『桶さん&ムーさん』再び 琉球ゴールデンキングス 桶谷大HC & 福井ブローウィンズ 伊佐勉HC 対談インタビュー

(取材:金谷康平、編集:湧川太陽、写真:Hamataro)

琉球ゴールデンキングスは9月17日(火)、18日(水)にプレシーズンゲームで福井ブローウィンズと対戦する。

福井ブローウィンズは、2023-24シーズンにB3リーグに新規参入。レギュラーシーズン46勝4敗という驚異的な成績を残し、B3優勝そして2024-25シーズンのB2昇格を果たした。

 

福井をB3優勝に導いたのは、沖縄県出身の伊佐勉ヘッドコーチだ。

伊佐は、bjリーグ2007-08の琉球ゴールデンキングス初年度からアシスタントコーチとして在籍。bjリーグ2008-09には、キングスは桶谷大ヘッドコーチ&伊佐アシスタントコーチのコンビでbjリーグ初優勝を達成。伊佐はその後bjリーグ2013-14からキングスのヘッドコーチに就任。bjリーグ時代に2度の優勝を果たした。

『ムーさん』の愛称でキングスのファンからも親しまれた伊佐が、今季B2最注目チームである福井のヘッドコーチとして沖縄アリーナにやってくる。OUTNUMBERは、注目のプレシーズンゲーム前に桶谷HCと伊佐HCの対談インタビューを実現。

キングスの基礎を作ってきた『桶さん&ムーさん』が、昔話に花を咲かせつつ新シーズンへの意気込みを語ってくれた。
(取材日:2024年8月7日)

 

目次

キングスもブローウィンズも凄いチームだ

──2023-24キングスはB1準優勝、福井はB3優勝そしてB2昇格。互いの昨季を振り返って

伊佐:僕自身も沖縄出身なのでキングスの連覇を期待していたのですが、『連覇』の重圧はとても大きなものだったんだろうと感じました。しかし日本最高峰のBリーグファイナルという大舞台に3年連続で辿り着くのはとてつもない事なので、改めてキングスは凄いチームだと感じました。

僕ら福井ブローウィンズは、結果的には圧倒した成績にはなりましたが、やはり簡単なシーズンではありませんでした。僕自身は初のB3挑戦でしたが、B1とB3の違いはそこまで感じなかった。競技レベルの違いこそあれ、ひとつの勝利を掴む事の大変さや、バスケットボールの強度などは変わらないので、そこを乗り越えてしっかりB2昇格を達成できてホッとしています。

 

桶谷:まずどのカテゴリーにおいても優勝することは非常に難しいです。僕も過去に当時B2だった仙台89RESのヘッドコーチとして、優勝の難しさを実感しています。そんな中でもムーさんが福井を率いてちゃんと結果を残したのは凄いことです。B3のバスケットボールにアジャストしてからは破竹の連勝を続けて、レギュラーシーズンの好成績からのプレッシャーを跳ね除けて、プレーオフでもしっかり結果を出した。やはりムーさんは並のヘッドコーチではないし、福井は並のチームではないですね。

 

 

出会った当時の桶さんの印象は…

──時を遡ってお二人の出会った時の印象をお聞きします。bjリーグ時代の2008年が初対面ですか?

伊佐:桶さんと初めて会ったのは、当時練習で使用していた宜野湾市の勤労者体育センターでしたね。シーズン前の自主練習中で、新たにヘッドコーチに就任した桶さんが来沖した直後で体育館に顔を出してくれましたね。当時の選手たちと一緒に挨拶しながらコミュニケーション取ってたかな。

出会った当時の桶さんの印象は「本当に年下かな。。。」でしたね(笑)

 

桶谷:いやいや、それはないから(笑)ムーさんとキース(リチャードソン現アシスタントコーチ)は出会った頃からちゃんと先輩でしたから(笑)

僕は「伊佐勉」の名前は専修大学の選手時代の雑誌記事などで知っていましたけど、出会った第一印象はとても気さくな方だなぁと思いました。そしてコーチとしては選手のプレーに対する要求がとても細かい。「ここにパスして」という要求が10cm単位で細かくて、やはり凄いなと感じました。あと、リバウンドの時のパス捌きがとても上手いんですよ。これは皆に見て参考にして欲しいくらいです。

僕がムーさんと一緒にキングスで戦った4年間は、ずっとムーさんに助けられっぱなしでしたね。僕は言いたいことを言って好きなようにやるタイプだから、そのフォローをずっとムーさんが影でやってくれていました。ヘッドコーチである僕と選手が話す前に、ムーさんが先に選手たちに厳しいことを伝えてくれて、色々なことを整理してくれていた。なので僕はヘッドコーチとしてやり易かった印象です。

 

伊佐:桶谷ヘッドコーチはディフェンスの細かい部分を徹底するタイプなので、そこを僕自身も勉強しつつ、アシスタントコーチとして桶さんの負担を軽くするように意識して動いていましたね。僕はキングス設立1年目から在籍していましたし、当時は沖縄県出身の選手も多かったので、その辺も桶さんがやり易いように意識しながらやっていたので、助けになれていたのであれば嬉しいです。

 

 

「キングスはどうあるべきか」を継承する大変さ

──桶谷ヘッドコーチ就任1年目のbjリーグ2008-09で初優勝を遂げますが、その時の心境は?

