前回はB1東地区のクラブ資本関係を詳しく見てみましたが、今回はB1西地区のクラブ資本関係を掘り下げてみましょう。
Bリーグクラブの資本関係(B1東地区編) | OUTNUMBER WEB
B1西地区の特徴は、旧bjリーグのクラブが多いという事です。それがクラブ資本関係にどのように関わっているのでしょうか。
※クラブ運営会社は全て非上場企業であり、通常は株式情報は公開されません。
※紹介する情報の正確性は保証できず、あくまで現在ネット等の情報から確認出来る内容に基づいています。
2020-21 B1西地区のクラブ資本関係
チーム名 | 運営会社 | スポンサー一覧 | 親会社・主要株主 |
信州ブレイブウォリアーズ | 株式会社信州スポーツスピリット | 2019-20 | 不明(千曲市) |
三遠ネオフェニックス | 株式会社フェニックス | オーエスジー | |
シーホース三河 | シーホース三河株式会社 | 2019-20 | アイシン精機 |
名古屋ダイヤモンドドルフィンズ | 名古屋ダイヤモンドドルフィンズ株式会社 | 三菱電機 | |
滋賀レイクスターズ | 株式会社滋賀レイクスターズ | 2019-20 | 坂井信介(会長)、滋賀ダイハツ販売等 |
京都ハンナリーズ | スポーツコミュニケーションKYOTO株式会社 | 2019-20 | アークレイ |
大阪エヴェッサ | ヒューマンプランニング株式会社 | 2019-20 | ヒューマンホールディングス |
島根スサノオマジック | 株式会社バンダイナムコ島根スサノオマジック | バンダイナムコエンターテインメント | |
広島ドラゴンフライズ | 株式会社広島ドラゴンフライズ | 2019-20 | NOVAホールディングス |
琉球ゴールデンキングス | 沖縄バスケットボール株式会社 | 2019-20 | 木村達郎(社長)、ユーグレナ |
信州ブレイブウォリアーズ
2018-19シーズンにB2最高勝率を果たしながらB1ライセンスを逃した信州。2020-21シーズンは念願のB1ライセンス交付、ついにB1に初挑戦します。
過去に信州がB1ライセンスを逃した大きな要因は、財務基盤の弱さとB1基準のアリーナ確保。
今回調査しても運営会社に企業の後ろ盾は見つかりませんでしたが、地域の支援組織である後援会があります。
そして現在のホームタウンである千曲市のバックアップ、そしてアリーナ建設を巡る紆余曲折が見えてきました。
2013年に千曲市が運営会社である株式会社信州スポーツスピリットに出資、当時の筆頭株主となっています。
参照:千曲市が運営会社に300万円出資へ チーム強化の一助に – 頂へ! 頑張れ!信州ブレイブウォリアーズ
参照:『千曲市 信州ブレイブウォリアーズ出資式 』が行なわれました:信州ブレイブウォリアーズ(2013年5月31日)
千曲市は2019年に新庁舎を建設・新体育館(現 ことぶきアリーナ千曲)を併設する計画があり、ブレイブウォリアーズのホームアリーナとして市街地活性の起爆剤と考えていました。
参照:千曲市中心市街地活性化基本計画 計画期間 平成 29 年度~平成 33 年度 – 平成 29 年4月千曲市
参照:ちくま未来カフェ通信 No.015 – ちくま未来カフェ通信編集委員会(2017年1月1日)
しかし新体育館の観客収容は約3,400人の計画で、5,000人収容のB1基準に満たないものでしたが、その計画のまま新体育館は造られました。
参照:更埴体育館5000人収容断念 新リーグ1部昇格条件 – 頂へ! 頑張れ!信州ブレイブウォリアーズ
長野県全体でも5,000人収容可能な施設は3施設しかありません。
そこでブレイブウォリアーズは隣接する長野市にあるホワイトリンク(観客席数 約5,000席)をホームアリーナとして、千曲市に加えて長野市もホームタウンとします。
参照:ホームアリーナ、長野に 移転の方向固まる – 頂へ! 頑張れ!信州ブレイブウォリアーズ(2019年3月5日)
参照:長野市のホームアリーナ及びホームタウン受け入れの発表について | 信州ブレイブウォリアーズ(2019年3月5日)
参照:地域密着型プロスポーツチーム 信州ブレイブウォリアーズへの対応について – 長野市文化スポーツ振興部スポーツ課(2019年2月13日)
