BリーグがBプレミアへむけて「ユース育成補償金」「選手契約情報の公開」などを発表 [2026.01.13]

1月13日(火)、Bリーグはメディアブリーフィングを行い、そこで「B.革新 競技強化における各レギュレーション」として、新たな制度導入や追加情報を発表した。導入されるのは、「ユース育成補償金制度」「選手契約情報の公開」「ドラフト制度の追加ルール」、そして「スター選手条項の減額制限」だ。

これらの新レギュレーションがBリーグの未来をどう形作っていくのか、その詳細を一つひとつ丁寧に解説していく。

参考:B.革新に向けた競技レギュレーション詳細決定 ~“ユース育成補償金の導入”および“選手契約情報・サラリーキャップ総額”の公開など~ | B.LEAGUE(Bリーグ)公式サイト

目次

基本金額 × 在籍期間係数で支払う「ユース育成補償金制度」

• 制度内容: Bユース出身選手が、初めてBクラブとプロ契約を締結する際、契約先のクラブが育成元のクラブに対して補償金を支払う仕組み。

• 対象選手: 前シーズンの4月1日時点で満23歳未満であり、Bユースに連続6か月以上在籍した選手が対象となる。Bユース所属後に高体連や大学連盟などに所属したアマチュア選手や、条件を満たす見做し日本人選手、外国籍選手も含まれる。

• 補償金の性質: この補償金は、サラリーキャップの計算には含まれない。

補償金の算出計算式: 基本金額 × 在籍期間係数

• 基本金額: 選手が契約するクラブが所属するリーグカテゴリーによって変動する。

    ◦ B.PREMIER: 400,000円

    ◦ B.ONE: 200,000円

    ◦ B.NEXT: 50,000円

• 在籍期間係数: ユースチームへの在籍年数を係数とする。在籍期間が6か月以上1年未満の場合は「0.5」。例えば、在籍期間が5年6か月であれば「5.5」となる。

計算例: 中学1年生から高校3年生までの6年間、クラブAのユースに所属した選手が、B.PREMIERのクラブBとプロ契約した場合、計算式は「400,000円(B.PREMIERの基本金額) × 6.0(在籍期間係数) = 2,400,000円」となる。したがって、クラブBはクラブAに240万円の補償金を支払う。

なお、複数のユースチームに在籍歴のある選手の場合は計算がより細分化され、獲得クラブはそれぞれの育成元クラブに対し、在籍期間に応じた補償金をそれぞれ支払うことになる。

透明性へ「選手契約情報の公開」

選手基本報酬の公開範囲

最も注目される選手基本報酬(年俸)については「選手のプライバシーに配慮しつつ、『Bリーグにはこれくらいの報酬を得る選手がいる』と夢を持てるように」(島田チェアマン)市場全体の動向を可視化する方式が採用される。

• 対象: B.PREMIER所属の全選手

• 公開方式: 基本報酬を以下の6つのレンジに分類し、Bリーグ全体でそれぞれのレンジに何人の選手が存在するかを匿名で公開する。選手個人名と報酬額が直接結びつくことはない。
 ◦ 1億円~
 ◦ 8,000万円~ 
 ◦ 6,000万円~
 ◦ 4,000万円~ 
◦ 2,000万円~
 ◦ ~2,000万円

各クラブの年俸総額を公開

各クラブのサラリーキャップ制度上のチーム総額も千円単位で公開される。

• 公開時期: 選手人数のレンジ別公開は11月、サラリーキャップ総額は11月(シーズン開幕時点)の翌9月(シーズン終了時点)と2回に分けて公開される予定。

契約期間と延長オプションの公開

• 公開内容: 各クラブに所属する選手の契約期間(年数)、契約延長オプションの有無および種類(選手側が決定権を持つプレーヤーオプション or クラブ側が決定権を持つチームオプション)。

• 公開方式選手個人名と共に公開される。

ドラフト制度の公平性確保

 NCAA所属選手の「ドラフト不参加」意思確認

NCAAに所属する1~3年生の選手が、ドラフト前の事前交渉で翌季のBリーグ参入の意思がない事を明言した場合、指定の書式でBリーグに対し「翌シーズンにBリーグへ参入する意思がない」ことを宣言、いかなるクラブもその選手をドラフトで指名できなくなる

