キングス、守備が乱れ96失点 篠山竜青の獅子奮迅の活躍に屈し、川崎に痛恨の逆転負け [2025.12.24]

12月24日(水)、琉球ゴールデンキングス vs 川崎ブレイブサンダースが沖縄サントリーアリーナで行われ、90-96でアウェーの川崎が逆転勝ちした。

クリスマスイブのナイトゲームとなったこの試合、キングスは決して万全ではなかった。エースの#4 ヴィック・ローがコンディション不良で3試合連続の欠場。前節アウェーで富山に1勝1敗だっただけに、年末年始のホーム5連戦の初戦となるこの試合は、何としても勝利したかった。対する川崎は東地区11位と苦しむものの、前節の島根戦では粘り強さ見せて勝利しており、その勢いはキングスにとって決して油断できる相手ではなかった。

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目次

第1クォーター (キングス 23 – 21 川崎)

立ち上がりから両チームが激しく点を取り合うオフェンシブな展開となった。キングスは、#14 岸本隆一が3ポイントシュート2本を含む12得点を挙げる爆発的な活躍でチームを牽引。対する川崎も#14 ドゥシャン・リスティッチの3ポイントシュートや#5 エマニュエル・テリーの豪快なダンクで応戦し、一進一退の攻防が続いた。1クォーター終了時、23-21とキングスがわずかに2点のリードを奪い、序盤から熱を帯びた試合を予感させた。

第2クォーター (キングス 22 – 22 川崎)

第2クォーターも互角の展開が続き、クォーターのスコアは22-22の同点。キングスはインサイドの#53 アレックス・カークやベンチ出場の#10 荒川颯らが着実に得点を重ねたが、川崎も#7 篠山竜青が絶好調。キングスディフェンスが篠山へハードショーを仕掛けたところを、的確にアシストパスを通していき、前半だけで9アシストを記録。キングスは前半を45-43の2点リードで終え、試合は依然として均衡状態のまま後半戦へと突入した。

第3クォーター (キングス 17 – 22 川崎)

このクォーターが試合のターニングポイントとなった。後半の立ち上がり、川崎が逆転に成功し、試合の流れが大きく変わり始めた。キングスはディフェンス戦術を前半のハードショーからドロップディフェンスに変更。この守備戦術の変更は、インサイドへの警戒を強める意図があったが、結果的に川崎は#7 篠山の正確なキックアウトパスからワイドオープンの3ポイントシュートを量産。川崎はこのクォーター5本中4本の3ポイントシュートを決める。しかし川崎は篠山と控えポイントガードの#55 岡田 大河が共に4ファウルとファウルトラブル発生。試合の行方はまだ分からず、62-65と川崎が3点のリードを奪って最終クォーターへ向かった。

第4クォーター (キングス 28 – 31 川崎)

最終クォーターは再び激しい点の取り合いとなったが、オフェンスの勢いを維持した川崎がキングスを突き放した。このクォーターの主役も、川崎の篠山竜青だった。彼はこの10分間だけで3ポイント3本含む15得点と獅子奮迅の活躍を見せ、アウェーでの勝利を決定づけた。キングスも#21 デイミアン・ドットソンが3ポイントシュート3本を含む11得点を挙げるなど必死に食い下がったが、最後まで川崎の猛攻を止めることはできず、痛恨の逆転負けを喫した。

試合スタッツ:りそなグループ B.LEAGUE 2025-26 B1リーグ戦 2025/12/24 琉球 VS 川崎 | B.LEAGUE(Bリーグ)公式サイト

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 主要選手のパフォーマンス

琉球ゴールデンキングス

#14 岸本 隆一: チーム最多タイの20得点を記録。第1クォーターでの12得点は、チームに勢いをもたらした。しかし、ヴィック・ロー選手不在によるハンドラーとしての負担が増えている事は否めず、勝負どころの4クォーターでは3ポイントを決められなかった。

#53 アレックス・カーク: 17得点、10リバウンドのダブルダブルを達成。インサイドで安定した得点源となり、リバウンドでも身体を張り続けた。出場時間もチーム最長の約30分だった。

#10 荒川 颯: ベンチから出場し、13得点を記録。勝負どころの第4クォーターで8得点を挙げるなど、オフェンス面からチームにエナジーを与えた。しかしマッチアップした篠山には第4クォーターの大活躍を許してしまった。

#21 デイミアン・ドットソン:14得点を記録。第4クォーターでは3ポイントシュートを3本沈め、最後まで逆転への望みを繋いだ。追いかける展開で彼の得点力は大きな武器となったが、勝利には一歩届かなかった。

川崎ブレイブサンダース

#7 篠山 竜青: この試合の主役が#7 篠山竜青であったことに異論を唱える者はいないだろう。ゲームハイの25得点に加え、13アシスト(キャリアハイ)という驚異的なスタッツでダブルダブルを達成。MVP級の活躍は、スタッツ以上にゲームを完全に掌握する支配力にこそ表れていた。

#13 津山尚大: 10得点、出場時間はチーム日本人最長の約30分を記録。ターンオーバーは1個のみで安定したプレーでチームを支えた。3ポイントシュートのタッチに苦しんだものの、第4クォーター終盤に7点差に突き放す貴重な3ポイントを決めて、彼の地元である沖縄のファンへ手痛い恩返しを見舞った。

#5 エマニュエル・テリー:15得点、7リバウンド、2ブロックを記録。試合序盤のダンクでチームに勢いをもたらし、インサイドでフィジカルな存在感を発揮。攻守にわたりチームの勝利に貢献した。

