Bリーグクラブの資本関係(B1東地区編)

 

2020年10月2日(金)に開幕する、Bリーグ2020-21シーズン

2020-21シーズンは、B1が20クラブB2が16クラブの計36クラブが東西2地区でリーグ戦を行います。

また、シーズン終了後にB2からB1に2クラブが自動昇格降格は無し、という今までとは大きく異なる方式で戦う事になります。

参照:B.LEAGUE 2020-21シーズン 地区分け・シーズン終了後の昇降格について発表 – B.LEAGUE(Bリーグ)公式サイト(2020年4月24日)

参照:B.LEAGUE 2020-21シーズンレギュレーションについて – B.LEAGUE(Bリーグ)公式サイト(2020年7月14日)

新型コロナウイルスの影響による観客数を大きく制限した試合開催が予想され、B1・B2各クラブとも厳しいクラブ経営が予想されています。

しかし、予想に反して多くのクラブが、特にB2クラブの大型選手補強が目立つ今オフとなっています。

状況が見通せない状況の中、この派手なオフの動きはBリーグ全体に新しい資本の参入が続いている事が大きな理由です。

 

ですが皆さん、そもそも今のBリーグクラブ経営にどんな資本(企業)が参加していているかご存じですか?

そしてコロナ禍の厳しいこの時期に、なぜBリーグに新しい資本が参入しているか理由は分かりますか?

 

今回は、Bリーグ各クラブへ資本参加している企業・人物の情報を整理して、その理由を推測していきましょう。

目次

Bリーグクラブの運営会社、親会社とは?

Bリーグの各クラブはB1、B2ともに「日本国籍を有する人物か日本国内の株式会社」にて運営されると規定されています(Bリーグ規約 第12,13条

なので Bリーグクラブ = クラブ運営会社である株式会社 であると言えます。

一般的には試合を戦う選手やコーチ陣を指して「チーム」と呼び、フロントと呼ばれる裏方まで含めて「運営会社」というイメージです。

そして、その運営会社の株式を保有している企業の事を「クラブの親会社(主要株主)」と呼びます。

親会社がクラブのスポンサー(パートナー)として名前がある場合もありますが、スポンサー = 親会社ではない事は注意しておきたい点です。スポンサーはあくまでクラブとの契約(スポンサー契約)です。

親会社である企業と子会社である運営会社の関係性は様々です。一般的な親子会社のように親会社の意向に大きく左右される場合もあるし、資本関係はあるがクラブ運営の決断は運営会社が独自で決めている場合もあります

 

株式情報は上場企業でない限り一般に公開される事はありません。クラブ運営会社は全て非上場企業です。

これから紹介する情報の正確性は保証できず、あくまで現在ネット等の情報から確認出来る内容に基づいています。

出来る限り参照リンクも張り付けていますので、ぜひそちらも確認してみて下さい。

2020-21 B1東地区のクラブ資本関係

チーム名 運営会社 スポンサー 親会社・主要株主
レバンガ北海道 株式会社レバンガ北海道 2019-20 正栄プロジェクト
秋田ノーザンハピネッツ 秋田ノーザンハピネッツ株式会社 2019-20 サノ・ファーマシー 等
宇都宮ブレックス 株式会社栃木ブレックス 2019-20 壮関
千葉ジェッツ 株式会社千葉ジェッツふなばし 2019-20 ミクシィ
アルバルク東京 トヨタアルバルク東京株式会社 2019-20 トヨタ自動車
サンロッカーズ渋谷 株式会社日立サンロッカーズ 2019-20 日立
川崎ブレイブサンダース 株式会社DeNA川崎ブレイブサンダース DeNA
横浜ビー・コルセアーズ 株式会社横浜ビー・コルセアーズ 2020-21 バディ企画研究所、横浜トヨペット、P・B・I、大手広告通信社
新潟アルビレックスBB 株式会社新潟プロバスケットボール NSGグループ
富山グラウジーズ 株式会社富山グラウジーズ 2019-20 富山県の有力企業複数

 

レバンガ北海道

北海道札幌市に本社を持ちパチンコチェーン店イーグルなどを運営する株式会社正栄プロジェクトが主要株主であり、クラブのメインスポンサーにも名を連ねています。

正栄プロジェクトの美山正広社長も各インタビュー記事でレバンガ北海道への情熱を熱く語っています。過去北海道にあったプロバスケクラブ「レラカムイ北海道」もサポートしていたようです。

参照:逆境を好機に。レバンガ北海道はさらなる躍進 | 財界さっぽろ

参照:逆風下のパチンコ業界で堂々の集客増 正栄プロジェクト 美山正広社長 | 財界さっぽろ

参照:インタビュー「明日を拓く」 日遊協 美山正広氏 – 一般社団法人 日本遊技関連事業協会

参照:存続の危機を乗り越えB1ライセンス交付、レバンガ北海道の折茂武彦「全ての皆様に感謝」 | バスケットボールキング

参照:クラブの破綻、漬物ビジネス転身の先に…レバンガCEO横田陽と折茂武彦の絆 – スポーツナビ

 

