2月4日(水)、東アジアスーパーリーグ(EASL)グループステージ、琉球ゴールデンキングス vs 桃園パウイアン・パイロッツがが沖縄サントリーアリーナで行われ、88 – 82でキングスが勝利した。
スコア結果だけを見れば接戦だが、その中身はキングスのアイデンティティが試される劇的な逆転劇であった。序盤、キングスはディフェンスのソフトさを突かれて主導権を握られたものの、セカンドユニットが注入したエネルギーによって、「守備からリズムを作る」というキングス本来のスタイルを再構築。立ち上がりの劣勢を力強く跳ね返し、アジアの強豪を相手に価値ある勝利を掴み取った。

前半:立ち上がりの苦戦とセカンドユニットの躍動 (1Q 21-27、2Q 25-22)
キングスのスターティングメンバーは、#17 崎濱秀斗、#10 荒川颯、#21 デイミアン・ドットソン、#45 ャック・クーリー、#53 アレックス・カーク。
キングスの立ち上がりは重く、ディフェンスの強度が上がらない隙に、桃園のスコアラーである#69 ルー・チュンシャンに主導権を握られた。#69 ルー は開始早々に3ポイントシュートやプルアップジャンプシュートを次々と沈め、桃園に流れをもたらした。桃園は第1クォーターだけでペイントエリア内から10得点を挙げる。しかし、クォーター中盤に桃園の主力#24 トレベオン・グラハムが負傷退場するアクシデントが発生。
試合のモメンタムを奪い返したのは、キングスのセカンドユニットだった。8 佐土原遼、#15 松脇圭志、#34 小野寺祥太がコートへ送り込まれると、ボールプレッシャーの強度が劇的に向上。#14岸本隆一が司令塔としての役割を果たし、自身の得点を狙うだけではなく、松脇の3ポイントなどを演出する。守備では小野寺がチームにディフェンスの基準を示し、チーム全体で粘り強く戦い、徐々に点差を詰める。 桃園#69 ルーは引き続き好調で、前半だけで21得点を許したが、終了間際に岸本が3ポイントシュートを沈め、キングス 46-49 桃園と3点差まで詰め寄って前半を折り返す。





後半:鉄壁のディフェンス強度を取り戻し、キングス逆転勝利 (3Q 25-22、4Q 17-11)
後半、キングスはスタートメンバーを岸本、小野寺、ドットソン、クーリー、カークに変更。第3クォーター序盤から激しいシーソーゲームとなり、キングスは小野寺や#8 佐土原遼の3ポイントなどで逆転に成功。 しかし桃園も#6 クアン・ダヨウの3ポイントや#21 アレック・ブラウンの得点で再び盛り返し、第3クォーターを71-71の同点で終える。
勝負の第4クォーター、キングスのディフェンスがさらに機能し、桃園の得点をわずか11点に抑え込む。 オフェンスではドットソンが第4クォーターだけで7得点の活躍。佐土原がオフェンスリバウンドからの得点や重要な3ポイントを決めるなど、セカンドユニットが躍動。キングスがリードを守り切り88-82で勝利した。
試合スコア:Ryukyu Golden Kings vs Taoyuan Pauian Pilots | Schedule & Results | EASL | Feb 4, 2026







主要選手のパフォーマンス
琉球ゴールデンキングス
#45 ジャック・クーリー & #53 アレックス・カーク:ペイントエリアで圧倒的な存在感を発揮。クーリーの16得点、カークの12得点という数字以上に、インサイドでの執拗なコンタクトが桃園の守備陣を疲弊させた意義は大きい。

#14 岸本隆一:14得点、5アシストを記録。ゲームを掌握するハンドリングに加え、要所での勝負強い3ポイントは、相手の反撃意欲を削ぐ決定打となった。

#8 佐土原遼 & #34 小野寺祥太:勝利の「Xファクター」となった。佐土原は驚異的なプラスマイナス値+21を叩き出した。守備では相手ビッグマンへ身体を張り続け、6点のセカンドチャンスポイントで勝利を手繰り寄せた。そして特筆すべきは#34 小野寺祥太の効率性だ。フィールドゴール3本すべてを成功(2PM:1、3PM:2)させる完璧なシュートセレクションで12得点を奪取。得意の守備でもルーズボールへの執着などキングス本来の守備を取り戻させた。彼らベンチ陣の爆発的な貢献が試合の流れを引き寄せた。