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ヘッドコーチ・選手会見の要約

琉球ゴールデンキングス

桶谷 大 HC: 敗因を「ディフェンスの崩壊」と明確に指摘。特に後半、#7 篠山への対応のまずさと、立て続けに決められた3ポイントシュートを止められなかった点を悔やんだ。90得点を挙げたオフェンスよりも、96失点したディフェンスが問題であるとの見解を示した。

#14 岸本 隆一: 「重要な時間帯で相手のオフェンスを止めきれなかった」と試合を総括。チームとしての連携や一体感をより生み出していく必要性を語った。自身と同じように長年フランチャイズプレーヤーとしてプレーし続ける#7 篠山のパフォーマンスを称賛した。

#10 荒川 颯: 現状のチームに漂う痛烈な危機感を口にした。チームが「勝つという方向性とはまた違った方向に行ってしまっている」と表現。個々の選手がチームの勝利のために、スペーシングや連動性といった基礎的な部分にもっと責任感を持って取り組む必要性を訴えた。

川崎ブレイブサンダース

勝久 ジェフリー HC: 「チームで勝ち取った大きい勝利」と選手たちを称賛。最大の勝因として、苦しい時間帯でもコミュニケーションを失わずに耐え抜いた「チームとしての成長」を挙げた。#7 篠山のパフォーマンスを「素晴らしかった」と絶賛し、彼の進化し続ける姿勢を高く評価した。

#7 篠山 竜青:  「川崎にとって、琉球との一戦は非常に大きな挑戦(ビッグチャレンジ)だった。リーグトップクラスのディフェンスとリバウンドを誇る琉球に対し、自分たちがどこまでできるかを試す試合であった」とその勝利にチームとして成長した自信を感じさせた。後半の素晴らしいパフォーマンスについて「沖縄アリーナという素晴らしい環境で、これほど多くの観客の前で試合ができる機会は、あと何回あるか分からないという思いが常にあった」と強い意気込みと高い集中力を持ってアウェーへ乗り込んできた事を語った。

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勝敗を分けたキーファクター

篠山竜青による驚異的なゲームメイク

篠山竜青が記録した25得点13アシストは、川崎のチームオフェンス全体を機能させる司令塔としての役割を完璧に果たしていた事を証明するスタッツだ。特に後半、キングスがインサイド重視のディフェンスに修正する中で、篠山は冷静に状況を判断。ノーマークの味方へ正確なパスを供給しつつ、自らも積極的に3ポイントシュートを放つ。この巧みな使い分けがキングスのディフェンスを崩壊させ、逆転劇の最大の原動力となった。

キングスの後半におけるディフェンスの機能不全

キングスの敗因を一つに絞るならば、それは後半におけるディフェンスの完全な機能不全に他ならない。桶谷ヘッドコーチと岸本の会見内容からも明らかなように、前半はペイント内での失点が目立ったのに対し、後半は3ポイントシュートを止められないという悪循環に陥った。ボックススコアを見ると、川崎は後半だけで3ポイントシュートを14本中10本成功(成功率71.4%)させている。この驚異的な数字が、勝敗を決定づけた最大の要因の一つであったことは間違いない。

相手のファウルトラブルを突けないキングスの硬直性

大活躍した篠山だったが、全てがパーフェクトだった訳ではない。3クォーター残り0:57で4つ目のファウルを犯し、あと1つで退場というファウルトラブルに陥った。その時点で川崎は控えポイントガードの岡田も4ファウルであり、どちらがファウルアウトになっても非常に苦しいゲーム展開を強いられたはずだ。しかし、川崎の勝久ジェフリーヘッドコーチは篠山をベンチに下げずにコートに残す決断をして、篠山もそれに応える。篠山は4つ目のファウルから試合終了までの約11分間をノーファウルでコートに立ち続け、その11分間で18得点3アシストと驚異的な活躍をした。そして、キングスは自分たちのホームコートで、その活躍を許した。

相手に4ファウルの主力選手がコートに立っていれば、その選手へ積極的にアタックしてファウルを誘発させる、もしくはそこからの展開で相手ディフェンスを崩すのは、ある意味バスケットボールのセオリーだ。しかし第4クォーターのキングスにそんな場面はほぼ見られなかった。篠山がペイントエリアでオンボールのディフェンスコンタクトしたのは、残り9:30の佐土原遼のファストブレイク時と、残り7:55の佐土原のポストアップ時だけだった。

桶谷ヘッドコーチは「(マッチアップする)颯には積極的にシュートを狙っていけと伝えたが、たとえばポストアップしたり1on1で(篠山の)ファウルを誘うようなプレーは、僕らの持っている引き出しには無かったのが正直なところ。ボールムーブメントのなかでゴールを狙っていく事が僕らの一番良さが出る。どこかで誰かがボールを止めてしまうと、良い判断が出来なくなってしまう」と4クォーターの篠山に対する対応を振り返った。

キングスの良さは、全員がボールをシェアして流動的なバスケットボールである事は理解できる。しかし「自分たちのバスケットボール」に固執してしまい、相手が弱点をさらけ出しているのに、そこを突いていかないのは、本当に「アンダードッグ」の戦い方なのか。

決して、負けたから苦言を呈すのではない。順位表の”L”の数がひとつ増えるだけ。まだシーズンは長いし”W”で取り戻せるチャンスはいくらでもある。しかし、2025年12月24日のホームゲームはこの1試合だけだ。クリスマスイブに集まった8160人は「自分たちのバスケットボール」を見に来たのではない。愚直に勝利を追い求めるキングスを、小さな島から強者に食ってかかる「アンダードッグ」に元気と勇気を貰いに来ているはずだ。苦しい時期を乗り越えて、何度も何度も立ち上がってきた桶谷キングスを、ファンは期待している。

(写真・文:湧川太陽)

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