また、レバンガ北海道は「レバンガ北海道持株会」を設立し、個人団体及び企業から広く資金を募っています。過去5回の募集がありました。

参照:持株会募集 | レバンガ北海道

 

秋田ノーザンハピネッツ

秋田ノーザンハピネッツは、運営会社である秋田ノーザンハピネッツ株式会社の水野勇気社長が立ち上げたクラブです。

水野勇気社長はインタビュー記事の中で、立ち上げ初期の出資者として、薬局経営の株式会社サノ・ファーマシーの佐野元彦社長、ブライダル冠婚葬祭業の株式会社イヤタカの北嶋正社長、施設管理業の厚生ビル管理株式会社の加藤寛社長、この三者をあげています。

三者は現在でも秋田ノーザンハピネッツ株式会社の役員に名を連ねており、強い関係性を伺わせます。

参照:秋田プロバスケットボールクラブ株式会社・水野勇気社長|経営者タイムズ東北

参照:働きやすい職場を目指して | サノ・ファーマシーグループ 2019・2020リクルートサイト | 佐野薬局

参照:株式会社イヤタカ社長 北嶋正の会長日記: 河北新報「座標」記事 2010年10月18日)

 

宇都宮ブレックス

宇都宮ブレックスは、かつての親会社である株式会社リンクアンドモチベーションとは現在一切資本関係がありません。スポンサーにすら名前が無いのはとても珍しい事例です。

参照:株式会社リンクスポーツエンターテインメントの株式譲渡に関するお知らせ(2016年3月18日 株式会社リンクアンドモチベーション)

現在の筆頭株主は、食品会社である株式会社壮関の関雅樹会長です。運営会社の株式会社栃木ブレックスの会長でもあります。

参照:リンク栃木ブレックス運営会社に関するご報告 | 宇都宮ブレックス(2016年4月8日)

 

千葉ジェッツ

2019年4月14日、株式会社ミクシィは千葉ジェッツの運営会社である株式会社千葉ジェッツふなばしの子会社化を発表しました。

参照:ミクシィ、Bリーグ千葉ジェッツの実質オーナーに : 日本経済新聞(2019年4月14日)

参照:サービス・グループ会社一覧|企業情報|株式会社ミクシィ

ミクシィは2017年から千葉ジェッツと(XFLAGブランドとして)パートナーシップ契約を結び、関係性を深めていきました。そこからクラブ経営に乗り出しています。

またミクシィは2019年からプロ野球ヤクルトスワローズとトップスポンサー契約、JリーグFC東京ともスポンサー契約を結んでいます。

ミクシィはプロスポーツを事業の柱に据えようとしています。彼らの本気度に注目です。

 

アルバルク東京

アルバルク東京の運営会社であるトヨタアルバルク東京株式会社は、親会社のトヨタ自動車株式会社が90%出資している子会社です。ただし三井物産も10%出資しており、現在の運営会社社長である林邦彦氏は三井物産出身です。

参照;【アルバルク東京の運営団体として、新会社「トヨタアルバルク東京株式会社」を設立】 | アルバルク東京(2016年6月15日)

参照:アルバルク東京 林社長に聞くvol.1「それぞれの専門分野での経験をどうまとめ、結束力と付加価値をつけていくか」 – バスケット・カウント | Basket Count(2016年11月24日)

アルバルク東京は、前身であるトヨタ自動車男子バスケットボール部として1948年からの長い歴史があります。

先日、東京お台場にアルバルク東京のホームとなるアリーナ計画の報道がありましたが、この建設計画を立てている東和不動産もトヨタグループの一員です。

参照:【トヨタグループの東和不が計画】お台場パレットタウン(東京都江東区)を再開発、アリーナ建設へ ~ 日刊建設工業新聞ブログ(2020年7月3日)

世界の大企業であるトヨタ、そのグループの力を最大限活用してBリーグ最強軍団をバックアップしています。

 

サンロッカーズ渋谷

サンロッカーズ渋谷の運営会社である株式会社日立サンロッカーズは、株式会社日立製作所の子会社です。

参照;グループ会社一覧:国内:日立

運営会社の前社長である岡博章氏、現社長の浦長瀬正一氏も日立グループからの出向であり、今でも親会社である日立製作所と強い関係性にあります。

 

川崎ブレイブサンダース

2017年、川崎ブレイブサンダーズの運営会社(TBLSサービス株式会社)はそれまでの親会社であった株式会社東芝から株式会社ディー・エヌ・エーに売却、新たに設立されたDeNAの子会社である株式会社DeNAバスケットボールがクラブ運営会社になりました。

プロ野球横浜DeNAベイスターズを人気球団に押し上げたノウハウで川崎ブレイブサンダーズを積極的に改革、結果を出しています。

参照:2018-19シーズン以降のクラブ運営体制について | 川崎ブレイブサンダース(2017年12月6日)

参照:30億の赤字を20億の黒字にした男が挑む、「Bリーグ・川崎」アジアNo.1への道 – MONEY PLUS(2019年9月14日)

さらに2020年6月、株式会社DeNAバスケットボールと株式会社NTTドコモの資本業務提携が発表されました。筆頭株主はDeNAのままですが、NTTドコモという巨大企業もついにBリーグに参入してきた事になります。