桃園パウイアン・パイロッツ
#69 ルー・チュンシャン:ゲームハイの32得点をマーク。キングスの執拗なマークに遭いながらも、アジア有数の得点能力を発揮。スコアを伸ばし続けたその実力は、沖縄サントリーアリーナに詰めかけたキングスファンにも、大きな衝撃を与えた。

勝敗を分けたキーファクター
セカンドユニットによるモメンタムの転換
キングスはスタートの出遅れをカバーしたセカンドユニットたちの守備への献身が、試合のモメンタムを大きく変えた。桃園の得点減であるルーへ執拗なプレッシャーと、全員のディフェンスローテーションで桃園にタフショットを強いることに成功した。

インサイドの支配とセカンドチャンス
キングスの強みであるリバウンドでの優位性を得点に直結させた。総リバウンド数では34-42と桃園に上回られたものの、セカンドチャンスポイントを積み重ねた。特に#8 佐土原遼による泥臭いセカンドチャンスポイントは、接戦の局面で桃園に大きな心理的ダメージを与えた。

勝負所でのタフショットと岸本隆一のゲームコントロール
接戦となった後半、琉球が決めきった「タフな3ポイントシュート」が大きな差となった。桃園のカミノスHCは敗因として、後半に「松脇、佐土原、小野寺にタフな3ポイントを決められたこと」を挙げた。また、試合の流れをコントロールし、重要な局面で得点を重ねた岸本隆一の存在感も大きかった。桃園のルー・チュンシャンは、「大事な場面でタフショットを決める能力が非常に高く、衝撃的な選手だった」と岸本をこの試合で最も印象に残った選手として挙げた。