伊佐:よくシゲ(金城茂之氏 キングス初年度から所属した名選手)とも思い出話をするんですが、キングス創設初年度は最終的に10勝しか出来なかったので、2008−09シーズンは11試合目で10勝を達成して「もう去年と同じだけ勝ってる。。」とシゲと一緒に話したのは覚えていますね(笑)

その時までは自分たちの強さに半信半疑だったんですが、「(優勝)いけるかもしれない」と皆が感じ出してきて、そのまま勢いに乗って優勝まで辿り着いたシーズンでしたね。

 

──桶谷さんは4年間で2度bj優勝を果たしてキングスを離れ、その後伊佐さんは2013-14シーズンにキングスのヘッドコーチに就任します

桶谷:僕はキングスを離れてからも、キングスのことはずっと気にかけていました。選手やコーチが変わっても勝ち続けるキングス。そのキングスを継承していくことは、とても大変なことですし(ムーさんは)すごいなと思って見ていました。

 

伊佐:僕はキングスのアシスタントコーチとして3人のヘッドコーチの元で勉強させてもらいましたが、その方々の良い部分を全て自分のものにしつつ、自分の考えで「キングスはどうあるべきか」というカルチャーを大事にしながらヘッドコーチを務めさせていただきました。桶さんがおっしゃる通り、その当時からキングスは勝ち続ける組織になっていたので、それをどう継承するかを考えながらやっていました。

 

 

我慢強い桶さんとアグレッシブなムーさん

──伊佐さんがヘッドコーチとなった2013-14シーズンから10年が経ちました。指揮官としてのお互いをどのように見ていますか?

伊佐:ヘッドコーチとしての桶さんは本当に我慢強い。キングスで一緒にやっている頃から、「もっと言った方がいいですよ」とか話をしていた思い出もあるんですけど(笑)それでも我慢する。その我慢強さがチームにも反映されている印象があります。我慢し続ければ必ず流れが自分たちに変わってくる。僕はそこまで我慢出来ないので、我慢強いコーチだなという印象です。

 

桶谷:ムーさんはアグレッシブに色々動いてくるイメージがあります。ムーさんがキングスのヘッドコーチになってからは、僕がいた頃よりもずっとアグレッシブなディフェンスになりましたね。オフェンスも色々なものを取り入れつつも、選手の個性も活かすし、ゲームの流れを読むのも上手い。タイムアウト直後のプレーに感心させられることは何度もありました。

 

──お二人のバスケットボールはかなり違いますが、性格も真逆ですか?

伊佐:性格は二人とも似ているかなぁと思いますけどね(笑)

 

桶谷:ムーさんも我慢強いですよ。怒っているところは見たことない。チームが少し緩んでいる時には厳しく言うこともあるけど、ムーさんがキレてる場面は見たことないですね。ただ彼は演技派ハリウッド男優なので、自分から審判にテクニカルファウルを取られにいくことはありますね。ムー劇場ですね(笑)

 

伊佐:最近はもう選手にバレちゃって「また始まったよ。。」みたいな冷めた目で見られるんですよ(笑)

 

 

ブローウィンズがキングス相手にどれだけやれるか試したい

──9月には琉球ゴールデンキングスvs福井ブローウィンズが沖縄アリーナで行われます。それに向けての意気込みを。

伊佐:キングスはまぎれもなくBリーグのトップチームですし、ホームアリーナである沖縄アリーナも日本一のアリーナだと思っています。それを支えるファンの方々も、バスケットボールを観戦する目も含めて日本のトップだと思います。そういった様々な部分を、福井ブローウィンズという創設2年目のチームに体感してもらいたい。

バスケットボールとしてもブローウィンズがキングス相手にどれだけやれるか試したいですし、福井が組織として成長する上でも、多くのことを見て勉強させて頂くつもりです。

僕がキングス設立から関わった時も、小さな組織で立ち上げて、小さな練習場からスタートして、そして今ではこんな立派なアリーナで試合が出来るまでに成長している。いずれ福井も同じようなクラブに成長することを目指しているので、このプレシーズンゲームが良い刺激になればいいなと思っています。

 

桶谷:やっぱりムーさんが沖縄に帰ってくることが嬉しいです。(沖縄県出身で元キングス)渡辺竜之佑も帰ってきてくれる。沖縄のファンの皆さん、ムーさんや竜之佑がいるチームとキングスが戦うなら面白いゲームが見たいはずなので、プレシーズンゲームといえどもお互いに勝利を目指して戦いたいです。

 

──ありがとうございます。最後に2024−25シーズンへの意気込みを。

桶谷:やはり王座奪還を目指して戦いたい。昨シーズンもBリーグファイナルと天皇杯決勝に進んだけど、優勝には届かなかった。ここ3シーズンは何度も決勝の舞台に進んでいるけど、2022−23シーズンBリーグ優勝しか手にしていない。今季こそは獲れる栄冠を全て目指していきたいです。

 

伊佐:B2に挑戦するシーズンでB1昇格が最大のミッションなので、どんな形でもB1に昇格したいです。そうしてキングスとレギュラーシーズンで対戦して、もしかしたら公式戦でまた沖縄アリーナに福井ブローウィンズが戻ってくることができるかもしれない。その日を目指して頑張っていきたいです。

 


日本のトップチームに成長した琉球ゴールデンキングス。今では想像もつかないほど厳しい環境で、助け合いながらキングスの礎を築いた桶谷大と伊佐勉。ふたりの対談は笑顔が絶えなかった。

だが勝負になれば、互いの負けん気がぶつかり合い、きっと面白いゲームを魅せてくれるはず。

北国に渡ったムーさんが率いる福井ブローウィンズが、真夏の沖縄アリーナでどんな『風』を吹かせてくれるのか。プレシーズンゲームが楽しみだ。

プレシーズンゲーム情報

琉球ゴールデンキングス vs 福井ブローウィンズ
▽試合情報

会場 沖縄アリーナ
9月17日(火)試合開始 19:30
9月18日(水)試合開始 19:30

試合情報はこちらから▷ 24-25シーズン_ホームゲーム情報 24/09/17-18(福井) | 琉球ゴールデンキングス

 

 

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