ただし、NCAA所属選手の宣言した情報は、全てのドラフト参加クラブへのみ共有する内部情報として、一般には非公開とする。

B.ONEからB.PREMIERへの昇格クラブにおける選手継続

B.ONEからB.PREMIERへの昇格が決定したクラブに所属するドラフト対象選手(卒業後3年以下など)は、クラブがB.PREMIER昇格時にそのままクラブと契約継続してB.PREMIER選手となるわけではない。選手自身がB.PREMIERへの参入意思がある場合は、昇格前シーズン1月に開催するドラフトにエントリーしなければいけない。

そのドラフト会議において、もともと所属していた昇格クラブに指名を受ける事で、昇格後も契約継続が可能となる。

なお、B.ONEからB.PREMIERへの昇格決定した場合の参入時期は、昇格決定から2シーズン後である。次回のB.PREMIER新規入会審査は2027年10月、参入決定した場合の参入時期は2029−30シーズンとなる。

参考:【公式】審査基準・結果 | B.革新 | B.LEAGUE(Bリーグ)公式サイト

参考:【公式】ドラフト制度 | 選手契約・ドラフト | B.革新 | B.LEAGUE(Bリーグ)公式サイト

サラリーキャップ制度の抜け穴を塞ぐ「スター選手条項の減額制限」

スター選手条項適用をされた選手が翌シーズンも同クラブに所属し、かつ基本報酬を減額する場合に限り、この減額幅はスター選手条項適用シーズンの基本報酬に対して30%以内でなければならない。

ただし、翌シーズンも引き続きスター選手条項の適用を継続する場合は、この制限の対象外となる。

このルールは、あるチームが選手にキャップ対象外の高額な「スター選手」年俸を1年間支払い、翌年に不自然に低い年俸で再契約することで、実質的にサラリーキャップを回避する潜在的な抜け道を塞ぐことを目的としている。

例えば、基本報酬3億円でスター選手条項が適用されていた選手は、翌シーズンに同条項を適用せずに2.1億円(30%減)で再契約することは許される。しかし、クラブがその選手の基本報酬を1億円(66%減)まで引き下げることは、サラリーキャップ制度の意図を歪める行為と見なされ、認められない。

なおスター選手条項は、当該クラブのシーズン終了時点で、1.5億円以上のクラブ内最高額での契約となった選手1名を、サラリーキャップ制度においては1.5億円(消費税別/その他税込)の計上とするサラリーキャップ上の条項である。つまり、スター選手条項は選手契約に紐づくものではなく、1.5億円以上のクラブ内最高額の選手のサラリーキャップ上の計算(キャップヒット)を1.5億円と自動計算するものである。

参考:【公式】サラリーキャップ制度 | 選手契約・ドラフト | B.革新 | B.LEAGUE(Bリーグ)公式サイト

制度理解の徹底に向けたリーグ取り組み

ルールの形骸化を防ぎ、その精神をリーグ全体で共有するため、Bリーグは制度の適正運用に向けた徹底した取り組みを開始。その一環として、リーグはB.PREMIER参入の26クラブおよびB.ONE参入の25クラブ、そしてクラブの関連企業等に対して、サラリーキャップ制度の主旨や目的を深く理解してもらうための公式文書を展開した。

この取り組みの目的は、クラブ自身のルールを遵守だけでなく、関連企業などが意図せず潜脱行為に関与してしまう事態を防ぎ、クラブが責任をもって監督・指導する体制を構築することにあるとした。この文書は、Bリーグが指定する106の団体・個人(5%以上の株主含む)などにも展開済みであり、クラブにはその結果報告も求めている。Bリーグは制度遵守に対して極めて厳正な姿勢で臨んでいるとした。

なお、サラリーキャップ制度上の制裁に時効はなく、発覚時点から過去に遡って、制裁を科すとしている。

降格処分
 ◦ B.PREMIER クラブは翌々シーズン終了後に B.ONE へ降格
 ◦ B.ONE クラブは翌シーズン終了後に B.NEXT へ降格
勝ち数の減
 ◦ 翌シーズンの勝率計算に際して、勝ち数15を減じる
制裁金
 ◦ サラリーキャップ超過に相当すると判断された金額の5倍 の制裁金を科す

