B2を超える『頂上対決』 福井ブローウィンズ vs アルティーリ千葉 [2024.12.28-29]

12月28日(土)、29日(日)、B2リーグ東地区の上位対決 福井ブローウィンズ vs アルティーリ千葉 が福井県のセーレン・ドリームアリーナで行われた。

福井ブローウィンズは昨季B3を46勝4敗、ホームゲームを全て勝利してB3制覇。チーム創設2年目の今季はB2に戦いの場を移した。しかしB2は新規チームが簡単に勝ち続けられるほど甘くはなかった。前節の時点で17勝9敗でB2東地区3位。直近はチーム初の3連敗と調子を落としていた。

そしてアルティーリ千葉は、ここまで25勝1敗という脅威的な強さでB2東地区首位を独走中。しかしその唯一の黒星を付けたのは福井ブローウィンズ。11月の今季初対戦では福井のホームゲームで敗戦。アルティーリ千葉はその唯一の黒星からまた白星を重ね続け、12連勝で再び福井の地へ戻ってきた。

ホームの声援を後押しに福井が再び勝利するか。A千葉が前回の雪辱を晴らして独走を加速するか。寒空の福井で、今季B1への昇格争いを占う2連戦が幕を開けた。

目次

GAME1 A千葉の激しい守備にホームで敗れる福井

1クォーター、福井は#0 細谷 将司の3ポイントや#16 渡辺 竜之佑のオフェンスリバウンドからの得点で先手を取る。さらに#30 ペリー・エリスが高い身体能力を活かし得点を重ね、ディフェンスでもその跳躍力でA千葉にプレッシャーをかける。

しかしB2首位を独走するA千葉は、焦る事無く自分たちの攻撃的なディフェンスと素早い攻撃を遂行。A千葉は最初の10分間でファストブレイクポイント10得点を記録。1クォーターは21-20と福井1点リードで終える。

2クォーター最初のプレー、福井はA千葉の厳しいプレッシャーにターンオーバーで失点。福井の伊佐ヘッドコーチはタイムアウトで立て直しを図るが、A千葉のプレッシャーディフェンスにリズムを取り戻せず、残り6:52までに24-35とA千葉が11点リードと引き離す。福井も#12 西野 曜のダンクなどで流れを押し戻すが、2クォーター終了直前にA千葉はフリースローやセカンドチャンスで連続得点。47-52とA千葉5点リードで前半を終える。

3クォーター、A千葉は福井のスキを見逃さずスティールから得点。徐々に離れていく点差に、福井のオフェンスは連動性が影を潜め、単発の難しいシュートを繰り返す。3クォーター終了時には61-77とA千葉のリードは16点まで広がる。

寒空の中セーレン・ドリームアリーナに詰めかけた福井ブースターの応援が鳴り響くが、福井は試合のリズムを取り戻す事なく、逆にA千葉は最後まで攻撃的なディフェンスでその強さを見せつけた。注目のGAME1の最終スコアは75-100、A千葉が今季8度目の100点ゲームで連勝を13に伸ばした。

試合スタッツ:りそなグループ B.LEAGUE 2024-25 B2リーグ戦 2024/12/28 福井 VS A千葉 | B.LEAGUE(Bリーグ)公式サイト

 

勝利したA千葉のアンドレ・レマニス ヘッドコーチは「互いにテンポの早いバスケットボールをするチームだが、我々は良いエナジーで試合を進めることが出来た。前半は我々のトランジションディフェンスが良くなかったが、後半は自分たちのあるべきディフェンスのレベルを遂行出来た」とチームの出来に及第点を与えた。

「福井のアグレッシブなディフェンスに対応出来るように、自分たちのオフェンスを準備してきた」と唯一の黒星をつけた福井を警戒して準備していたと語り、「前回この福井のホームコートアドバンテージのある雰囲気に圧されたので、そのプレッシャーの中でも自分たちのやるべき事を遂行する準備をしてきた」と福井のファンが作り出すアリーナの雰囲気こそが最大の脅威だったと語った。

敗れた福井の伊佐勉ヘッドコーチは「前半は何とかA千葉についていけたが、彼らのカッティングやドライブを全く止められず、ターンオーバーやセカンドチャンスからの失点というA千葉の強みも止められなかった。明日のGAME2にもう一度ファイト出来るようにしっかり準備したい」と語った。