B1基準のホームアリーナは確保出来たものの、今後の千曲市との関係や、脆弱な財務基盤の改善など課題山積です。
三遠ネオフェニックス
三遠ネオフェニックスの前身は、愛知県豊川市に本社がある機械部品製造業オーエスジー株式会社のバスケットボール部です。
クラブ運営会社である株式会社フェニックスの株主構成は不明ですが、前社長の浜武恭生氏、現社長の北郷謙二郎氏ともにオーエスジー株式会社からの転籍です。現在でもオーエスジーが親会社的な立場となっています。
参照:フェニックス新社長に北郷氏 | 東愛知新聞(2018年6月26日)
参照:シビックプライドを育む~地元をエンタメで面白くする!~香西志帆氏×佐々木崇夫氏×丹羽多聞アンドリウ氏×浜武恭生氏×髙島宗一郎氏(YouTube 2016年12月19日)
シーホース三河
シーホース三河の前身は、愛知県刈谷市に本社がある自動車部品メーカーのアイシン精機株式会社のバスケットボール部です。
現在のクラブ運営会社シーホース三河株式会社も、親会社はアイシン精機となっています。
名古屋ダイヤモンドドルフィンズ
名古屋ダイヤモンドドルフィンズの前身は、三菱電機名古屋製作所のバスケットボール部です。1950(昭和25)年に創設された歴史あるクラブです。
現在のクラブ運営会社である名古屋ダイヤモンドドルフィンズ株式会社は、元社長 高橋俊哉氏、取締役 千葉洋一郎氏、現社長 小山健一氏、それぞれ三菱電機株式会社の出身であり、三菱電機がクラブの親会社となっています。
参照:名古屋ダイヤモンドドルフィンズ株式会社の新役員及び選手による知事表敬訪問について | 愛知県庁 | JPubb
参照:千葉 洋一郎 名古屋ダイヤモンドドルフィンズ株式会社 代表取締役 常務取締役 -Teachers – 大ナゴヤ大学 –
参照:人事、三菱電機(2):日本経済新聞(2017年3月1日 )
余談ですが、今年3月Bリーグ実行委員会の名古屋ダイヤモンドドルフィンズ選出委員が、Wリーグ三菱電機コアラーズGMも務める山下雄樹氏に変更されました。
ドルフィンズの現ヘッドコーチの梶山信吾氏も、現役時代は三菱電機ダイヤモンドドルフィンズの選手でした。
Bリーグクラブの中でも、親会社グループの関係性が最も強いクラブであると言えます。
参照:名古屋ダイヤモンドドルフィンズの実行委員の変更 – NEWS – B.LEAGUE(Bリーグ)公式サイト(2020年3月10日)
滋賀レイクスターズ
滋賀レイクスターズの始まりは、運営会社である株式会社滋賀レイクスターズの現会長 坂井信介氏が立ち上げた親会社を持たないクラブです。
出資企業として自動車ディーラーの滋賀ダイハツ販売株式会社、業務用精密機器メーカーのオプテックスグループ株式会社などがあります。どちらも滋賀を地元にした企業で、支援という性格の出資と思われます。おそらく創設者の坂井氏が筆頭株主です。
参照:社員はたった2人 「退路を絶った」坂井信介 | LAKES MAGAZINE WEB | レイクスマガジン(2020年6月12日)
参照:-Road to THE FINALS- 滋賀レイクスターズ プレイオフ特設ブログ2013:VOICE OF LAKES #20-坂井信介代表兼GM(2013年5月21日)
滋賀レイクスターズの特徴は、財団法人滋賀レイクスターズという地域総合スポーツクラブが傘下にあり、滋賀レイクスターズの売上等から地域のスポーツ活動を支援しています。
京都ハンナリーズ
京都ハンナリーズの親会社は、京都市に本社がある医療機器の製造・販売をおこなうアークレイ株式会社です。運営会社であるスポーツコミュニケーションKYOTO株式会社はアークレイが立ち上げた会社です。クラブの初代GMである後藤純也氏もアークレイの出身です。
参照:門川大作京都市長OFFICIALサイト» Blog Archive » 来季の躍進を祈念!! 京都ハンナリーズアワードパーティー2010(2011年5月10日)
クラブの経営については、アークレイの土井茂会長の強いリーダーシップが伺えます。
土井氏は早稲田大学大学院の平田武男教授が主催するトップスポーツマネジメントコース社会人修士課程1年制2012年度卒業生です。
卒業論文のテーマが「プロバスケットボールチーム 京都ハンナリーズ観戦需要と動員手法に関する研究」クラブ経営への情熱が感じられます。
