今こそ、信じる時 琉球ゴールデンキングス vs シーホース三河 [2026.03.11]

2026年3月11日(水)、琉球ゴールデンキングス vs シーホース三河が沖縄サントリーアリーナで行われ、70-79でアウェーの三河が勝利した。

CS(チャンピオンシップ)順位を争うライバル、シーホース三河との直接対決。レギュラーシーズンの最終順位を左右する重要な一戦は、キングスにとって手痛い敗戦となった。

目次

盤石の立ち上がりと忍び寄る綻び

1クォーター、キングスはヴィック・ローの先制点や、崎濱秀斗のペイントタッチからのキックアウトを受けたデイミアン・ドットソンの2本の3ポイントシュートなどで、開始5分足らずで16-5と11点のリードを奪う。ディフェンスでは三河のエース西田優大に対し、ショーディフェンスでパスを選択させるなど狙い通りの展開を見せた。

しかし、三河がガードを久保田義章に交代させると状況が一変する。久保田はキングスのショーディフェンスを逆手に取り、大きく旋回するドリブルでジャック・クーリーを外側へ誘き出してパスを通し、あるいはスクリーンをリジェクトして自らレイアップを決めるなど、キングスの守備を攻略し始めた。さらに三河は徹底した早いボールプッシュを展開し、キングスは自分たちのリズムでディフェンスをセットできず、ローテーションに綻びが生じ始める。1クォーター終了時点で22-13とリードは保つものの、主導権を握りきれない嫌な空気が漂った。

我慢比べの2クォーター、痛恨の3クォーター

2クォーター、三河の素早いボールプッシュがボディーブローのようにキングスのフットワークを削っていく。マッチアップの遅れを突かれ、ガードナーやケネディ、須田侑太郎に次々と3ポイントを許し、残り45秒で36-36の同点に追いつかれる。40-36と辛うじてリードして前半を終えるが、勢いは三河にあった。

3クォーター序盤、その懸念が現実となる。西田のバックドアカットや3ポイントなどで一気に逆転を許し、0-7のランを喫する。特に西田の3ポイントに対し、マークマンのドットソンがクローズアウトしない『怠慢なプレー』が三河を完全に勢いに乗せた。点差を10点に広げられたキングスは、三河の2-3ゾーンに対しローが孤軍奮闘。終了間際にローの3ポイントが決まり、56-56の同点で最終クォーターへ望みをつなぐ。

攻略された守備と突き放された終盤

4クォーター、明暗を分けたのは『遂行力』の差だった。三河のレイマンが3ポイントを決める一方、岸本隆一や松脇圭志の放ったショットはリングに弾かれる。さらに三河は、迷いの生じたキングスのショーディフェンスを完全に無力化。久保田のプルアップ3ポイント、さらにはガードナーのショートロールからのキックアウトで、ケネディに決定的な3ポイントを許した。

最終スコアは70-79。三河との対戦成績は1勝3敗となり、CSに向けた厳しい現実を突きつけられる結果となった。

試合スタッツ:りそなグループ B.LEAGUE 2025-26 B1リーグ戦 2026/03/11 琉球 VS 三河 | B.LEAGUE(Bリーグ)公式サイト


自滅ではなく、完敗

桶谷大HCは、試合後の記者会見で「3クォーター最初のプレー強度が軽く、相手に簡単にショットを許してしまった。完全に自滅」と敗因として後半開始直後の連続失点を挙げた。「連続失点してからタイムアウトを取っても、ただ慌てて『弱者の戦い』をしてしまったのが一番の問題。メンタル的な準備ができておらず、冷静にやるべき事をやれる状態ではなかった」「勝敗の前に、まず『やるべきことをやる』必要がある」「練習中から確認事項ができていない選手も何人かいて『慢心』があった」と自チームの勝利へ向かう姿勢を厳しく叱責した。

指揮官の話す内容は理解できる。今日の試合内容からすれば、ドットソンのディフェンスに対する姿勢は、私の目には『慢心』と映った。その他にもディフェンス強度に疑問の残る場面は何度かあった。

ただ、なぜ西田だけではなく、久保田にまでショーディフェンスを敢行したのか。采配への疑問は拭えない。ボールハンドラーに対して2人でプレッシャーを仕掛けるショーディフェンスは『強度』という意味では見栄えがいいが、どこかでは必ず数的不利が発生するリスクのある戦術だ。

久保田の実力を軽く見ているわけではない。しかし、ベンチに座る西田に、キングスのショーディフェンスを『見せてしまった』事実は否定できない。ボクシングに例えるなら、早いラウンドから勝負パンチを何度も繰り出して、相手にパンチの軌道を教えてしまったようなものだ。