ヘッドコーチ・選手会見の要約
琉球ゴールデンキングス 桶谷大HC、佐土原遼
Q:本日試合の総括
桶谷HC:出だしで相手の#69(ルー・チュンシャン)選手を警戒していたにもかかわらず連続得点を許し、一時は15点差ほどつけられてしまった。しかし、そこからディフェンスの強度が上がり、自分たちのペースに持ち込めた。相手のターンオーバーが少ない中で、我慢強くついていき、後半は33失点に抑えることができた。後半は良いボールムーブからオープンショットが打て、#69や#21(アレック・ブラウン)の3ポイントもしっかりケアできたのが勝因だと思う 。
佐土原:正直、試合の入りが悪かった。キングスは「まずディフェンスから」というチームだが、今日はスタートの選手たちがそれを体現できていなかった。しかし、バックアップ(控え)の選手たちがそれを体現して試合を戻してくれたことはチームとしてプラス。
Q:(佐土原選手へ)今日は3ポイントやアシストなど非常に存在感があった。天皇杯ではなかなか良さが出せなかった部分もあったが、今シーズンのEASLや天皇杯を通じて、特に外国籍選手が少ない状況下でどのように活躍するか、何か改善した点や意識した点はあるか?
佐土原:EASLだから改善したというわけではないが、レギュラーシーズンではビッグマンがエースとしてボールを持つことが多い。しかし、EASLではビッグマンがいない分、全員に平等にパスが回るし、全員で戦わないと勝てない。その中で、自分がアタックする、カッティングする、コーナーで待つといった「そのポゼッションで必要なこと」を遂行することを意識している。今日はオフェンスも良かったが、ここ数試合はまず「ディフェンスのトーンを上げる」ことを個人的に意識している。 今回も相手のポストプレーなどを防ぐことから入り、自分のリズムを作れているのが良い方向に進んでいる。
Q:(桶谷HCへ)第4クォーターの終盤、オフェンスが停滞した時間帯があったように見えたが、チームとしてどのように立て直したのか?
桶谷HC:第4クォーターの残り数分まで接戦だったが、あの時間帯に日本人選手が起点になれず、1対1や単調な攻めからターンオーバーが出てしまった。それに対してビッグマンがフラストレーションを溜める悪循環があった。ただ、今回の桃園戦の前にミーティングで「一度リセットしよう」と話していた。試合後も、日本人選手には責任を持つこと、ビッグマンには切れてはいけないことを伝え、お互いがSamePage(共通認識)に立てたと思う。今日は佐土原などがドライブから良いパスを出し、ボールと人の繋がりが見えたので、こうしたゲームを続けていきたい。
Q:(桶谷HCへ)次のホームゲームは約1ヶ月後(3月)となる。その間、代表活動などでチームが揃わない期間もあるが、この1ヶ月でどのようにチームを作っていくのか?
桶谷HC:まずは連戦で選手たちが疲弊しているので(特にジャック・クーリーやデイミアン・ドットソン)、しっかりと休ませることが最優先。その後、私(桶谷HC)や代表選手は抜けるが、残ったメンバーには新しいことよりも、ファンダメンタル(基礎)やチームコンセプトの基準(スタンダード)を上げる練習をしてもらうことが重要だと考えている。
Q:(両名へ)週の初めにチームに関する報道などでざわつき、心配される中での重要な一戦だったと思う。ただ、試合の入りで警戒していた選手に走られてしまった。集中はしていたと思うが、難しい展開になってしまった要因はどこにあったのか?
桶谷HC:正直に言えば、まだ力不足。若手も多く、システムを完全に理解しきれていない部分もある。練習でやってきたことを試合というカオスの状況下で遂行する力がまだ足りない。「#69を守ろう」と言ってもコミュニケーションミスやクローズアウトの甘さが出る。こうした課題を練習で一つひとつクリアしていくしかない。
佐土原:集中していなかったわけではないが、コーチ陣が「#69を抑えること」を優先順位として示していたにもかかわらず、チームとして、あるいはマッチアップする選手がそこに対するフォーカスや重要視する姿勢が足りなかったのかもしれない。必死にやってやられるならまだしも、簡単にやられてしまっていたので、そこは責任感を持って「やられたくない」という気持ちを前面に出すべきだった。
Q:(両名へ)これでグループリーグ突破に大きく前進した。来週のアウェイでのメラルコ・ボルツ戦に勝てば1位突破となるが、どのようなマインドで臨むか?
桶谷HC:勝つことが全て。5勝1敗で1位通過すればシード権(セミファイナルからの出場)が得られると思うので、得失点差なども確認はするが、まずは勝って1位通過を目指す。
佐土原:勝つ以外にない。個人的には、EASLは日本代表活動にもつながる貴重な経験(海外のフィジカルな選手との対戦など)として大事にしている。まずはチームの勝利が最優先だが、自分自身も外国籍選手につくチャレンジなどを続けながら、勝ってファイナルへ進み、有利なシード権を取りたい。
Q6.(桶谷HCへ)今日は守備の強度が上がってから自分たちのペースになったとのことだが、ファウルトラブルや普段と違うジャッジ基準がある中でアジャストできた要因、あるいは貢献したユニットはどこか?
桶谷HC:今日はセカンドユニット(控えメンバー)の貢献が大きかった。佐土原、松脇、小野寺、アレックス(カーク)、岸本の5人が出ていた時間帯が一番安定していたし、得失点差(+/-)も良かった。スタメンのジャックやドットソンが疲れを見せていた中で、セカンドユニットが奮起してくれた。ファウルに関しては、最初は戸惑いもあったが、レフェリーの基準に徐々にアジャストし、後半は激しくいってもファウルにならなかったりしたので、それを最初から遂行する必要があると感じている。