チーム創設初の4連敗について「オフェンスでアウトサイドシュートが入っていない事が苦しい要因だが、それでも勝利できるようにペイントエリアへのアタックでファウルを奪ったり、アウトサイドシュートの流れがくるまで繋いでいけるようにしたい」と苦しい状況でもチームを上向かせるための課題を語った。

 

福井ブローウィンズというチームにとっても、そしてチームを支えてきたファンブースターにとっても、4連敗という状況は初めて味わう『試練』だ。だが伊佐ヘッドコーチは、琉球ゴールデンキングスが全く勝てなかったチーム創設期の経験から、その『試練』が次の『勝利』へ必ず繋がると誰よりも知っている。

「4連敗はチームにとっても福井にとっても良い事ではありません。連敗は経験したくないことではありますが、プロの試合では当たり前にあることです。我々は1試合でも早く連敗を止めなければいけませんが、ファンの皆さんの声援は全く止むことは無く一生懸命に応援してくださっています。それに応えられるようにチームは今が踏ん張り時だと思っています。ファンの皆さんにもチームの後押しをして欲しいです」

 

記者会見を終えると、曇り空だった福井の空に雪が降り始め、試合の熱を冷ますようにアリーナは雪化粧を始めようとしていた。

 

GAME2 ホームの大歓声に後押しされ、福井がA千葉に2度目の勝利

翌日、福井の街は雪で覆われていた。朝の気温は0度。みぞれ混じりの雪が降り続く。

かじかむ指先をポケットに突っ込みながらバスが試合会場に到着すると、そこには雪化粧のアリーナと、福井を支えるファンブースターの長い行列があった。会場前から並んでいたであろう多くの人々。この日の観客数は3700人を超えた。家族連れも多く、その顔に悲壮感は無く、チームを支え、ゲームを楽しみたいという笑顔ばかりだった。

 

支え続けてくれるファンブースターを前に、勝利を目指して戦い続ける姿を見せたいブローウィンズ。ファンと共にファイトするその姿勢は、GAME2開始直後から相手を飲み込んだ。

 

1クォーター、福井は#14 木村 圭吾のフェイドアウェイジャンパーで先制点を奪うと、木村は立て続けに3ポイントも決める。ファイトするチームにアリーナの大観衆も歓声をあげる。

福井はディフェンスでもGAME1の課題を克服。簡単なターンオーバーを減らし、ディフェンスリバウンドも奮闘。1クォーターのA千葉のターンオーバーからの得点、セカンドチャンスポイントをともに1得点に抑える。1クォーター終了時のスコアは、木村の10得点の活躍もあり、22-19と福井が3点リード。

 

2クォーター、A千葉は新人PGの#3 黒川 虎徹がミドルジャンパーを決めて1点差とする。しかし福井はリズムを崩さず、逆にアグレッシブなディフェンスでA千葉に簡単なシュートを許さない。

互いに集中力高いバスケットで一進一退の攻防の中、福井は途中出場の#12 西野 曜がファストブレイクからバスケットカウントを奪い、福井ベンチも総立ちになる。西野は3ポイントも決めて2クォーターだけで8得点。前日のGAME1とはまったく違うホームチームの姿に、アリーナの観客にも完全に火が点く。2クォーター終了時のスコアは、50-44と福井が6点リードで折り返す。

 

3クォーター、福井の勢いは続く。A千葉のターンオーバーからエリス、渡辺、#34 ベンジャミン・ローソンと3連続でファストブレイクから得点。クォーター開始1分半でスコアを58-44と福井14点リード。さらにシューター#0 細谷 将司の3ポイントが決まり、61-46と福井のリードは15点まで広がる。

しかしA千葉はアリーナの熱気に飲まれる事を断固拒否する。ベテランシューター#24 大塚 裕土が2連続で3ポイントを決め、A千葉は息を吹き返す。

福井ブローウィンズの背番号0、アルティーリ千葉の背番号24。それぞれの創設メンバーでもあるベテラン同士の意地が火花を散らす。3クォーター終了時のスコアは、68-64と福井4点リードで試合は終盤を迎える。