キングスは前節の島根戦で岡田侑大へショーディフェンスを使っており、三河は『ショーもある』と事前にスカウティングしていたはずだ。西田ほどの実力なら、そのスカウティング結果とベンチからの見極めで、後半キングスのショーディフェンスに代償を払わせることは、そう難しい作業ではなかっただろう。

逆に、三河の執拗なボールプッシュは、キングスにとってはまるでボディーブローのように、ダメージが蓄積されていった。いくつかのポゼッションではハーフコートの守備強度で守り切ったとしても、いつ速攻で突破されるか分からないプレッシャーは、キングスの選手たちの精神的なスタミナを削り取り、冷静な判断ができなくなっていたかもしれない。桶谷HCは「コート上で冷静な判断ができていなかった」と語ったが、三河の『素早いボールプッシュ』に対して、キングスが試合の中で適切な対応をしていたようには見えなかった。

三河オフェンスに切り替わった瞬間、ポールプッシュを遅らせるよう、キングスのディフェンダーがバックコートでボールマンへプレッシャーをかける場面は、残念ながらほぼ無かった。相手をゴール側へ押し込んでオフェンスリバウンドを狙いつつ、ファストブレイクを妨害する『タグアップ』も、相手を押し込むのか、インサイドポジションを狙うのか中途半端な判断が多く、逆に三河のボールプッシュが始まる瞬間に、ボールラインより後ろにキングスの選手が複数いる場面が散見された。

キングスがこの日採用したオフェンスアライメント(選手配置)も、三河のボールプッシュと相性が最悪だった。キングスのハーフコートオフェンス開始時、両ウイングはコーナーステイを強調しており、ミドルラインからのハーフコートオフェンスの仕掛けが多かった。おそらく狙いとしては、三河ディフェンスがペイントエリアを厚く守ってくる事を予測して、両コーナーをワイドに広げることで、インサイドアウトから三河ディフェンスを無力化させたかったのだろう。だが両コーナーがコーナーステイをするということは、三河がディフェンスリバウンドを保持した瞬間、キングスのディフェンスラインが『より深い位置』からスタートする事を意味する。より平面的に、より少ない得点チャンスで戦術を思考するサッカーなら、ボールロスト直後のディフェンススタートラインをどこに設定するかは、勝敗を分ける最重要ファクターになる。

もう少し言うならば、両コーナーの深さを強調したキングスが放ったコーナー3ポイントは、わずか3本。これは今季平均の約4.6本よりさらに少ない。アライメントで強調したはずのコーナーを活かせず、三河ディフェンスに混乱を生むことはできなかった。

『タグアップ』とも関連するが、オフェンスアライメントは、そのままひっくり返してディフェンスアライメントとなる。キングスは常に『アウトナンバー(数的不利)』の状況が発生する可能性と隣り合わせのまま、オフェンスを展開していた。

コートで発生した事象の『前』の『前』まで遡って修正できていれば。だが、コート上での瞬間的な判断や、戦局を俯瞰で見据えた上での戦略も含めて、それがチームの実力だ。自滅ではなく、完敗だ。


この敗戦を、次の長崎戦に勝利するために

試合後の記者会見、岸本隆一はいつも通りだった。もちろん悔しさはあっただろうが、敗戦を引きずらず、冷静にチームの置かれた現状を言語化した。

「今日の敗戦の『痛さ』は、どちらかというと順位の部分。シーズンの先を見た時、この1敗が大きく影響する可能性があるという痛さはもちろんある」「ただ、今日起こったことに関して言えば、僕はチームがそこまで『レイジー(怠慢)』だったとは思わない。純粋に相手が上回っていた部分もあったと感じた。自分たちのチームディフェンスが機能すれば止められるという感覚もあるので、そこまで悲観的ではない」

「ただ、これから負けられない状況が続く中で、今日の試合は絶対に活かさなければいけない。連続でやられないこと、そして『どうやられたか』に危機感を持つことをもっと徹底すべき」「オフェンスで点が入っていない時にどういう現象が起きているのかを早めに察知し、みんなで共通理解を持つことも今日の試合から学ばなければならない。自分たちがより良くなっていけば取り返せると信じて、最後まで突っ走るだけです」

とはいえ、週末に対戦する長崎ヴェルカは、リーグ首位を独走し続ける強敵であり、彼らのチーム3ポイント成功数、成功率ともにリーグトップだ。この日敗れた三河より、より速く、より正確に、より多くの3ポイントの雨を降らせようとするだろう。キングスがこの日見せたディフェンスローテーションの精度では、取り返しのつかないダメージを食らう場面しか見えてこない。長崎に勝利するためには、どのように対応すべきなのか。