    質疑応答

    ユース育成補償金制度およびドラフト関連

    Q:自クラブのユース出身選手をドラフトで指名・獲得した場合、育成補償金は発生するのか。また、在籍期間中にクラブの所属カテゴリー(B1やBプレミアなど)が変わった場合、算出に用いる基本金額はどうなるのか。

    島田C:自クラブのユース出身選手を獲得した場合には、補償金は発生しません。補償金額の算出に用いる基本金額は、ユース在籍時のカテゴリーではなく、あくまで選手を獲得した時点での獲得クラブの所属カテゴリー(B.PREMIERなら40万円、B.ONEなら20万円など)に基づいて決定されます。

    Q:B.ONEからB.PREMIERへの昇格時、昇格クラブが有利になるような「優先エクスパンション・ドラフト」のような仕組みはあるのか。また、ドラフトに参加することで、B.ONE時代よりも年俸が強制的に下がるリスクはないのか。

    島田C:自動的に選手を保持できる仕組みはなく、昇格するクラブの選手であってもドラフトでの指名が必要です(ただし、指名権の当選確率は上がる方式になっています)。優勝して成績結果で昇格するわけではなく、アリーナや観客動員数をクリアした上での昇格のため、B.ONEクラブが先の昇格予測を見込んで意図的に新人選手を囲い込む事を防ぐためです。また、ドラフト選手の年俸は規定で決まっているため、B.ONEでの高額年俸者が一時的にダウングレードする可能性はゼロではありませんが、それはB.PREMIERでプレーすることを目指す選手自身の覚悟と申請に基づくと考えています。

    Q:NCAA所属選手が「Bリーグ参入の意思なし」と宣言する場合、それはNCAAの規定に抵触しないのか。また、その情報は公表されるのか。

    A:指定書式で「行かない(NO)」と意思表示するだけであれば、NCAAの規定には抵触しません。この情報は、混乱を避けるためにドラフト参加権を持つクラブにのみ内部情報として開示され、ファンやメディアには公表されません。

    選手契約情報の公開およびサラリーキャップ関連

    Q:B.PREMIERで「報酬レンジごとの人数」を公開する際、個人名を出すことへの懸念は何か。また、契約年数やオプションの有無を「個人名(バイネーム)」で公開する理由との差は何か。

    島田C:報酬は最重要の個人情報であり、家族への影響も考慮して個人名と紐づけた具体的な金額の公開はハードルが高いと判断しました。一方で、契約年数やオプション(プレーヤー/クラブのどちらが権利を持つか)については、移籍の際の憶測を排除し、ファンの透明性を高めるために選手会とも協議の上でバイネームでの公開に合意しました。

    Q:11月と9月の2回公表される理由と、対象シーズンについて教えてほしい。

    増田理事:公表は当該シーズンが対象です。まずシーズン開幕後の契約がまとまった11月時点の数値を契約書に基づいて算出し、シーズン終了後の9月に、インセンティブ報酬の確定や監査の結果を踏まえた最終的な数値を公表する2段階の構成をとります。2026-27シーズンのサラリーキャップ総額は2026年11月と2027年9月に発表します。

    Q:外国籍選手の契約はドルベースが多いが、急激な為替変動(円高など)によって「前年比30%以内の減額制限」などのルールに意図せず抵触するリスクはないか。

    島田C:サラリーキャップの計算には、事前にリーグが提示する固定レートを用いるため、シーズンの途中で為替の影響によりルール違反になることはありません。

    Q:スター選手条項を適用する選手は、クラブが特定の選手を自由に指定できるのか。

    増田理事:クラブが適用選手を選ぶのではなく、サラリーキャップのルール上、そのクラブで最高額の報酬を得ている選手(1.5億円以上が前提)に自動的に適用されます。

    以上が、メディアブリーフィング内でBリーグが発表した内容である。

    所感

    B.PREMIER開幕が近づくにつれ発表・追加情報が増えてきている。今回の「ユース育成補償金制度」「選手契約情報の公開」「ドラフト制度の追加ルール」、そして「スター選手条項の減額制限」についても、ファンの疑問や憶測に回答するような内容が多かった印象だ。つまりはファンへ寄り添おうとしているリーグの姿勢であり、好印象を受ける。ゼロから築き上げる組織に最初から完璧さを求めるより「走りながらより良いものにしていこう」とする姿勢も高く評価されるべきものである。