 

4クォーター、ホームの勝利を信じるアリーナの大歓声に後押しされて、福井がもう一度流れを掴む。A千葉の厳しいディフェンスに一歩も引かず、逆にファウルを奪い優位に試合を進める。福井は#4 ライアン・ケリーのミドルジャンパー、そしてターンオーバーから#6 長谷川 智伸が得点と、74-67と福井が7点リードする。

A千葉も#16 大崎 裕太の3ポイントで得点を繋ぐが、残り6分半でチームファウルが5つを超え、福井にフリースローの機会を与えてしまう。ファウルトラブルから自分たちのディフェンスを遂行出来ないA千葉の焦りを見逃さず、福井は相手のターンオーバーから細谷がファストブレイクで得点する。試合のクロックが進み、アリーナには昨日の雪辱への期待が充満する。

美しいシュートフォームでアリーナを沸かせ続けた木村 圭吾。背番号14が左45度からこの試合4本目の3ポイントを射抜いた瞬間、アリーナは勝利を確信してこの日一番の大歓声が弾けた。残り3:17で88-77と福井が11点リード。

決して試合を諦めない両チームは、最後まで足を動かし続けて勝利を目指す。最終スコアは97-84。B2のレベルをはるかに超える『頂上対決』となったGAME2は、ホームアリーナの大声援に支えられた福井が勝利して、A千葉に今季2度目の土を付けた。

 

4連敗を最高の形で脱したチームの勝利に、伊佐ヘッドコーチは「皆さんのおかげで連敗脱出することが出来ました。良いお年を!」と激闘と締め括った。

試合スタッツ:りそなグループ B.LEAGUE 2024-25 B2リーグ戦 2024/12/29 福井 VS A千葉 | B.LEAGUE(Bリーグ)公式サイト

 

Bプレミアを席巻するか 恐るべきアルティーリ千葉

同じ相手に今季2度目の敗戦を喫したアルティーリ千葉。レマニスヘッドコーチは「素晴らしい2チームが素晴らしいエナジーで試合をした。福井も素晴らしいシュートを決め続けたし、自分たちもハードワークを怠らなかった。福井のファンが作り出すこの素晴らしい環境で試合が出来たことは良い経験になった」と敗戦にもどこか満足げな表情で語った。

アルティーリ千葉は2026-27シーズンから始まる『Bプレミア』への参入が決定している。もちろん今季B2で優勝して、現行シーズンで最後となる来季B1の舞台で戦うことが彼らの目標だろう。

ただこの2試合を見る限り、アルティーリはすでにB1でも互角に戦っていけるだけの実力を有している。いやそれどころか、これだけのエナジーを80分間持続し続けるチームは、B1でも中々お目にかかれない。特に日本人選手の連動性、運動量は素晴らしいの一言に尽きる。

レマニスヘッドコーチに、アルティーリ千葉のバスケットボールがBリーグにどんなインパクトを与えられるかと質問すると、「自分から誰かへの影響を言及することは出来ないが」と断りを入れつつ、「一般的には、あるチームが成功を収めればそのオフェンスの形態やディフェンスメソッドは、他チームもそれを分析して、参考にすることはあるでしょう。すべてのヘッドコーチと話をしたわけではないが、我々のオフェンスやディフェンスのコンセプトが他チームでも使われることもあるだろうね」と冷静に答えてくれた。

 

強さを見せつけたアルティーリ千葉のなかでも、非常に強い印象を残した選手は、175cmの新人ポイントカード #3 黒川 虎徹だ。東海大学では同学年だった河村勇輝とチームメイトとして鎬を削り、4年次にはキャプテンとしてインカレ準優勝に導いた。昨季1月に特別指定選手としてアルティーリ千葉に入団。新人としてフルシーズンに挑む今季は、ベンチスタートながら2桁得点をあげる試合も多く、その硬いディフェンスはアルティーリ千葉のプレースタイルと完全にマッチしている。