私の質問に、岸本は一呼吸置いたあと、彼の頭の中で見えている、この日の試合のイメージを反芻しながら言語化してくれた。

「今日3ポイントをやられた場面は、インサイドの選手が外に引っ張り出される『5アウト』の状況が多かった。長崎も似たような状況が多いと思うので、今日の試合の守り方を活かすべき。 1つ目の展開を止め、2つ目を止め、本来なら3つ目まで準備してきているはずだったが、僕らも人間なので1個目を止めた時、ふっと力が抜けてしまい、その後についていけなくなることがあった」

「もちろんキーとなる選手はいるが、『その人を止めたからOK』ではなく、1つのポゼッションを最後までチームディフェンスとして連動し続けて守り切る意識が、長崎戦の大きなポイントになる。相手は機動力のある選手たちでスペーシングをしてくると思うので、そこを自分たちも機動力とチームディフェンスでしっかり抑えられるようにしていかなければいけないと思います」

岸本は、経験を重ねて、試合を楽しむことが上手くなった。このプレッシャーのかかる状況を、楽しみながら勝利を目指している。

「反省するところは反省しますが、個人的には今日の負けにそこまで引っ張られずにいようと思っています。1位のチームにチャレンジできるワクワクする瞬間はそう多くないので、その気持ちを大事にしたいです。客観的に見ても、チャンピオンシップ(CS)をかけたギリギリの状況はすごく楽しい時期だと思います。この状況自体を充実した時間にできるよう、前向きにやっていくしかありません。週末に限らずシーズン終盤に向けて、終わったことに引っ張られすぎず、より良くなり続けて最終的な目標に届くよう突っ走るだけです」

試合を楽しむ気持ちを忘れない。岸本はそれを、崎濱や小針ら後輩たちにも忘れてほしくないと語る。

「試合中は自分も必死なので周りへの配慮が行き届いていない部分もありますが、彼らには彼らの目標があり、1日1日を充実したものにしてほしいと願っています。それがチームの力になると思うので、まずは自分が先頭に立って姿勢を見せなければいけません。 彼らにはこの状況を本当に楽しんでほしいです。僕からすれば、(崎濱)秀斗なんて今は『ボーナスタイム』だと思っています。彼らも責任を感じているでしょうが、『今日あった出来事なんて1年後には誰も覚えていないのだから、良いことも悪いこともあるけど、とにかくチャレンジした方がいい』というニュアンスの言葉はよく伝えています。特に秀斗には何も恐れずにやっていい時期だと思うので、どんどんチャレンジしてほしいです。自分もプレーから何かを感じ取ってもらえるようにし、無理に強要するのではなく、みんなで高め合っていけたらいいなと思っています」


“より良いプレー(Play better)”

ヴィック・ローが記者会見場に入ってきた。彼の発する言葉は、いつも興味深い。彼はいつも本音でこちらに挑んでくる。用意されたような言葉は使わない。いつも直球だ。

「試合開始時は、かなり力強く、攻撃面では素晴らしいプレーをしたが、第3クォーターに入ると、非常に精彩を欠いてしまい、そこで負けてしまった」

ヴィックの第一声は、言葉少なかった。この日の敗戦に関する質問にも「より良くプレーする(Play better)」と回答し続けた。

「うちのチームで3ポイントシュートを決めた選手は5人だが、彼らは7人。アシスト数も向こうの方が多かった。正直に言って、ゲームプランを改善できたかもしれないし、遂行力(エグゼキューション)をもう少し高くできたかもしれないなど、理由はたくさん挙げられると思う。 でも、私は一人の選手なので、あえて『選手たちがもっとうまくプレーする必要がある』と言います。シュートを決め、しっかりディフェンスをしなければならない。今日はオンボールディフェンスが本来あるべき鋭さを欠いていたため、ローテーションが乱れる場面もあった。でも、それは仕方ないことです。少し調子が落ちる試合もある」

彼の言葉に、少し疑問が残った。今日の試合を見て、『より良いプレー(Play better)』をすれば、キングスが今週末の長崎に勝利できる、そう感じるのは難しいだろう。その疑問を、直球でヴィックにぶつけた。

ヴィックは真っ直ぐに私の目を見ながら、私の疑問を聞き、そして深く呼吸をした後に、答えた。

「まず始めに、三河が私たちより優れたチームだとは全く思わない。今日は彼らの方が良いプレーをしたというだけ。今季、三河は僕らに3勝1敗している。だから彼らが勝った試合は、彼らが強かったと思う。でも、チームとして私たちより上だとは思わない」「長崎と対戦する時もそうだ。結果に関わらず、もっと良いプレーをすればそれで十分だと思う」