    しかしそれでも、疑問が無くなったわけではない。

    「ユース育成補償金制度」については、U15とU18のユース在籍歴を補償対象としている。しかしユース優先交渉権が認められるのは「U18在籍選手」のみだ。そこの差異についての明確な根拠は無い。U15在籍歴のあるクラブへも優先交渉権を与えるべきではと当然考える。また、U15在籍のクラブへも補償するなら、部活動として在籍していた中学校や高校、いわゆる「まちクラブチーム」への補償が無いのは何故か。「ユース育成補償金制度」を「ユース優先交渉権を行使できなかった事への対価」なのか、それとも「当該選手を育成してくれたことへの育成対価」なのかで、その捉え方は大きく異なってくる。

    「選手契約情報の公開」についても、選手個人の立場に立てばセンシティブな情報だと感じる心情も理解できる。しかし「Bリーグ全体で」選手年俸レンジに何人いるかを発表しても、それはサラリーキャップを語る上では何の公開情報にもなり得ない。あくまでリーグがどれだけ成長しているかのマーケティング指標にしか過ぎない(逆成長もあり得るが)。

    日本では”本格的な”サラリーキャップ制度が導入されたプロリーグは無く「サラリーキャップがある前提でチームビルディングを楽しむ」という文化が未だ存在しない。だがNBAなどは”サラリーキャップ前提で”推しチームの隆盛を楽しむ事が当然であり、それこそが醍醐味だという日本のファンも大勢いる。サラリーキャップを導入しておきながら、そういったコート外の楽しみを提供しないのであれば、サラリーキャップはただの「年俸抑制策」にしかなり得ず、結果的に選手側のデメリットとなる可能性が大いにある事も、いずれ分かってくるはずだ。せめて「クラブ単位で」所属選手の年俸レンジを匿名で発表する仕組みにすれば、まだファンの楽しみも増えただろう。

    なぜ今のままではサラリーキャップはただの「年俸抑制策」にしかなり得ないと断言できるかのか。それはサラリーキャップ違反時の制裁を読めば明らかだ。勝ち数減少や制裁金は問題ではない。降格処分こそが大きな足枷だ。

    サラリーキャップはそのルール厳格さの違いで「ソフト(柔軟な)キャップ」「ハード(厳格な)キャップ」と呼ばれる。NBAはキャップ例外条項が多く存在するソフトキャップ、NFLはキャップ総額を絶対に超えてはいけないハードキャップだ。しかし、ハードキャップと呼ばれるNFLですら、降格処分つまりリーグからの退場という重い処分は存在しない。B.PREMIERのサラリーキャップは「アルティメット(究極の)キャップ」と呼ぶべきだろう。そんな厳格なキャップの中で、8億円というキャップの上限ギリギリまで勝負してくるクラブがあるとは到底思えない。ある程度のセーフティレンジを取ってキャップ調整をするだろう。つまり現状は「年俸抑制」にしかベクトルが向かないルールばかりだ。逆の見方をすれば、選手年俸はブラックボックスで良しとするような組織に、本当に「アルティメットキャップ」を適用する胆力があるのかは大いに疑問だ。

    サラリーキャップはただの年俸抑制策ではない。それはNBAをはじめ米国クローズドリーグの隆盛が証明している。

    「走りながらより良いものにしていこう」という姿勢は評価できるが、ドラフトやサラリーキャップの枝葉ばかりに注目が向き、大前提となる「リーグ全体で大きく成長していく」という理念と骨組みが、リーグクラブそして選手側にも少し弱いように感じられる。

    もう一度言うが、B.革新の姿勢は高く評価されるべきものである。だが我々ファンは、Bリーグ開幕前のバスケ冬の時代に戻ることだけは避けなければならない。この記事が、ファン一人ひとりの議論のきっかけになる事を願う。

    (取材・文:湧川太陽)

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    この記事を書いた人

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