(文:たつまる、写真:Tomohiko Sato / Hamataro)
4月6日(土)、7日(日)に琉球ゴールデンキングスはホーム沖縄アリーナで千葉ジェッツと対戦する。両者は3月16日の天皇杯決勝で対戦して、69-117とキングスは歴史的な大敗をした。そんな千葉ジェッツとの再戦について、「たつまるブログ」でキングスの試合後レビューを書いているたつまるさんに記事を書いてもらいました。
これはリベンジ?
まず初めに今週末の第30節千葉ジェッツシリーズは天皇杯決勝のリベンジですか?
もちろん衝撃的惨敗から立ち上がる為、そしてCSで対戦する可能性もあり苦手意識を払拭したいという意味では特別なシリーズである事は間違いないし、感情的にも避けては通れないテーマだと思う。
でも今回の対戦は「リベンジではない」というのが、たつまるの考えだ。
天皇杯の惨敗は受け入れよう。もう起きてしまった事だから何を言っても何を考えても「第99回 天皇杯男子バスケットボール決勝 ボックススコア」のシートは変わらない。
受け入れて消化しよう。辛いけどね。
「あの日キングスは千葉Jより弱かった」ただそれだけ。第30節は天皇杯のリベンジでは無く自分たちの価値を証明するための試合よ。「キングスは強い」って証明するためのね。
あっさっき「キングスは千葉より弱かった」って書いたけど、それでもキングスは千葉Jより下のランクではない。これは絶対に違う。
キングスも千葉Jも優勝候補の第一グループの中にがっちり入っているよ。
お互いの良さを出すことが出来れば1戦1戦どう転ぶか分からない。天皇杯決勝はキングスの良さがまるで出せなかっただけ。ボタンのかけ違えみたいなもん。
普通にやれば、がっぷり四つの好ゲームになる。
でも千葉Jはキングスに普通の状態を作らせない様にある戦術を敷いている…
琉球は千葉Jのブリッツをかいくぐれるか
キングスのハンドラーに襲い掛かってくるのが千葉Jのブリッツ(急襲)だ。天皇杯決勝でキングスは千葉Jのブリッツに終始苦しんだ。
※ブリッツ(急襲)とはディフェンスがボールマンにプレッシャーをかけている時に、いきなりディフェンスがもう一人、ボールマンへのプレッシャーに参加すること
キングスは千葉Jの強度の高いブリッツに対して試合中に修正を試みるが、その修正にも千葉は蓋をしてきたためパニックになってしまった。第30節の千葉J戦はここの対策をどうするか?ここはかなり注目ポイントで「ブリッツに対して何を用意してるかだな」って呟けば、あなたはバスケ通として周りから一目置かれる存在になる。
「キングスはどのような対策をしてくるか」を測る為に千葉Jは早い段階でブリッツを仕掛けてくるはず。ここをクリア出来れば千葉Jはリスクの高いブリッツを使いにくくなる。ブリッツさえかいくぐってしまえばキングスと千葉Jはそこまで差がないはず。まずはここをクリアして普通の状態に持ち込む必要がある。
茨城戦シリーズが効いてくる
キングスは先週末に速い展開に強い茨城ロボッツと対戦し2連勝をおさめた。速いペースでもガチャガチャしないし外国籍の選手たちも個人能力が高い。全体的にスピードがあるためキングスのディフェンスが後手に回りドリブルで抜かれてしまうシーンが多くあったわけだが、キングスはこのシーンを「ヘルプディフェンス」で解決しようとしていた。
茨城の選手のドリブルからレイアップへの道をキングスディフェンスの後ろの選手がヘルプで埋めて通行止めにするような組織的なディフェンスね。
茨城戦後のインタビューで選手、ヘッドコーチが「オーバーヘルプ気味になってしまった」と言及していたが、これが興味深い。