「昨季、岸本が足を骨折した時、みんなは僕たちがこんな結果になるとは思っていなかっただろう」「昨季、島根とのシーズン成績は0勝4敗(実際には1勝3敗)、でもキングスはプレーオフで2勝0敗。次の三遠、キングスが勝つとは誰も思っていなかった。でもより良いプレーをして、キングスは勝った」「次はブレックスだ。キングスが勝つとは誰も思っていなかった。でもキングスは、より良いプレーをした」

「全ては新たに始まる。毎試合が新しい試合だ。毎シーズン、新しいシーズンだ。今日は負けた。大丈夫、負ける試合もある。それでいい」

「シュートを外したり、ターンオーバーもあった。大丈夫だ。次の試合は全く新しい試合だ。ただ座って考えてなんかいられない」

「彼らは我々よりも強い。長崎のことを考えながら、長崎に立ち向かわなければならない。ジェッツは非常に強かった。でもジェッツには2勝した。今夜のようなプレーをしていたら、もしかしたら勝利を逃していたかもしれない」

「毎晩違う。あるチームがより強いチームを破るかもしれないし、最下位のチームが勝つかもしれない。それがバスケットボールの美しさだ。だから、チームとして、そして個人として、より良いプレーをする必要があると言う時、私はそう信念を持っている」

「私自身も、チームの他の選手全員も、それぞれがチームのためにやるべきことをして、より良いプレーをしなければならないと自覚しなければならない。だから、今週末の試合は…あなたの質問への答えは『やる』だ。勝つか負けるかは言えない。私は勝つと思う」

「でも、それはキングスの実力を知っているからだ。私は毎日練習し、仲間たちと話し合う。私はチームのハドルの中にいるからこそ、チームを信じている。長崎もきっと同じことを言うでしょう」

「今週末の試合で良い結果になることを願っている。なぜなら、これからの試合はどれもプレーオフ進出を左右する重要な試合なので、力強く、情熱的に、そして準備万端で臨みたいと思っています」「リーグ最強の長崎戦のように、これからの試合はきっと楽しいものになるでしょう。だから、最も重要な試合なんです」

「あなたは私よりも長くキングスを見てきていますよね。キングスは大事な場面でいつも良いプレーをするのを見てきたでしょ。今週末は力強く、準備万端で臨みます」

彼の真摯な言葉に、信じさせられた。信じたいという気持ちになった。

ヴィック・ローとの会話は、いつも興味深く、情熱があり、エキサイティングだ。


そうだよ、ヴィック。僕らは何度も見てきたよ。キングスが素晴らしいプレーで、情熱で、逆境を跳ね返す姿を。

君が話した、アウェーで千葉ジェッツに勝利する姿を。

君が話した、昨季のプレーオフで島根、三遠に勝利して、宇都宮を寸前まで追い詰める姿を。

それだけじゃない。君が初めてキングスに天皇杯をもたらしてくれた姿を。

それだけじゃない。天皇杯で敗れて皆が失意の底にいた時、君達が再び立ち上がり戦う姿を。

君が知らないキングスの姿も、全部覚えているよ。

初めてセミファイナルの壁を突破して、大きく揺れたアリーナの熱を。沖縄市体育館でアルバルク東京を寸前まで追い詰めた時の、地響きのような歓声を。それだけじゃない。君のボスが、初めて沖縄に「優勝」を届けてくれた2009年5月17日も、まるで昨日のことのように覚えているよ。

それと、ヴィック。君はひとつだけ間違えている。「昨季、岸本が足を骨折した時、誰も僕らを信じていなかった」と言ったけど、僕は信じていたよ。嘘だと思うなら、周りの皆に聞いたらいい。

あの時の君達の情熱は、僕を信じさせるには十分だった。君達の本当の姿を、沖縄アリーナの熱を知らない人間には、好きに言わせておけばいい。君達がこのアリーナに灯す情熱は、スタッツシートだけで判断する連中には絶対に分からない。おそらく、僕だけじゃない。このアリーナで君達の情熱を感じた人間なら、必ず君達のことを信じている。

だからもう一度、このアリーナに情熱の火を灯してくれ。

本当の勝負、決戦のプレーオフを、このアリーナで、この沖縄で戦ってくれ。

君の言う通り、これからの試合はどれもプレーオフ進出を左右する重要な試合だ。負けていい試合はもうひとつもない。だから、僕らを楽しませてくれ。君達のプレーで、情熱で、勝利で、この沖縄を楽しませてくれ。

君の情熱を、君達の誇りを、沖縄の力を、僕らは信じている。

(写真・文:湧川太陽)

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この記事を書いた人

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