この福井との2連戦でも、GAME1は14得点、GAME2は8得点8アシストと存在感を見せた。彼のハイライトはGAME2の1クォーター最後のプレーだった。冷静に残り時間を確認すると、マークマンの細谷を振り切りペイントエリアに侵入。福井ディフェンス4人の視線を惹きつけると、絶妙なロブパスを飛ばしてトレイ・ポーターへのアリウープをお膳立てした。あの熱気の中で、残り数秒のプレーを冷静に完結させるその洞察力はコートで輝いていた。

後に『河村世代』と呼ばれることになるだろう23歳のポイントガード黒川 虎徹。彼がアルティーリ千葉を率いて、Bプレミアの舞台を席巻するかもしれない。

 

必ずB1昇格して沖縄アリーナでキングスと戦う

GAME2 ゲームハイの27得点をあげた福井の木村 圭吾は「4連敗したことが後半戦にどう影響するかは分からないが、連敗を止めて新しい気持ちで2025年の戦いをスタート出来るのはチームの雰囲気が全然違うので、2024年最後の試合を勝利で締めくくれて良かった」と笑顔で話してくれた。

 

この日アリーナを沸かせ続けた木村も、チームそしてファンブースターがB1を目指してひとつになり成長していることを肌で感じていた。昨季はB1群馬でプレーした木村は「自分がシュートを決めた瞬間は試合に集中していて分からないけど、他の選手がシュートを決めた時の大歓声や、アリーナの演出も含めてファンの方々の熱量は、B1のアリーナに匹敵する凄さだと感じましたし、B1でプレーしていた時と同じ感覚でプレー出来ました」と話した。

 

ホーム最終戦を勝利した伊佐ヘッドコーチは「ベンチ外の選手含めて13人全員が一瞬も気を抜かず、40分間アルティーリ千葉さんと戦い続けられたのがチームにとって大きかった」とこの勝利が大きな経験になると語った。

しかし指揮官は勝利に浸ることなく、その次を見据えてた。「この集中力をどうやったら続けられるのか。4連敗したから、相手がアルティーリだから、それが理由では勝ち続けていくのは難しい。この厳しいB2の舞台は、どのチームとやっても負ける可能性があるし、実際に4連敗した。一人ひとりが試合に挑むメンタルを整える必要があるし、それを見ていくのが僕の役目なので、練習から良いメンタルを整えていきたい」と語った。

 

シーズン開幕前の9月、福井ブローウィンズは沖縄アリーナで琉球ゴールデンキングスとプレシーズンゲームを戦った。キングスとブローウィンズはともにプレシーズンゲームとは思えないプレー強度で、沖縄アリーナのファンを沸かせた。

「プレシーズンゲームで琉球さんと試合をさせて頂き、B1のプレー強度をシーズン前に体験した事は、その舞台を目指す僕らにとって非常に大きかった。『あのプレー強度を忘れないようにしよう』と話し合い、実際に練習時の強度も上がっていった」と伊佐ヘッドコーチはキングスとのプレシーズンゲームがチームの成長のきっかけになったことを強調した。

 

伊佐ヘッドコーチをはじめ、沖縄県出身の渡辺 竜之佑、過去キングスに在籍した長谷川 智伸や小寺 ハミルトンゲイリーが揃うブローウィンズは、沖縄のバスケファンにとっても親近感を覚えるチームのひとつだ。

そんな沖縄のバスケファンへのメッセージをお願いすると、「沖縄にブローウィンズファンがいるか分からないですけど」と笑いつつ、「ブローウィンズの目標はB1昇格ですので、『必ず沖縄アリーナで公式戦をキングスと戦う』ことを目指して、日々ここ福井で頑張っています。キングスの応援のついでに、少しでも福井ブローウィンズを応援してくれたら嬉しいなぁと思います。福井は美味しい食事も沢山あるので、ぜひ沖縄からも応援にいらしてください。寒いですけどね(笑)」とムーさんらしい茶目っ気ある笑顔で話してくれた。

 

雪が降り積もる冬の福井。ブローウィンズは支え続けるファンと共に着実に成長を続けるだろう。そうすれば、アリーナに降り積もった雪が溶ける5月には、間違いなく『風』が吹くはずだ。

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この記事を書いた人

地元で開催されるFIBAバスケットボールワールドカップ2023に貢献するべく奮闘中!
趣味はスポーツビジネス関連の研究。note、Twitterもフォローしてくれると喜びます。

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