桃園パウイアン・パイロッツ ユーギ・カミノスHC、ルー・チュンシャン
Q:本日試合の総括
ユーギ・カミノスHC:一言で言えば非常にタフなゲームだった。まず、沖縄アリーナに駆けつけてくれた約200名の台湾のファンに感謝したい。素晴らしいサポートだった。試合については、クーリー選手をはじめとするオフェンシブなチームだと分かっていた。前半はペイントエリアをうまく抑えて良い戦いができたが、後半に松脇選手、佐土原選手、小野寺選手にタフな3ポイントを決められてしまった。リードしている場面でも良くない決断やショットが続き、最終的に逆転されてしまった。ただ、次のメラルコ対琉球戦の結果次第ではあるが、昨シーズン準優勝で終わった悔しさがあるため、ファイナルズへ向けてしっかり準備していきたい。
ルー・チュンシャン:沖縄という素晴らしい環境と雰囲気の中で、琉球という強いチームと対戦できて幸せだった。試合に関しては、琉球のディフェンスのプレッシャーにかなり苦戦した印象がある。また、第1クォーターでチームメイト(トレベオン・グラハム)が負傷してしまったことは非常に悲しい。勝利できなかったのは残念だが、次に向けて頑張りたい1。
Q:(ルー・チュンシャン選手へ)昨シーズンと今シーズンのEASLで素晴らしいパフォーマンスを見せており、日本のファンにもその得点力が認知されている。将来的にBリーグに挑戦したいという気持ちはあるか?
カミノスHC(横から):(冗談交じりに)彼はパイロッツでプレーしてほしいから、引き抜かないでほしい。パイロッツがBリーグプレミアに参加できるようにすればいい。Mr.シンジ シマダにそう伝えてくれ(笑)
ルー・チュンシャン:まずはパイロッツで勝利することにフォーカスしている。ただ、将来的にチャンスがあれば、このような日本の素晴らしい環境でプレーしてみたいという気持ちも同時に持っている。現時点では(どうなるか)分からない。
Q2.(カミノスHCへ)昨シーズンのファイナル4、そして今シーズンの10月の対戦(台湾でのゲーム)では桃園が勝利している。今回初めて沖縄アリーナでのアウェーゲームとなったが、これまでの試合と比べて印象はどう違ったか?また、どのあたりが難しかったか?
カミノスHC:ホームとアウェーでは本当に大きな違いがある。沖縄サントリーアリーナの雰囲気、ファン、選手が一体となって作り上げる空気に圧倒された。特にキングスファンのサポートが非常に大きく、その中でプレーできたことは幸せだが、試合としては難しかった。ただ、今回は台湾からのファンも多く、彼らの声援が我々に良い流れを作ってくれた時間帯もあった。ファンの力はすごいと改めて感じた。
Q3.(ルー・チュンシャン選手へ)今日は32得点を決めたが、マッチアップした小野寺祥太や脇真大など多くのディフェンダーがついた中で、特に対戦して印象に残った選手は誰か?
ルー・チュンシャン:一番印象に残ったのは岸本隆一選手。彼はチームの主力でありポイントガードとしての役割を果たしていたが、大事な局面でタフショットを決めたり、得点を重ねたりする能力が非常に高く、私としては衝撃的な選手だと改めて感じた。


次戦への展望
キングスにとってこの逆転勝利は、グループステージ突破へ向けた確かな一歩となった。昨シーズンのEASL4位という悔しさを晴らすため、琉球ゴールデンキングスにとって東アジアの頂点は譲れない目標である。
EASLファイナルズ進出の行方は、グループ内のライバルであるメラルコ・ボルツとのグループ最終戦の結果が文字通り「鍵」を握ることになる。桃園は直接対決や得失点差の関係でグループリーグ突破を決めており、残る1枠をキングスとメラルコ・ボルツが争う。キングスが勝利すればグループ1位で突破決定。敗戦でも5点差以内なら2位突破となる。しかし6点差以上の敗戦なら、逆転でボルツが2位突破となり、キングスはグループリーグ敗退となる。
今節で見せた「控えメンバーの突き上げ」と「盤石な第4クォーターのディフェンス」を維持し、次なる戦いでもキングスのアイデンティティを証明しなければならない。「沖縄を世界へ」を掲げる琉球ゴールデンキングスにとって、東アジア最強の称号は絶対に掴み取りたいタイトルだ。沖縄サントリーアリーナで示された結束力を武器に、次戦も総力戦で勝利を掴み取る。
(取材:金谷康平、構成・写真:湧川太陽)



