、雑草と呼ばれたチームであり、限られた人材、限られたリソースを上手く取捨選択して、最高の結果を残すことをずっとやってきました。その中でチームとして戦うことを大切にしてきた。リーグ優勝も経験して、周りから見ればビッグクラブと呼んでいただけるのかもしれませんが、僕ら自身がビッグクラブですと言ってしまったらもう終わりかなと思っています。そこは謙虚さ、ハングリーさを持ち続けなければいけないです

キングスの過去シーズンを見渡せば、年間のテクニカルファウル数の合計が2つ3つだったシーズンもあったはずです。しかし昨季のテクニカルは確か14個。テクニカルファウルは、やっぱり減らさないといけないと反省しています。皆で助け合って戦えていたら、皆で我慢して、皆で悩み考えることが持続できれば、個人がテクニカルファウルを吹かれることは減り、苦難を力強く乗り越えることができるかも知れない。そうすればテクニカルの数はもっと減らせるはずです。現場は本当に大変で、何か言わなければならない局面もあるとは思いますが、GMの数値目標はテクニカルファウルの数を限りなく0にするという点です。

 

 

そして、具体的には開幕ダッシュを仕掛けるのが重要です。ここ数シーズン開幕ダッシュが弱い感じがある。23-24シーズンは怪我もあり難しかったが、今季はまず開幕から相手を圧倒することにフォーカスしたいです。

 

日頃から選手やコーチとも話をしていますが、作戦がどうだったとかあのプレーがどうだったとか細かい話はあまりせずに、もっと大きなところから逆算して、こうしなきゃいけない、という話をします。

勝ち方が分からなかった時には、とにかく1つずつ勝ちを積み上げていけば最後に勝てると思っていましたが、勝ちはそう簡単には最後まで積み上がらない。西地区優勝しても何シーズンもファイナルに行けず、ファイナルに行き勝利するための戦い方がある痛感しました。大きな目標に届くために、今為すべきことを決めていくのが大事です。「高い勝率で第1シードで」じゃなくて、勝率は別にしても「チームとして勝つ」負ける時も「チームとして負ける」ことを積み上げていき、最終的に目指すべき場所に届くことが大事なのです

とはいえ、開幕直後から激戦必至の対戦カードが続き、簡単に開幕ダッシュが達成できるようなカーディングではないですが、だからこそ試合を観に来てくださるお客様にとっても見ごたえのあるゲームをお見せできると思います。

 

 

そして、昨季沖縄に持って帰ることが出来なかった天皇杯は本気で獲りにいきたい。100回目の開催という節目となる年でもありますし、絶対に沖縄が獲るという強い気持ちで挑みたい。

 

さらに来季もEASLに参戦できます。昨季はEASLの戦い方が分からず、特に異国のアウェーでキングスはお客さんで終わってしまいましたが、EASLではアメリカ人なら誰でも知っているジェレミー・リンのような選手とも対戦出来る。そういった機会を選手たちにも大切にして欲しいですし、面白いゲームを魅せていきたい。年間を通してアジア各国リーグの優勝チームと対戦できるだけでも面白いリーグです。EASLが使っているボールがB.LEAGUEと違ったりルールが違ったり、勝手が違うことはありますが、それも含めて大いに楽しみたいです。我々が海外で試合をすることで、現地の人々に沖縄を知ってもらう意味でも、我々プロバスケットボールチームが海外に行くことはとても意味があると思っています。僕らは沖縄を代表する気持ちでプライドを持って海外で戦ってきます。

 

 

最後に、僕らはキングスのバリュー(価値)を向上させることを大事にしています。キングスのバリューを上げることでお客様も見に来てくださるし、グッズも買って下さる。キングスのバリューを上げるためには何が必要なのか。それは僕らが大事にする『キングスの文化』を大切にしなければならない。積み上げてきた『キングスの文化』があるから勝てるのです。
沖縄には先人を大切にする文化が根付いているからこそ、沖縄が沖縄らしくずっと残っている。僕らも自分たちの文化や価値をしっかり固めて、その上にバスケットボールの戦略戦術が練り上げられて、選手が輝き、そこにパッと勝利の花が咲く。『キングスの文化』を大事にしているからこそ、僕らは崩れることはないと思います。

 


 

ジュンさんは、NBAニュージャージー・ネッツ(当時)のフロントとしてまたNBA球団で唯一の日本人フロントスタッフとして活躍。ジェイソン・キッドらと共に2年連続でNBAファイナルを経験し、NBAのレジェンドプレーヤーであるビンス・カーターもネッツで共に仕事をした。

そして、琉球ゴールデンキングスの創業メンバーとして沖縄に移り住み、今や沖縄の生活の方がずっと長くなった。NBAで12年間、琉球ゴールデンキングスではもう18年目だ。「NBAならいまはネッツよりニックスを見ていますね。DICE(ニューヨーク・ニックスACを務める吉本泰輔氏)も頑張っているしね」とかつての自身と同じくアメリカで挑戦する者への応援も忘れない。『キングスの文化』を真剣に語るジュンさんは、沖縄を愛し、沖縄とキングス全てに関わる人たちを大切にする。そして、かつて若いころの自身がそうだったように挑戦する心を大事にする。コートで戦う選手だけではなく、キングスに関わる全ての人々が『キングスの文化』を大事にしているのだと実感できたインタビューだった。

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この記事を書いた人

地元で開催されるFIBAバスケットボールワールドカップ2023に貢献するべく奮闘中!
趣味はスポーツビジネス関連の研究。note、Twitterもフォローしてくれると喜びます。

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