大阪エヴェッサ
大阪エヴェッサの運営会社ヒューマンプランニング株式会社は、教育・人材・介護等を扱うヒューマンホールディングス株式会社のグループ会社です。
参照:ヒューマングループ
現社長の安井直樹氏もヒューマングループからの異動組です。
参照:バスケ 東京に負けへんで 安井直樹 大阪エヴェッサ社長 :日本経済新聞(2019年8月21日)
ヒューマンホールディングス株式会社会長の佐藤耕一氏は、以下記事にてバスケに対する熱い情熱を語っています。
参照:日経 私の道しるべ 佐藤耕一 | ヒューマンホールディングス株式会社
島根スサノオマジック
島根スサノオマジックは、2019年に運営会社の株式会社山陰スポーツネットワークの株式過半数を株式会社バンダイナムコエンターテインメントが取得、運営会社も株式会社バンダイナムコ島根スサノオマジックと社名変更しています。
参照:バンダイナムコ、島根のプロバスケチームを買収 :日本経済新聞(2019年8月27日)
もともとスサノオマジックは、株式会社藤井基礎設計事務所の藤井三千勇氏が創設者の1人です。島根のIT関連企業である株式会社ミックが大株主でした。
参照:はい上がれスサノオ:バスケットボール B1再昇格へ/1 球団創設の立役者、藤井三千勇さん /島根 – 毎日新聞(2018年9月26日)
地元島根の企業から国内有数のゲームエンタメ企業のバンダイナムコエンターテインメントへ経営が移ったスサノオマジック、どのような変化があるか注目です。
広島ドラゴンフライズ
2018年12月11日 英会話教室運営のNOVAホールディングス株式会社は広島ドラゴンフライズの運営会社 株式会社広島ドラゴンフライズの株式を取得、クラブの親会社となりました。
参照:駅前留学NOVAが「B.LEAGUE」プロバスケットボールクラブ『広島ドラゴンフライズ』運営会社の株式譲渡を受け子会社化|NOVAホールディングス株式会社のプレスリリース(2018年12月10日)
参照:新経営体制発表記者会見のコメントについて | 広島ドラゴンフライズ(2018年12月11日)
広島ドラゴンフライズは2013年に清水敬司氏などがNBL参入を目指し立ち上げたクラブです。
参照:男子プロバスケットボールチーム 広島ドラゴンフライズの紹介 ㈱広島ドラゴンフライズ代表取締役 伊藤 信明 様 専務取締役 清水 敬司 様
クラブ設立当初から経営面の不安があり、相次ぐ社長交代、オーナー変更がありました。NOVAの子会社となり安定した経営となるでしょうか。
参照:代表取締役の異動(社長交代)に関するお知らせ | 広島ドラゴンフライズ(2014年3月3日)
参照:代表取締役の異動(社長交代)に関するお知らせ | 広島ドラゴンフライズ(2016年7月1日)
参照:広島ドラゴンフライズ、B1昇格へ経営体質強化!新オーナーにハーティウォンツ元会長の福岡愼二氏(ひろスポ!) – goo ニュース(2017年3月11日)
琉球ゴールデンキングス
琉球ゴールデンキングスは、運営会社 沖縄バスケットボール株式会社の現社長 木村達郎氏と、スポーツ・イノベーション株式会社の大塚泰造氏が中心となって出資、立ち上げたクラブです。
設立以降 企業との大きな資本関係は無いクラブでしたが、2019年にバイオテクノロジー企業の株式会社ユーグレナが大塚泰造氏の保有する株式を取得、木村氏に次ぐ第二位の株主となりました。
ユーグレナは沖縄県石垣島に生産拠点があり、沖縄県内での活動が盛んな企業です。
キングスとユーグレナの関係は、2010年よりキングスのオフィシャルパートナー契約を結び、石垣島での公式戦開催なども支援してきました。
参照:株式会社ユーグレナ|RYUKYU GOLDEN KINGS 応援プロジェクト
沖縄アリーナの指定管理者でもあるキングス。財務体制の強化を進めています。
B1西地区のクラブには中心となる経営者がいる
親会社の有無に関わらず、滋賀・京都・大阪・琉球など、クラブ設立時からの経営の中心人物が見えてくるのがB1西地区の特徴です。やはり企業バスケ部が母体ではない旧bjリーグ出身クラブが多い歴史が反映されています。
次回はB2の資本関係をまとめて、最後にBリーグに新しい資本が参入している理由を分析していきます。