キングスはマンツーマンディフェンスを主に採用しているので「頑張って抜かれない様にしよう」っていうのが基本的な守り方。でも茨城戦では見せた「ヘルプディフェンス」は抜かれることを想定した守り方で、スピードを使って攻めて来るチームに対して有効な作戦。これは茨城にはもちろん、千葉ジェッツに対しても有効な守り方になる。カークやクーリーに対してドリブルで攻めて来るならその道にヘルプディフェンスを敷いちゃおうって守り方だった。千葉J戦を見越して準備してきたのかは分からないが、結果的に先週末に茨城戦があって良かったと感じるし、茨城戦で言及された「オーバーヘルプ」は意識づけの結果であり、多分それは意識したあまり行き過ぎた分。
この意識づけが千葉Jのドリブルの道をせき止めるポイントになってくれるはず。茨城戦の戦い方が結果的に千葉Jへの対策として効いてくるというわけです。
怪我人抱える千葉Jは若手がステップアップ
アップダウンがありながらも上向いてきているキングスだが千葉Jはチームの大黒柱ジョン・ムーニー(206cm/C)と3月に電撃復帰したクリストファー・スミス(193㎝/SG.SF)が怪我で戦線を離れてしまいロスター状況が思わしくない。
どちらも千葉Jには欠かせない選手なので戦力ダウンと先週末の川崎戦は負けはやむなしか…と思われたが、先週末行われた川崎戦で若手組が躍動。金近廉(196cm/SF)、小川麻斗(176cm/PG)、特別指定選手の内尾聡理(184cm/中央大)とそれぞれが良いパフォーマンスを見せて川崎相手に2連勝している。
その中でも金近の成長が著しく、得点を量産するわけではないが、持ち前のシュート力と機動力に加え、国際大会を経て戦う姿勢やフィジカルの強さが備わってきている。これが千葉Jのチームの勢いを生んでいる。チームの中心の富樫勇樹や原修太、外国籍のゼイビア・クックスの警戒レベルは高い事は間違いないが、よそ見をしていると若手組に良い仕事をされてしまう。こっちの警戒レベルも上げておこう。
お互いの長所がぶつかる最高の試合を
前述の通りブリッツ(急襲)さえかいくぐってしまえばキングスはいつも通りプレーが出来る。
Bリーグの「インサイドの覇者」のジャック・クーリーにタイミング良くボールが入れば、千葉Jのディフェンスはキューっと収縮するし、そうなれば今度は3ポイントラインの外で待機している選手が空く。そこにパスが通ればボールの回りも良くなるし、中と外とでバランスの良いオフェンスが展開出来る。ローとカーク、そして牧もコンディションを上げて来ているので桶谷ヘッドコーチも前回対戦とは違った戦い方を見せてくれるはず。
千葉Jは機動力と激しさを土台にシュート力を爆発させてくるので、良い形で気持ちよくシュートを打たせない様に激しく当たっていきたい。
点の取り合いになるか、はたまた激しい守り合いになるのか。
正直どっちでもいい。Bリーグ屈指のビッグカードだから純粋にお互いの長所がぶつかる最高の試合が見たい。(結果的にキングスが勝てば満足)
キングスブースターを舐めてもらっちゃ困る
「恥ずかしい」「応援してくれる皆さんに申し訳ない」「信頼を取り戻せるよう」・・・
3月16日以降、何度も聞きました。もちろん天皇杯決勝の惨敗は応援している我々も悔しかったし辛い敗戦だった。というかチームの方がショックが大きかったはずなのに気を使わせてしまったね。でももう大丈夫よ。どうせ私たちは勝手に応援するから安心しきって戦ってほしい。振り返るな!キングスが戦うなら背中を押してブーストさせるってのがキングスブースターよ。舐めてもらっちゃ困る。
キングス「背中は預けた」
ブースター「任せろ、ブーストしてやる」
これくらいは信用してほしい。
誠に僭越ではございますが、ブースターも一緒に戦っているつもりです。
千葉Jさんに見せてあげましょう。そしてリーグ全体に知らしめてやりましょう。
乗り越えた琉球ゴールデンキングスの「団結の力」ってやつを。
たつまる
沖縄出身 |