参照:報道発表資料 : (お知らせ)川崎ブレイブサンダースとNTTドコモが資本業務提携およびオフィシャルスポンサー契約を締結 | お知らせ | NTTドコモ(2020年6月29日)

 

ちなみに、2017年東芝のクラブ売却先として当初有力だったのは、元横浜DeNAベイスターズ社長の池田純氏でした。2020年にB3さいたまブロンコスのオーナーとなった池田氏は3年越しのBリーグ参入という事になりますね。

 

横浜ビー・コルセアーズ

横浜ビー・コルセアーズの資本関係はとても複雑です。

bjリーグ初優勝直後の2013年にクラブの経営危機が発覚し、クラブ株式が創設者の廣田和生氏から、幼稚園やスポーツクラブを運営するバディ企画研究所へ過半数の株式が譲渡されます。

Bリーグ決算報告において横浜ビー・コルセアーズのユース・スクール関連収入が大きいのも、親会社がスポーツクラブ事業を運営している事が理由です。

また、自動車ディーラーの横浜トヨペット、アパレル通販が主軸である株式会社ピー・ビー・アイも運営会社である株式会社横浜ビー・コルセアーズへ資本参加しています。

参照:bjリーグ横浜、株主を一般公募 | スポーツ | カナロコ by 神奈川新聞(2013年06月28日)

参照:横浜トヨペット、プロバスケチームに資本参加 : 日本経済新聞(2018年12月5日)

参照:あのビーコルグッズを製造企画販売する会社とは?(2018年2月9日)

そして、前述のクラブ経営危機の際に球団運営を任されたのが広告代理店の大手広告通信社です。それ以降クラブの役員には大手広告通信社の岡本尚博氏や植田哲也氏が名を連ねています。

参照:プロバスケbjリーグ 横浜が運営全面委託、大手広告通信社に/神奈川 | スポーツ | カナロコ by 神奈川新聞(2013年5月27日)

参照:株式会社横浜ビー・コルセアーズ 新代表取締役就任のお知らせ | 横浜ビー・コルセアーズ(2019年7月1日)

クラブの保有と運営に多くの資本が絡み合っている、特殊なクラブと言えます。

 

新潟アルビレックスBB

新潟アルビレックスBBも特別なクラブです。

元々は2000年に日本リーグの強豪だった大和証券バスケ部の休部を受けて、Jリーグアルビレックス新潟を運営していた新潟総合学園(NSG)グループが同バスケ部の譲渡を受け入れて発足しています。

参照:NSGグループ支援法人 | NSGグループ

ここで面白いのは、アルビレックスというブランド名は共有していますが、JリーグとBリーグのクラブ等の各アルビレックスグループは別々の運営会社であり資本関係も無い点です。

NSGグループと各アルビレックスグループという縦のつながりである程度の資本関係・スポンサードはあるものの、新潟アルビレックスBBの運営会社である株式会社新潟プロバスケットボールは独立採算制で運営されています。

新潟アルビレックスBBの運営として特徴的なのが「後援会」組織です。ファンクラブとは別にクラブを財政的に支援する組織が後援会です。地域から「広く薄く」支援してもらおうという方針が反映されている組織形態と言えるでしょう。

参照:NIIGATA ALBIREX バスケットボール後援会 | 新潟アルビレックスBB

 

富山グラウジーズ

富山グラウジーズも紆余曲折のクラブ歴史があります。

クラブの始まりは2000年とやま国体に向けて地元開催での優勝を目指し選抜チームを結成見事国体優勝を果たします。その後サッカークラブを運営していた富山アトラスFCという会社を運営会社に2006年bjリーグに参入します。しかし2007年、その運営会社が経営危機となりクラブ運営から撤退します。

参照:No.220-2:「富山グラウジーズ」、bjリーグに参戦 | 富山の“今”を伝える情報サイト|Toyama Just Now(2005年 11月 2日)

参照:中日新聞 プロバスケbjリーグ グラウジーズ新体制で再出発 新体制で再出発:富山(CHUNICHI Web)(2007年5月15日アーカイブ)

その後は、地元富山の有力企業の出身者が株式会社富山グラウジーズの取締役に相次いで就任しており、特定の企業に支援されているというより「富山全体」で有形無形のサポートがされているのかな、という印象です。

参照:新取締役・新監査役の就任に関するお知らせ | 富山グラウジーズ(2019年9月10日 )

参照:グラウジーズ増資 8000万円調達、経営基盤強化へ|北日本新聞ウェブ(2020年2月3日)

クラブの始まりが地元の選抜チームだったという事は、確実に富山バスケ協会とも強いパイプがあるはずですし、Bリーグ2019オールスターやバスケ日本代表戦も誘致している事実から、自治体からのバックアップも伺えます。

 

次回はB1西地区、そしてB2の資本関係をまとめていきます。

そして最後にBリーグに新しい資本が参入しているか理由を分析していきます。

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この記事を書いた人

地元で開催されるFIBAバスケットボールワールドカップ2023に貢献するべく奮闘中!
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